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2018.09.13

フェルメールの作品には際立った特徴が! 知って楽しい名画のヒミツ

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17世紀のオランダで活躍した天才画家、ヨハネス・フェルメール。2018年10月から、国内過去最大規模の「フェルメール展」が開催されることもあり、あらためて注目を集めています。現存する35点の彼の作品には際立った特徴が。和樂INTOJAPANでは、「風俗画」「窓」「1人」「中東の布」4つのキーワードから、名画のヒミツをひもときました!

フェルメール作品の特徴とは?

現存する35点のうち28点が「風俗画」

フェルメール作品「ワイングラス」1661~62年頃 67.7×79.6㎝ ベルリン国立絵画館 ©Album/PPS通信社

古今東西、絵画の発展にはよきパトロンが不可欠です。独立したての共和国、つまり君主がいないオランダで、画家に絵を注文できたのは王侯貴族でも教会でもなく、裕福な市民。大仰な宗教画が望まれた他国と違い、小ぶりな風俗画(室内画)や、生活空間になじむ風景画が好まれました。そんな時流を敏感に察し、ささやかな室内画を28点も残したのがフェルメール。絵の中に愛用の椅子やオランダの古地図が登場することもありましたし、壁には額装した絵画もよく描き込まれました。その画中画にキューピッドや黙示録(もくしろく)などのモチーフを描くことで、人物たちの人間模様や心情を暗喩(あんゆ)するのが当時のお約束だったのです。「ワイングラス」にも描かれている、市松タイルの床もフェルメール好み。室内画28点中10点の床に描かれています。

現存する35点のうち16点に「窓」がある

フェルメール作品「地理学者」1669年 51.6×45.4㎝ シュテーデル美術研究所 ©Album/PPS通信社

フェルメールの絵を思い浮かべたとき、そこに「窓」はあるでしょうか? 実は、現存作品の約半数にあたる16点に窓があり、ほとんどが画面左に描かれています。フェルメールは室内を描くとき、北の窓から光が降り注ぐ自分のアトリエを手本にすることが多かった。「窓」は、画家が絵の中に閉じ込めた光を、より自然に見せるための装置だったのです。また、窓は人を外へ誘う装置でもありますが、フェルメールはそこに風景を描き込むことを一切しませんでした。こんなに多くの窓を描いたのに、なぜ?

現存する35点のうち「1人」を描いた絵が20点

フェルメール作品左「牛乳を注ぐ女」1660年頃 45.5×41㎝ ©Rijksmuseum,Amsterdam/PPS通信社 右「青衣の女」1663~64年頃 46.6×39.1㎝ ©Bridgeman Images/PPS通信社 ともにアムステルダム国立美術館

フェルメールは抑制を好みました。「ひとり」を描いた絵が20点。彼らの表情に激しさはなく、むしろ見えないベールで感情を隠しているみたいです。色彩や小道具はすっきり。背景もシンプル。最初は壁に額が描かれていたけれど、制作過程で本人が消したという作品も少なくありません。「牛乳を注ぐ女」の背景には、当初、地図が描かれていましたが、フェルメールは制作の途中でそれを消しました。ただし、光の表現だけは雄弁に描き込まれ、ミニマルな画面に深みと詩情を与えているのです。この「引き算の美学」は、同時代の画家にはない特徴です。

現存する35点のうち8点に「中東の布」が登場

フェルメール作品「水差しを持つ女」1664~65年頃 45.7×40.6㎝ メトロポリタン美術館

17世紀オランダは、東インド会社に象徴される貿易大国。世界に先駆けてグローバル化が進んでいたようで、フェルメールの絵にもその繁栄を表すモチーフが描かれています。ひとつは、主要交易国のペルシャから運ばれた中東の絨毯(じゅうたん)やタペストリー。濃密で華麗な文様の織地は、8点もの作品に登場しています。また、中国・明の磁器もちらほら。ブルーの絵付けが施された染付は、後にオランダの磁器「デルフト焼」の元ネタにもなりました。

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