Travel
2020.02.11

「日帰りなんてマジカ」ポスターを勝手に検証!実際に奈良に泊まってみた結果は…?

この記事を書いた人

「鳴くよウグイス平安京」。794年に京都に都が遷る以前、ここ奈良が日本の中心でした。長い歴史を紡いできた奈良には、歴史ある建造物や国宝などが数多く残り、職人たちによって受け継がれてきた伝統工芸や、他の地域になかなか出回らない伝統野菜 “大和野菜” が息づいています。そして公園だけではなく道路を気ままに行き来する鹿も奈良を訪れる人に人気です。でも京都や大阪と比べて、奈良は日帰り観光のほうが多いという傾向もあるようです。
今回は奈良の魅力がギュッと詰まった滞在を、観光名所である興福寺や猿沢池のそばという抜群の立地にある「セトレならまち」に宿泊して体験してきました!

「泊まれ!!」奈良は日帰りじゃもったいない!

興福寺や奈良公園、猿沢池に歴史的町並みを残すならまち。奈良は近鉄奈良駅から徒歩圏内に魅力のある観光スポットに溢れています。駅から観光スポットへのアクセスのあまりの良さから、これまでは大阪や京都で泊まって奈良は「日帰り」というスタイルが観光客の多数を占めていました。ですが今回ご紹介する2018年11月オープンの「セトレならまち」や、「JWマリオット・ホテル奈良」、「ふふ奈良」、「星野リゾート」などの開業を控え、とうとう奈良にも宿泊ラッシュがやってきそうな予感…!

画像:奈良市観光協会提供
「切ない」と話題になったこのポスターが登場したのは2016年度末のこと

猿沢池周辺のホテルは奈良観光の拠点にピッタリ!

今回宿泊した「セトレならまち」は、近鉄奈良駅から徒歩7分。猿沢池を望む最高の立地にあります。

もう少しで「アイビー・ロード」風の鹿たち。先ほどのポスター画像の鹿は合成とのことですが、この写真は実際に私がホテル前で撮影したもの。宿泊すると早朝はこんな風景も普通に見られます!

目の前には猿沢池

猿沢池の横の階段をのぼれば興福寺です

この辺りはどこを撮影しても鹿が写り込むという、“ザ・奈良” が楽しめる最高の立地。この場所に限らず、奈良公園周辺では沢山の鹿さんたちがウロウロ。朝起きたら集団で移動しますが、早朝が苦手な子もいるみたいで眠そうな顔をしていますね(笑)

奈良に泊まって奈良を知る「セトレならまち」

「セトレならまち」は、「奈良を紐解き、奈良を創るホテル」がコンセプト。伝統工芸を体感できたり伝統野菜の畑もあって奈良について学べますので、特に奈良に泊まるのが初めてという方にはおすすめの一軒です。

エントランスの壁は奈良の町で変化していった左官の技術を、向かって右から左へ時代蒔絵のように表現したもの。まるでアートのようです。


近くで見ると藁が混じって壁から出ているのが確認できます。この壁ができてまだ1年少し。時を重ねると、この表に出ている藁がだんだんとなくなってスッキリするらしいのです。次に泊まる時は出ている藁が少なくなっているかもしれませんね。ホテルの中で時の流れが目で確認できるスポットです。


フロントの奥には奈良の伝統を継承してきた職人の技術が体感できる「マイスタールーム」があり、ゲストは自由に利用することができます。針や金物を使わない「三方格子」の技法で組まれた部屋で、屋根は奈良県吉野の徳田銘木が手掛けた杉皮葺き。壁は奈良県月ヶ瀬の土が使われた左官技術で作られています。
部屋の外と遮られているようで遮られていない、この絶妙な空間が非常に心地いい。

畳は、宮内庁にも納品しているという創業300年の吉野畳製造販売の浜田畳店のもの。ここまで奈良の伝統技術に拘っているんですから、障子はもちろん吉野の手漉き和紙。宇陀紙製作の技術を守り続けている福西和紙本舗が制作したものだそうです。

※宇陀紙:椿と白土(はくど)を混入して漉いた強度の高い和紙で、表具に適している。昭和51年に選定保存技術として選定された。


この超贅沢なマイスタールームでは写経体験ができます。もちろん、筆も墨も奈良で作られたもの。スタッフに声を掛けると写経の準備をしてくれます。
墨を磨る(する)なんて何十年ぶりだろう(笑)
でも、この作業、とても心が落ち着くんですよね。ぜひ写経体験お試しください。

ホテルの中庭には大和野菜の菜園

中庭には「ならまちファーム」という大和野菜の畑があって、普段私たちが目にする機会のない珍しい野菜がたくさん。ぜひお庭に出てみてください。
この畑は大和野菜の継承・啓蒙活動を行う「粟」の監修で作られています。奈良に遊びに行ったことがあるなら、大和野菜のレストラン「粟」の名前を聞いた人や実際にレストランでお食事をした人もいるのではないでしょうか。実は私も「大和野菜」というものが食べてみたくて、数年前に奈良にランチに訪れたのが「粟 ならまち店」でした。ホテルのお庭で「粟」のお野菜と再会するとは驚きです!

