Gourmet
2020.02.13

フランス在住者直伝!仏流醤油の気になるお味や調理法

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日本で王道の調味料といえば醤油。醤油を使った料理を口にしない日はないというぐらい、日本人の食生活には欠かすことのできない調味料ですね。実は遠く離れたフランスの地で、近年日本の醤油が人気という事実をご存知でしょうか。なんとフランスの地方の小さなスーパーでも、醤油を見かけるほど、フランスでは醤油が調味料の一つとして一般的になりつつあります。また、異国の地フランスでは日本の醤油も進化を遂げ、日本では見かけないある醤油が大人気なのです。フランスで日本の醤油といえば、やっぱりキッコーマン。今回キッコーマン社のコーポレートコミュニケーション部の取材協力の下、フランスの醤油事情をご紹介します。

ここ10年で醤油の出荷量は約3倍

日本のように各家庭に一本とはいかないまでも、醤油を常備しているフランス人は少なくはありません。以前は和食好きのフランス人が醤油を購入しているようでしたが、最近では和食を作る習慣のないフランス人にも調味料の一つとして、受け入れられるようになりました。私が渡仏した10年前に比べ、スーパーでは何種類もの醤油が販売され、売り場面積も拡大しています。

キッコーマンの醤油はここ10年でフランス市場への出荷量は約3倍にも拡大したとのこと。ここまで醤油の人気が出た理由を伺ってみると、「現地の食材や嗜好に合わせたレシピを開発し、醤油を使ってもらうというのが、弊社の海外戦略における基本指針です。もう一つは、近年、和食が浸透したことも挙げられると思います。現地の食文化との融合、そして、和食の広がりによる相乗効果が今日の成果につながっていると考えております」との話でした。

フランスで販売されている醤油は?

 

一口に醤油といっても、醤油は奥深い世界。様々な種類があります。フランスではどのような醤油が販売されているのでしょうか。まず、一般的な醤油は日本と同様に、濃口醤油です。醤油を意味するSauce soja/ソースソヤとして売り出されています。その他に減塩醤油、寿司・刺身用醤油、溜まり醤油、グルテンフリー醤油があります。ヨーロッパではグルテンアレルギーの人も多くいて、グルテンの大量摂取を警告している風潮があるので、グルテンフリーの醤油は時代を反映した商品です。また、フランスでは日本では見かけない甘い醤油通称Sucréスクレがあります。

甘い醤油って何

フランス人と醤油の話になる時、必ずといっていいほど、この甘い醤油の話題になります。私の育った関西では甘い醤油の文化がないので、最初は何その醤油?!と頭の中でクエスションマークが飛び交ったほどでした。フランスでは、醤油といえば甘いと思っている人も少なからずいるようで、いかにこの甘い醤油がフランスで市民権を得ているかわかります。なんとこのスクレ醤油はフランス発祥なのだとか。一部のフランス人の間で醤油に砂糖を混ぜて白米にかけて食べるスタイルが浸透していたことから、キッコーマンではこのスクレ醤油を2007年に商品として売り出したのだそう。実際フランス人に聞いてみると、お米と合うようで、お寿司は必ずスクレ醤油で食べるという人もいました。

フランスの甘い醤油の存在は前々から知っていましたが、使用する機会がなかったので、今回の甘い醤油を購入してみて、初試食してみました。肝心の味はというと、甘い醤油という名の通り、醤油に砂糖を混ぜたそのままの味です。ただ、普通に醤油に砂糖を入れただけでは出てこないまろやかさがあるように感じられました。日本ではお餅を食べる時に、砂糖醤油で食べるのが好きという人が結構いますよね。この甘い醤油はお餅に合いそうな味です。フランス人がお米に甘い醤油をかけて食べるというのは、その感覚に近いように思いました。ちなみに、九州にも、甘い醤油を食べる文化がありますよね。九州の甘い醤油は、砂糖以外に、みりんやだしを使用しているものが多くあります。甘さの中にも旨味があり、味わい深い醤油です。九州の甘い醤油に比べ、フランスの甘い醤油は、醤油ベースに砂糖の甘みがあるシンプルな醤油となっています。

フランス人の醤油の使い方

フランスでは醤油といえば、お寿司を食べる時につけて食べる調味料として一番に思い浮かべる人が多いですが、最近は違う使い方をするフランス人も増えています。

以前、90歳のフランス人宅にお邪魔した時に、醤油を使っていると話してくれました。日本人にはなんてこともないけれど、海外では醤油は発酵臭が強く受け入れにくいという話を聞いたことがあったので、90歳のフランス人が醤油を使っている!ということに驚きを覚えたと同時に、どのように醤油を使用しているのか興味津々。聞いてみました。醤油は肉料理を作る時に、少量入れて、味付けをしているのよとの話。

料理を引き立てるために醤油を使うのがフランス流の使い方の一つとして浸透しているようです。私自身味覚が凄く発達している訳ではありませんが、フランス料理を作る時に隠し味として醤油を少量入れてみると、醤油の味は全くせず、味に締まりがでるように思います。チャーハンの仕上げに醤油をさっと回し入れ、味が引き立たせますよね。それに似ているかもしれません。

また、今回ご協力いただいたキッコーマンのフランスのサイトでは、醤油を使ったレシピが多数公開されています。フランスで一般的に醤油は米や麺の味付けで使われていることが多いので、それ以外どんなレシピが人気なのか聞いてみました。ここ一年検索の上位で上がったレシピは、野菜だしに醤油とごま油で味付けをした和風スープや鯖のマリネ、焼き鳥とのことです。焼き鳥や和風スープ以外にも、鯖のマリネなど洋風の料理に醤油が使われているのは、興味深いですね。

次のブームはポン酢!?

最近スーパーの醤油売り場には、キッコーマンのポン酢が並ぶようになりました。ポン酢を商品化した経緯を伺ってみると、北欧諸国で、醤油にレモンや砂糖などを混ぜて、サーモンやサラダなどの調味料として使用するスタイルが浸透していたのだそう。そこで、キッコーマンの商品開発チームが市場調査を実施し、現地の消費者の味覚に合ったスペックを開発し、「PONZU」という日本の商品名で発売したとのこと。

実際、ポン酢を使っているフランス人によると、サラダのソースとしても良く合うし、フランスのねぎ、リーキを炒めるときにポン酢で味付けをすると美味しい!と話てくれました。フランスには日本のように多くの種類のドレッシングが販売されていないので、サラダをよく食べるフランス人にとって、ポン酢は使いやすい調味料の一つとなるのかもしれません。

日本の醤油が美食の国フランスで調味料として一般的になりつつあるというのは、興味深い事実です。これから醤油がどのようにフランス人の日常的な食生活に溶け込んでいくのでしょうか。今後もフランス人の醤油の使い方に注目です。

書いた人

大阪生まれ。学生時代は東京で過ごし、卒業後なんとなく思い立ちフランスへ移住。パリの大学院では文化コミュニケーションを学ぶ。気がつけばフランスでの生活も十余年。どっぷりと洋の生活に浸かる中で、和の魅力を再発見する日々。第二黄金期時代の日本映画とスクリューボールコメディ、銘仙着物、和食器が好き。