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2019.11.29

和歌山の極上の湯「椿温泉」。泉質や効能、周辺グルメやパワースポットを一挙紹介!

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「静かなところでゆっくり温泉につかって、美味しいお料理を味わいたいな」そう思われたなら、和歌山県白浜町の「椿温泉」がおすすめです。
「椿温泉」は数軒の民宿、旅館が集まっているだけの、こぢんまりとした温泉街です。コンビニも土産物店もありません。夜になると窓の外は真闇となり、すぐ近くの海岸に打ち寄せる波の音だけが響いてきます。
そんな浮き世を離れて落ち着ける場所が、白浜町中心部から車でわずか20分。
地元の郷土史には「白浜の名湯を素通りして人々は椿にやってくる」という主旨の記述がみられるほど、「椿温泉」には極上の湯が湧いています。
そんな「椿温泉」を二泊三日で体験してきました。和歌山ならではの海の幸と共にご紹介します。

「椿温泉」は美肌にも効果あり


「椿温泉」へ旅をするにあたって、やはり一番気になったのは温泉の泉質です。
あらかじめ調べてみると「椿温泉」は1851年(嘉永4年)の温泉番付である『諸国温泉効能鑑』に西前頭16枚目「紀州大ぜち(大辺路)の湯」として紹介されています。明治時代には「白浜の奥座敷」と呼ばれ、湯治場としても有名でした。
「椿温泉観光協会」公式サイトによると、「椿温泉」は源泉かけ流しの硫黄泉。毛細血管を拡張させて代謝を活発にし、老廃物を外に押し出す効果があります。
含有物の少ない「単純泉」のため硫黄の匂いはほとんどせず、なめらかで肌あたりのやさしい湯。
またph9.9強アルカリの湯は肌の皮脂と反応して石鹸のような役割を果たし、自然と角質を落とす作用もあるそうです。肌への負担なく古い角質がきれいに落ちるとくすみが軽減され、美白効果につながります。
美肌の湯としても期待できそうで、気持ちは高まりました。

「椿温泉」は食の宝庫!民宿「つばき荘」


「椿温泉」は海岸沿いにある温泉街です。当然のことながら海の幸が豊富で、それぞれの旅館・民宿ではとれたての素材を活かした食をゆっくりと楽しむことができます。
一日目にお世話になったのは、民宿「つばき荘」。女将さんが一人で切り盛りしているとのことだったのですが、夕食はボリューム満点、品数の多さにも驚きです。

ヒラメの姿づくりは二人で1匹まるごと。こりこりしたエンガワも美味しいです。あまりに新鮮なのでお醤油は必要なく、添えられたスダチをしぼってそのまま食べるのが一番おいしいと思いました。イカやマグロのお刺身もそのままで。小鯛はヒレやしっぽがピン!と張った姿の良い焼き物となっています。
茶碗蒸しにはなんとビッグサイズのはちみつ漬けの梅干しが丸ごと入っていて、その発想にびっくり。梅干しの酸味が卵のおだしと絶妙に合っていて、こんな茶碗蒸しは初めてでした。南高梅で有名な和歌山ならではの一品です。

陶板焼きには野菜と、それからしっかり火を通してもやわらかな牛肉が。天ぷらには大きなエビが二尾。
他にもアジの和え物、スダチをすりおろしたアサリのお吸い物など、丁寧に作られた女将さんならではのお料理に舌鼓を打ちました。

うわさに違わぬ「椿温泉」極上の湯


「つばき荘」のお風呂はこぢんまりとして、完全貸し切り制となっています。内から鍵をかけられるので、ファミリー風呂として家族みんなで、また手術跡の気になる方や、年配のご両親をお世話したい方もゆっくり温泉を楽しむことができます。

源泉かけ流しの湯はまったり、まるで肌にオイルをまとうよう。濃厚でありながら刺激が少なく、まさに極上の湯でした。お風呂から上がっても肌はすべすべ、心地よい熱が体の中でほこほこ保たれています。私は50歳を越える年齢なのですが、ちょっとびっくりするくらい肌の質が明るくやわらかになりました。
湯で疲れることもなく、湯治の宿として定着していることにも納得できました。