※大和野菜:奈良県の特産品として特徴をアピールできる大和の伝統野菜と大和のこだわり野菜


お野菜だけではありません。中庭に面したクラブラウンジでは奈良のお酒も楽しめます。花札ラベルの焼酎や梅酒はお土産にも良さそう!写真は八木酒造さん製造のもので、奈良市内の酒店や土産物店を中心に置かれていますよ。

木のぬくもりたっぷりのゲストルーム

吉野杉が使われた廊下

ホテルに入るとエントランスで吉野杉の香りがふわっと漂います。館内では吉野杉がふんだんに使われていて、エントランスやロビーだけではなく、ゲストルームのある廊下でも奈良を感じることのできる造りになっています。

写真はツインルーム。もちろんここにも吉野杉が多く使われています。ちょうど最上階の部屋だったので、天井が斜めになっていてどこか山小屋のようなほっこりした空間で癒されました。窓からは猿沢池や生駒山という眺望も楽しめます(部屋によって異なる)。部屋の窓から空を眺めていると、ふと “まほろば” という言葉が頭に浮かぶ、そんな素敵な景色です。

奈良の食材が楽しめるディナー

夕食は大和野菜はもちろん、奈良の豊かな食材を中心としたメニュー。野菜やお肉だけではなく調味料にもこだわりが。醤油は天然醸造の手法で作られた片上醤油(かたかみしょうゆ)が使われています。季節によっては中庭の畑で採れた大和野菜がお料理に使われることもあるそうです。

縦写真:宇陀あかね、右上:郷ポーク、左下:生ハム・大和野菜・片上醤油

奈良の夜の過ごし方

奈良では夕暮れから夜にかけて素敵な時間が流れます。二月堂からは奈良の市街地を見渡せる夕景が美しく、猿沢池には興福寺の五重塔が水面に映り込み幻想的に揺らめきます。ホテルの屋上には五重塔を目の前にした「星宙テラス」がありますので、ここからも夕景や澄んだ星空を楽しむことができます。

生駒山に沈む夕日や若草山の広々とした眺めが素晴らしい。奈良市は建物の高さ制限があるので、見晴らしも抜群です。

2階には「本のソムリエ」と称される掘部篤史氏がプロデュースしたライブラリースペースがあります。猿沢池や行き交う鹿を眺めながらのんびりと過ごせる場所で、自分で豆を挽いていただくスタイルのコーヒーも用意されています。

とにかく大きな窓からの眺めが素晴らしく、朝晩ほとんどの時間をここで過ごしていたような…。奈良の観光シンボルの鹿と猿沢池が同時に見られて、コーヒーを飲みながらエアコンの効いた空間で寛げるって、最高の贅沢!!

泊まるからこそ楽しめる早朝の奈良

奈良の朝は鹿天国!群れで移動する鹿をあちらこちらで見かけます。

鹿のお尻ってどうしてこんなに可愛いいんでしょう…

また、春日大社境内「飛火野(とびひの)」では、無料の鹿寄せも行われています。ナチュラルホルンの音色に誘われて鹿が沢山駆け寄ってくる様子は圧巻!!集まってくれた鹿たちにはご褒美としてどんぐりが配られます(笑)

夏は朝9時半から、冬は朝10時からなので、これも奈良に泊まった人の特典と言えるでしょう。詳しい開催スケジュールは奈良の鹿愛護会のホームページでご確認ください。

奈良に泊まってみて

実際に奈良に泊まってみたら…、、「思いがけず楽しめた!!」というのが正直な感想。失礼ながら、奈良といえば修学旅行の定番、あとは鹿に大仏?というイメージしか浮かびませんでしたが、京都や大阪とはまた違った良さがいっぱい詰まっていて、見どころ満載!そしてとにかく早朝に鹿の写真を撮るのが楽しい!そして夕暮れ時の奈良の町の美しさ…。
まだまだ宿泊客が少ないので朝と夜はとても静か、人に酔わない、観光疲れしないのもおすすめのポイントですよ。

セトレならまちの基本情報
住所:奈良県奈良市高畑町1118
アクセス:近鉄奈良駅下車徒歩7分、JR奈良駅下車徒歩20分、タクシーで5分
公式HP:セトレならまち
奈良市観光協会
公式HP:奈良市観光協会

書いた人

生まれも育ちも大阪のコテコテ関西人です。ホテル・旅行・ハードルの低い和文化体験を中心にご紹介してまいります。普段は取材や旅行で飛び回っていますが、一番気持ちのいい季節に限って着物部屋に引きこもって大量の着物の虫干しに追われるという、ちょっぴり悲しい休日を過ごしております。