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2019.08.31

日本初の国立美術館だって知ってた?東京国立近代美術館の見所解説!

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東京の中心部、皇居近くにある東京国立近代美術館(MOMAT)。最寄駅の竹橋からは徒歩3分、北の丸公園の緑豊かな自然に囲まれた施設は、東京のおでかけスポットとしてもおすすめです。そんな東京国立近代美術館の所蔵作品の魅力や、今後の展示についてご紹介します。

東京国立近代美術館とは?

東京国立近代美術館は、日本初の国立の美術館です。昭和27(1952)年に京橋に開館し、その後昭和44(1969)年に現在の場所へと移転。最大の特徴は、横山大観、菱田春草(ひしだしゅんそう)、岸田劉生(きしだりゅうせい)らの重要文化財を含む13,000点を超える国内最大級のコレクションが揃っていること。明治から現代にいたるまでの日本の近代美術の流れを、関連の深い海外の作品を交えながら紹介しています。

東京国立近代美術館の分館・工芸館

東京国立近代美術館のすぐ隣には、1977(昭和52)年に開館した分館「工芸館」があります。陶磁をはじめ、ガラス、漆工、木工、染織などの近現代の工芸、さらに工業デザインまでを幅広い工芸を扱う美術館としては、質量ともに日本屈指の美術館です。明治の洋風レンガ造で、建物自体も重要文化財に指定されています。※2020年夏、工芸館のみ石川県金沢市に移転予定です。

これは見たい!東京国立近代美術館所蔵の人気作品

日本の四季の美しさを詩情豊かに描いた川合玉堂の“枠”
横山大観、竹内栖鳳(たけうちせいほう)とともに日本画壇の三巨匠と称される川合玉堂(かわいぎょくどう)が描いた重要文化財『行く春』は、「東京国立近代美術館」の所蔵作品展で紹介されることを心待ちにしているという人が多い、人気の高い名作です。


『ゆくはる』 川合玉堂 重要文化財 紙本彩色 六曲一双 大正5(1916)年 各183.0×390.0㎝ 東京国立近代美術館蔵 写実的で柔和な雰囲気がただようのは、玉堂が極めた優れた画力のなせるわざ。

京都で学んだ四条派の親しみやすい画風と、橋本雅邦(はしもとがほう)から学んだ折り目正しい狩野派の品格を融和させた玉堂は、独自の画境に到達。日本の四季が織りなす美しい自然を、写実的でいて情緒豊かに描いた風景画で人気を博しました。また、文展や帝展の審査員を歴任し、東京美術学術教授、帝国芸術院会員となるなど、日本美術の振興に貢献した功績も見逃せません。

本作はスケッチ旅行で訪れた秩父・長瀞で川下りを楽しんだことから生まれた、まさに傑作。晩春の桜散る渓谷や勢いよく流れる川に繫留されている水車舟など、自然の雄大さや季節の移ろいの繊細さはもとより、そこに生きる人々の暮らしぶりを結びつけて詩情豊かに描いたところに玉堂の本質が見て取れます。

東京国立近代美術館の所蔵作品展「MOMATコレクション」とは?

東京国立近代美術館本館では常時3つの展覧会を開催しています(展示替え期間除く)。会期ごとに選りすぐりの約200点を展示する所蔵作品展「MOMATコレクション」は、100年を超える日本美術の歴史を一気に見ることができる国内唯一の展覧会です。会期ごとに大きく作品を入れ替えたりなど、新しい日本美術の楽しみ方を提案しています。

所蔵品ギャラリーのある本館2階〜4階の12の展示室(不定期で13)を使った大規模な展覧会で、2階テラス付近や前庭にも屋外彫刻が展示されています。4階には皇居が一望できる展望休憩室「眺めのよい部屋」。会場の入口は4階なので、1階エントランスホールからエレベーターもしくは階段で、4階まで上がってください。

また、毎日14時から開催している所蔵品ガイドは、誰でも参加可能(要観覧券)。ガイドスタッフや参加者同士の対話をとおして、まるで作品を謎を解き明かすかのような鑑賞体験ができるプログラムです。

2019年の所蔵作品展「MOMATコレクション」概要

  • 会期:2019年6月4日(火)〜10月20日(日)
    休館日:月曜日(7月15日、8月12日、9月16日、9月23日、10月14日は開館、翌火曜日休館)
  • 会期:2019年11月1日(金)〜2020年2月2日(日)
    休館日:月曜日(11月4日、1月13日は開館、翌火曜日休館)、年末年始(12月28日〜2020年1月1日)