女将さんに聞く「つばき荘」秘話


たっぷりなお料理を堪能し、「美肌の湯」をいただいてから、その夜、女将さんに「つばき荘」の来し方のお話を伺うことができました。
調理師をしていたご主人と女将さんは、もともと南紀の大手ホテルにお勤めしていたとのこと。でも、「人に使われない生き方を」とお二人は独立を決意、その第一歩として「椿温泉」の地でまずは喫茶店を営んだそうです。
そうして今の「つばき荘」を建て、二人で切り盛りしてゆこうとした矢先、なんとご主人がご逝去。
「娘はまだ中学一年生でね、その娘と離れて、住み込みで和歌山市の雑賀崎へ修行に出たんよ」
雑賀崎には生前、ご主人が面倒をみていたお弟子さんがいたとのことで、そこで学んだ後、女将さんは「つばき荘」を30年以上、一人で背負ってこられたのでした。
「やっぱり人とのつながりが大事やねえ。何年も通って来てくれるお客さんもいれば、キンメダイとか難しい食材をきっちり調達してくれる人もいて」
とても豪華だった夕食のことを伺うと、女将さんは何度も「手抜きをしない」という言葉を繰り返しました。
食材は必ず取引先の魚屋に自分で見に行く、眼鏡にかなう食材がある時とない時、それぞれどんなメニューにするのかあらかじめきちんと考えておく、かつおとこんぶで出汁を大切にとって、ポン酢も手作り、醤油やお味噌は地元産のものを使うこと等々。
「タイはきっちり串を打って形を整えてね、今日のアサリのお吸い物も青ネギを散らせば形にはなるんだけど、スダチをすりおろす手間をかけた方がいいでしょ。手抜きをしないで」
女将さんはそう言って屈託なく笑いました。が、細かなことまで手抜きをせず、それを30年も続けておられるのはまったく簡単なことではないとしみじみ思いました。

こちらは翌朝の「つばき荘」の朝食です。つやつやの白米が絶品、アジの焼き加減も良く、卵焼きも煮物も美味しかったです。レトロなかたちの蓋つきのお椀も素敵でした。
この後、コーヒーもいただきました。

二日目は海鮮居酒屋「若竹」にて海の幸を堪能!


もともと地元でも人気の海鮮居酒屋「若竹」。「時間を気にせず、海の幸をじっくり味わっていただきたい」との思いから2011年に全館をリニューアル、居酒屋と共に1日3組限定の民宿としての営業も始めました。
「椿温泉」への旅、二日目はそんな「若竹」でお世話になりました。

「若竹」での夕食は居酒屋に設けられた和室で。予約していたお料理に加えて、別料金で居酒屋のお品書きの中から追加メニューを注文することができます。私は「那智の滝」という日本酒を注文。まろやかな飲み口の冷酒が新鮮なお刺身の味を引き立ててくれました。


タコとトマトのカルパッチョのほどよい酸味、具沢山の寄せ鍋のコクのあるお出汁、焼き物の身はぷりぷりとして、お料理全体の味のバランスが絶妙でした。タチウオをみりん干しにしてそれを揚げた天ぷらもあり、「これは一体何?」と初めて食する甘味と旨味にお品書きを見直したことも。
どれもこれも素材の味がしっかりと濃厚なため、それを最大限に活かしている「若竹」ご主人の腕が素晴らしかったです。

居酒屋のお品書きにも魅力的なメニューが並んでいましたが、お腹がいっぱいで頼めず。
隣の食卓の若い方たちがカルビ丼を追加注文、美味しそうに食べていて、少々うらやましかったです。

「すぐそこの海」に熱帯魚もウミガメも!

「若竹」カウンター。ご主人はシャイで無口な方ですが、笑顔が素敵です。


「若竹」のカウンターには綺麗にさばかれた美味しそうなお魚、食材として飼われているイセエビやトコブシや貝類、そして色鮮やかな熱帯魚が。私は生き物が大好きなので、長い間、熱帯魚観察をしてしまいました。
すると、「熱帯魚も全部、そこの海からとってきたんよ。ウミガメを拾ったこともあったなあ」と、カウンターの中から「若竹」のご主人。
「ウミガメもいるんですか!」「そうそう。あれはでも保護対象になってるから、串本海中センター(南紀のウミガメ保護の拠点)へ持っていったねえ」「すぐに大きくなるんよ、ウミガメは」と、女将さんと若女将さん。
水族館でしか見たことのない生き物たちが、当たり前のようにすぐ前の海にいる…和歌山の海の豊かさを実感できるお話でした。そこで取れる食材の濃厚な味にも納得です。

あまりに私が熱心に熱帯魚を見ているので、ご主人がサービスでエサやりを見せてくださいました。水槽の蓋を開け、ぱあっとワカメを入れると、クマノミたちが次々とそれをついばみ始めます。向かって右手前の平たいのはトコブシ。小型のアワビのような貝です。そのトコブシも落ちてきたワカメをむしゃむしゃ。こんな形の貝がエサを食べる姿、初めて見ることができました。
ちなみにトコブシも食材です。焼きたてを「若竹」でいただくことができます。

