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2017.06.29

便器がアート作品に!?名作捜索隊デュシャン編!

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デュシャンの名作を探せ!

昨年来日した、木製の台座に自転車の車輪を逆さまにして取り付けた『自転車の車輪』など、既製の工業製品【レディ・メイド】を使って次々と作品を制作したフランスの芸術家マルセル·デュシャン。なかでも横倒しになった男性用便器にサインをしただけの作品『泉』は、それまでの芸術の概念を塗り替え、2004年には「世界の芸術関係者500人が選ぶ最もインパクトのある20世紀芸術作品」において、ピカソの『アヴィニョンの娘たち』、アンディ・ウォーホルの『マリリン・モンロー(20)』をおさえ、1位に輝きました。そんな現代美術の父とも呼ばれるデュシャンが今年、生誕130周年、『泉』が誕生して100年というメモリアルイヤーを迎えます。昨年から日本各地で企画展も開催され、彼への関心が高まっているようです。

デュシャンは日本との関わりも深く、特に富山県出身の美術評論家·瀧口修造(たきぐちしゅうぞう)とは深い交流がありました。今回、ご紹介する富山県美術館は、『トランクの中の箱【特装版】』のほか、瀧口が編纂(へんさん)した「マルセル・デュシャン語録」のためにデュシャンが制作した『プロフィールの自画像』の原画も収蔵しています。また、東京大学の美術博物館が所蔵する『彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも』も彼の画業を語るうえで最も重要な作品のひとつなので、ぜひ一度観に行ってみてください。

京都国立近代美術館で発見!

『泉』

P7_探せ京近美マルセル・デュシャン 『泉』 1917/1964年 京都近代美術館蔵©Succession Marcel Duchamp /ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2017 G0805

デュシャンも参加し、既存の芸術の概念を変えた運動「ダダ」の関連作品や資料を数多く収蔵する京都国立近代美術館。なかでも『泉』はダダを語るうえで最も重要な作品です。1917年、「6ドルを払えばだれでも出品できる」という展覧会にデュシャンが匿名で発表。横たわった男性用便器にR.MATTEというサインが書かれただけのこの作品の展示を、審査員は拒否します。しかし、しばらくすると共鳴する人が現れ、『泉』は、美術史における記念碑的作品となったのです。※常設展示中。

京都国立近代美術館

住所 京都府京都市左京区岡崎円勝寺町
開館時間 午前9時30分~午後5時(入館は閉館の30分前まで)、展示替期間(2017年8月8日、10月24日)、年末年始
休館日 月曜日(ただし月曜日が祝休日の場合は開館、翌火曜日休館)
観覧料(一般)1500円

富山県美術館で発見!

『トランクの箱(特装版)』

P7_探せ富山マルセル・デュシャン『トランクの箱(特装版)』 富山県美術館蔵© Succession Marcel Duchamp / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2017 G0843

今夏、富山近代美術館が富山県美術館として移転リニューアルオープン。ピカソ、ウォーホルなど名高い現代美術家の作品を数多く所蔵しています。この作品は、デュシャンの主要作品69点を彼自身がミニチュアサイズに複製し、トランクに詰め込んだ20部限定の特装版。オリジナル作品『偽りの風景』も付いています。※8月26日からの開館記念展で展示予定。

富山県美術館

住所 ︎富山県富山市木場町3−20
開館時間 9時30分〜18時(入館は閉館の30分前まで)
休館日 水曜日(ただし祝日の場合は開館)、祝日の翌日、年末年始
入館料(一般) コレクション展 300円 ※企画展は展覧会により異なる。

東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部駒場博物館で発見!

『彼女の独裁者たちによって裸にされた花嫁、さえも』

P7_探せ東大マルセル・デュシャン『彼女の独裁者たちによって裸にされた花嫁、さえも』 東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部駒場博物館蔵© Succession Marcel Duchamp / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2017 G0843

東洋美術の資料、中南米やアジアの考古学資料だけでなく、1970年代以降に現代美術の所蔵もはじめた東京大学教養学部美術博物館。その収蔵第一作目が『彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも』、通称『大ガラス』です。8年もの歳月を費やしたものの製作を途中で放棄した未完の作品で、ガラスの上部は「花嫁」、下部が「独身者」を意味します。
※常設展示中。

東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部駒場博物館

住所 東京都目黒区駒場3-8-1
開館時間 10時〜18時(入館は閉館の30分前まで)
休館日 火曜日
入館料(常設展) 無料