会場:東京国立近代美術館本館所蔵品ギャラリー(2階〜4階)

◆出品作品については公式サイトをご確認ください。

鏑木清方 幻の《築地明石町》特別公開

所蔵品ギャラリーで実施する2019年の注目の企画展は「鏑木清方 幻の《築地明石町》特別公開」。粋と品格をあわせもつ美人画で知られる近代日本画の巨匠、鏑木清方(かぶらききよかた)の傑作で、1975(昭和50)年以来所在不明であった幻の作品『築地明石町』と、あわせて3部作となる『新富町』『浜町河岸』がそろうことで話題沸騰中。所蔵する清方作品をあわせた名作が並びます。

会場:所蔵品ギャラリー第10室
会期:2019年11月1日(金)~ 12月15日(日)
開館時間:10時〜17時(金曜・土曜は10時〜20時)
※入館は閉館30分前まで
休室日:月曜日(ただし11月4日は開館)、11月5日(火)
観覧料:一般800円、大学生400円

2019年東京国立近代美術館の企画展スケジュール

東京国立近代美術館では年に数回、特定のテーマに基づいて国内外の美術作品を紹介する企画展(企画展ギャラリー、1F)が行われています。2019年の企画展スケジュールをご紹介します。

高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの

会期:2019年7月2日(火)〜10月6日(日)
※休館日:月曜日(7月15日、8月12日、9月16日、9月23日は開館、翌火曜日休館)

『アルプスの少女ハイジ』(1974年)、『赤毛のアン』(1979年)といったTV名作シリーズ、『となりのトトロ』『火垂るの墓』(1988年)、『かぐや姫の物語』(2013年)など数々の名作を生んだ日本のアニメーション界の巨匠、高畑勲監督の功績を辿る回顧展。次々に新しい表現を開拓し、戦後の日本のアニメーションの礎を築いた高畑監督。本展は、そんな高畑監督の「演出」に注目し、多数の未公開資料も紹介しながら作品世界の秘密に迫ることができます。

詳しい展覧会レビューはこちら▼
ジブリと歩んだ奇才・高畑勲展! アニメという日本文化を創った人々の熱さに刮目せよ

窓展(仮称)

会期:2019年11月1日(金)〜2020年2月2日(日)
※休館日:月曜日(11月4日、1月13日は開館、翌火曜日休館)、年末年始(12月28日〜2020年1月1日)

「窓学」を主宰する一般財団法人 窓研究所とタッグを組んで行われる企画展。アンリ・マティスの絵画からカッティングエッジな現代美術まで、また美術の枠を飛び出して世界の窓の歴史から名建築の窓のディテールまで、さまざまな切り口で「窓」を紹介。美術家たちが愛し、描いた窓辺の情景や、日常生活に活かせる窓の知識など、ジャンルを横断して会場に並びます。

こんな施設も。東京国立近代美術館のアートライブラリ

アートライブラリは、近現代美術に関する資料を所蔵する専門図書館。国内外の美術関連図書や雑誌、展覧会カタログ、画集、写真集などを広く収集し、公開しています。所蔵資料の閲覧を希望する方であれば、無料でご利用できます。気になる作品や調べ物をするのに活用できそうです。

東京国立近代美術館概要

開館時間:10時〜17時(金曜日・土曜日は10時〜20時)
※企画展は、展覧会により金曜日・土曜日の閉館時間が異なる場合があります。
※入館は閉館30分前まで。

休館日:月曜日(祝日または祝日の振替休日となる場合は開館し、翌日休館)、展示替期間、年末年始

観覧料:
【所蔵作品展】
一般500円/17時から割引300円
大学生250円/17時から割引150円
無料観覧日:毎月第1日曜日(所蔵作品展 「MOMATコレクション」のみ)
※高校生以下および18歳未満、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方(付添者は原則1名まで)は無料です。
※美術館(本館)の所蔵作品展の料金で当日に限り、工芸館の所蔵作品展を観覧可能。(工芸館では所蔵作品展が開催されていない期間もあります)。
【企画展】
展覧会により異なります。公式サイトの各展覧会ページでご確認ください。
※企画展の観覧料で、観覧当日に限り所蔵作品展も観覧可能。

公式サイト:https://www.momat.go.jp/am/

※『和樂』2016年8・9月号別冊付録「ニッポンの名画50原寸探訪!」を再編集