再び「椿温泉」の湯にまったり


夕食の後はこの日も「椿温泉」のとろとろのお湯を堪能しました。
「若竹」のお風呂場も「つばき荘」と同じようにこぢんまりしていますが、貸し切りではなく(状況によって貸し切りにすることもできます)男湯と女湯、二つのお風呂場があります。
体に湯をまとうようにゆっくりと湯舟につかった後は、やはり肌はすべすべ。「椿温泉」の美肌効果に嬉しくなりました。

こちらは翌朝の「若竹」での朝ごはんです。
「卵焼きはね、お客さんの顔を見てから焼き始めるんよ。ちょっと待ってもらうことになるけどねえ」と女将さん。お箸を入れるとふわりと湯気が立ち上るだし巻き、最高に美味しかったです。
身の味が凝縮され、香ばしく焼けたサンマも、普段、家で食べるものとはまったく別の種類のようなお味でした。

「椿温泉」のパワースポット「椿西国三十三ヶ所巡り」


「椿温泉」ではゆっくりまったり「何もしない時間」をすごすつもりでやってきました。でも、近くの椿山にある「椿西国三十三ヶ所巡り」だけは行ってみたいな、と考えていました。
「椿西国三十三ヶ所巡り」は明治時代、「椿温泉」へ湯治に来た客が無理をせず願掛けができるようにと、地元の寺院「普門寺」の住職が椿山に三十三体の石仏を安置。「西国三十三ヶ所巡り」を模した「椿西国三十三ヶ所巡り」として開いたそうです。
緑豊かな全長約1.5㎞の山道にはほつほつと石仏が。順番に手を合わせながら登ってゆきました。

第十六番山城國 音羽山 清水寺「まつかぜや、おとわのたきの、きよみずを むすぶこころは すずしかるらん」

第十七番洛中 普陀落山 六波羅蜜寺 「おもくとも、いつつのつみは、よもあらじ ろくはらどうへ まいるみなれば」

高野山 弘法大師 「ありがたや。たかののやまの。いわかげに だいしはいまに。おはしまします」

この日はあいにく、お参りの最中に雨が降ってきました。フォトスポットとなっている見晴らし台や「夕日100選」のモニュメントからの眺めは存分に楽しめませんでしたが、たくさんの祈りを受け止めてきた石仏は秋雨に濡れて静かに佇み、とても風情がありました。
ここは椿の町の方たちが受験や恋愛の願掛けにも通う、パワースポットでもあるそうです。

「椿温泉」のひとつ、「椿温泉しらさぎ」では「椿西国三十三ヶ所巡り」のための絵馬を販売しています。そこであらかじめ絵馬を購入し、願い事を書き入れてから椿山へ。お参りの最後に絵馬掛所へ吊るして願掛けをしました。掛けられた絵馬は定期的に「普門寺」へ奉納、ご祈祷されているそうです。

「椿温泉」周辺の家並みは昭和の風景を残しているところもあり、「椿西国三十三ヶ所巡り」へ行くまでの道のりはどこか懐かしい感じがしました。

「椿温泉」はにぎやかな観光地ではないため、海岸に打ち寄せる波の音が本当に美しく聞こえる場所です。そして、心ゆくまで極上のお湯と美味しい海の幸をのんびり味わえます。
「ゆったりとした何もしない時間がほしいな」と感じた際には、ぜひ「椿温泉」へと足を運ばれてはいかがでしょうか。

「椿温泉」公式サイト・アクセスなど

「椿温泉観光協会」公式サイト http://www.tubakionsen.com/stay.html
「湯治のできる宿しらさぎ」http://www.tsubaki-shirasagi.jp/
「つばき荘」http://tsubakisou.net/
「海鮮居酒屋 若竹」http://www.spa-wakatake.com/
「海椿葉山」http://umitubakihayama.com/
「国民宿舎ひらみ」http://www.wakkom.com/hirami/
宿によってはトイレ、洗面所などが共用となっています。
またアメニティも宿により異なりますので、あらかじめ公式サイトで確認してください。

*電車にて
JR「新大阪駅」より特急くろしおにて「白浜駅」下車(約2時間10分)
「白浜駅」よりバスまたはタクシーにて20分

*飛行機にて
東京「羽田空港」より「南紀白浜空港」まで70分
「南紀白浜空港」よりタクシーにて20分

*車にて
「吹田JCT」より156km(約2時間)で阪和自動車道「南紀白浜IC」へ。
「南紀白浜IC」を降り国道42号線(新宮・串本)方面へ約7分。