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2019.10.26

名古屋のモーニングがすごい!歴史とメニュー・営業時間・おすすめ厳選5店も紹介

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女性アイドルグループ、モーニング娘。(現在はモーニング娘。’19)のグループ名は(喫茶店のモーニングサービスのように)「いろいろついてくる、盛り沢山、おトク感、親しみやすい」を表したもの、と公式サイトに書かれています。

では、名前の由来となった喫茶店のモーニングサービス(以下、モーニング)が実際、どれくらい、いろいろついてきて、盛り沢山で、おトク感があり、親しみやすいのか。モーニングでは、全国有数の激戦区とされる名古屋地方で検証してみました。

諸説あるモーニング発祥の地

モーニング発祥の地については愛知県一宮(いちのみや)市、同豊橋市、広島県広島市など諸説があります。この記事はその真偽を確かめたり、最初のお店を探し出したりするのが目的ではありません。興味のある方はネットなどでお好きに追いかけてください。

今回は、タイトルにあるように、名古屋地方で独自に発展したモーニングの文化や実態を探ることに狙いを定めます。

名古屋地方という表現は名古屋市内に限らず、隣接する一宮市を含む広い範囲を指しているからです。従って、この記事では、諸説のうち、一宮市から始まったという立場で話を進めます。

ガチャマンが促した一宮の喫茶店文化

一宮は繊維産業、特に毛織物では日本を代表する産地として栄えてきました。名神高速道路一宮インターチェンジの近くには繊維関連会社がずらりと軒を連ねる「一宮市せんい1丁目」という住所があるほどです。

高度経済成長期の昭和30年代の一宮の活況を表す言葉に「ガチャマン景気」があります。ガッチャマンではありません。織物は経(たて)糸と緯(よこ)糸を交差させる動作を繰り返すことで少しずつ仕上げられます。

この糸を織り上げる機械を織機(しょっき)と呼びます。織機がガチャンと音を立てるたびに1万円が儲かる。従って「ガチャマン」。その音が昼夜を問わず鳴り響くのですから、いかに景気が良かったかがうかがえます。ちなみに、昭和35年当時の大卒初任給(男子)が1万3080円(『完結昭和国勢総覧 第三巻』東洋経済新報社)ですから、地元の繊維業者は笑いが止まらなかったはずです。

一宮の好況は市内の喫茶店にも少なからず良い効果をもたらしました。繊維関係の会社で働く人たちが毎日のように利用してくれたからです。しかも1日に何度も足を運んでくれる。増える利用者を受け入れるために、喫茶店の新規開業も相次ぎました。

そのうちにある店が朝の時間帯のサービスとしてコーヒーにゆで卵とピーナツを付けるサービスを始めました。飲み物代だけでおまけが付くというので客が殺到。次第に他店も取り入れるようになり、一宮は全国でも指折りのモーニング激戦区となりました。“一宮方式”は北の岐阜、南の名古屋にも広まり、この地域に独自のモーニング文化を根付かせました。

1万人当たりトップクラスの喫茶店数

任意団体「一宮モーニング協議会」の推計によると、市内の喫茶店数は752軒(2004年)で、人口1万人当たり約20軒とトップクラス。データはいささか古いものの、上位であることは現在も変わらないはずです。

同協議会は一宮の歴史的な背景を踏まえて「単なる飲食店のサービスではなく、一宮で長年にわたって育まれてきた全国でもたぐいまれな文化である」とモーニングを位置付けています。

その上で「一宮モーニング三カ条」として「一宮市内の飲食店にて提供されること」「起源にならって、卵料理を付けること」「できるだけ一宮産の食材を使うこと」を掲げています。

「聖地」の名に恥じぬボリューム

「三カ条」まで整え、地域ぐるみでモーニング文化を継承し、発展させようという一宮は「モーニングの聖地」と呼ばれることもあります。

愛知県の多くの喫茶店ではモーニングに限らず、いつでもコーヒーを注文するとナッツやビーンズ類が付きます。小皿に盛られてくる場合と小袋入りの場合があります。かつて、ピーナツ一辺倒であったのが近年はアーモンド、ピスタチオ、グリンピース、大豆など品種も多様化。ミックスバージョンもあります。

一宮が聖地と呼ばれる理由の第一はそのボリュームにあります。たいていの場合、モーニング時にはナッツ類は控え選手に回ります。代わって登場するのが厚切りのトーストとゆで卵。これが名古屋地方の基本パターンです。

ある店がトーストにバターばかりでなく、お客の好みに応じてジャムや小倉あんを添えると、別の店は食パンをクロワッサンに代える。さらに別の店はサラダを付ける。隣の店はそれに茶碗蒸しを加える。負けてはおられぬと赤だしとおにぎりを付ける店が現れる。

それならばとハンバーグを付ける、うどんを付ける、パスタを付ける、焼きそばを付ける、フルーツを付ける、デザートを付ける……。トレーの上はほとんどランチ状態。しかし、建前はあくまでもモーニングなのです。

後で紹介しますが、一般的にはランチタイムが始まる午前11時ごろまでが多いモーニングを閉店時間まで実施する「オールタイムモーニング」の店も珍しくありません。この地方が聖地と呼ばれる理由の第二です。

三世代で楽しむモーニングは立派な文化

こうした独自のモーニングについて、コーヒー豆卸業者の集まりである中部日本コーヒー商工組合の和田康裕理事長は「週末に親子三代が喫茶店のモーニングを楽しむ光景はこの地方では当たり前。それこそが親から子、子から孫へと引き継がれる、立派な文化だと思います」と言い切ります。

ドリンク代だけで済む厳選5店

モーニングに定評のある名古屋地方の5店を選ぶにあたり、決めたのは「コーヒーなどのドリンク代だけで済むこと」です。モーニング娘。の命名の由来の一つに「おトク感」があるからです。そこで、今回は別料金を必要とせず、純然たるサービスとしてモーニングを食べられる店に絞りました。

 

1.コメダ珈琲店(本店)

電話番号:052-833-2888
住所:名古屋市瑞穂区上山町3-13
営業時間:6:30~23:30
サービス時間:開店から11:00まで
定休日:なし(年末年始は変更する場合がある)
喫煙:エリア分煙(土日祝日全席禁煙)
駐車場:58台
モーニングの内容:ドリンク(430円~※)、トースト、ゆで玉子(または小倉あん、たまごペースト)※税込、店舗により価格は異なる
ワンポイント:高品質の小麦粉を使ったこだわりのパンは配送中の品質低下を防ぐため、工場ではなく店舗で一枚ずつカット。ゆで玉子は作り置きをせず、常に温かい状態で提供。たまごペーストも店内で手作りしている。

 

2.喫茶ピットイン

電話番号:0586-51-2051
住所:一宮市時之島下途15-1
営業時間:5:00~17:00
サービス時間:終日
定休日:なし
喫煙:
駐車場:10台
モーニングの内容:ドリンク(400円)、トースト、マカロニサラダ、茶碗蒸し
ワンポイント:一宮におけるフルタイムモーニングの草分け的存在。経営者がお客の立場だったころに望んでいたサービスを実践した。朝早い勤務者の利便を考えて5時に開店。茶碗蒸しは他店のゆで卵との差別化策。

 

3.まんが喫茶はなこ

電話番号:058-213-5875
住所:岐阜市鏡島精華2-3-10
営業時間:24時間
サービス時間:6:00~11:00まで
定休日:なし
喫煙:分煙
駐車場:270台
モーニングの内容:席料、フリードリンク込み550円でトースト、ゆで卵、スープ、サラダ、焼きそば、カレーなどが食べ放題
ワンポイント:80分の制限時間内であれば何度でもお代わりできる。メニューの内容は日によって変わることも。11時になると商品が下げられるので要注意。もちろん、時間内は漫画や雑誌も読み放題。

 

4.トップフルーツ八百文

電話番号:052-852-0725
住所:名古屋市瑞穂区汐路町1-5
営業時間:9:00~18:00
サービス時間:10:00まで(日曜を除く)
定休日:なし
喫煙:不可
駐車場:8台
モーニングの内容:ドリンク(580円~)、ジャムトースト、ゆで卵、フルーツ盛り合わせ(8~10種類)
ワンポイント:フルーツショップが運営しているので、季節ごとの新鮮な果物を楽しめる。水を一滴も加えない純度100%の生ジュースは絶品。トーストに付く旬の果物を使ったジャムはすべて自家製だ。

 

5.喫茶リヨン

電話番号:052-551-3865
住所:名古屋市中村区名駅南1-24-30 三井ビル本館別棟B1
営業時間:8:00~18:00
サービス時間:終日
定休日:不定休
喫煙:
駐車場:なし
モーニングの内容:ドリンク(430円)、小倉プレスサンド、おつまみ
ワンポイント:モーニングの時間に間に合わないお客さんに合わせて延長するうちにフルタイムで提供するようになった。名古屋地方では珍しいプレスサンドが付く。わざわざ立ち寄る東西の芸能人も多い。

書いた人

新聞記者、雑誌編集者を経て小さな編プロを営む。医療、製造業、経営分野を長く担当。『難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを愉快に、愉快なことを真面目に』(©井上ひさし)書くことを心がける。東京五輪64、大阪万博70のリアルな体験者。人生で大抵のことはしてきた。愛知県生まれ。日々是自然体。