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2016.04.07

湯島・上野・谷中を歌川広重の浮世絵で巡る!東京下町散歩案内

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広重の目線で浮世絵ワールドを歩いてみよう!

 
 風景を描いて比類なき天才性を発揮した歌川広重(ひろしげ)。日本全国の名勝地を多く描きましたが、驚くのは、広重が描いたその風景がそのまま残っている土地があるということ。残っていることより、むしろ「どうしてこんなに正確に描けたのだろう?」と感心してしまいます。
 
 江戸に生まれた広重は、故郷を愛し、数多の名作を手がけたことで知られています。そんな広重が描いた江戸の町のなかから、本日は「今が旬! 今日明日にでも行かないと!」という上野界隈をご紹介。湯島で天満宮にお参りして、上野公園を歩き、谷中までてくてくと。広重の名画をめぐる下町散歩、湯島天満宮からはじめましょう。

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写真/菅原道真ゆかりの湯島天満宮本殿と、広重が『江都名所 湯しま天満宮』(大判錦絵 天保年間1830~44年)で描いた天満宮を〝男坂〟から望む、今も昔も変わらない景色。「湯島天満宮」東京都文京区湯島3-30-1 開門時間6時~20時

江戸時代のにぎわいが目に浮かびます

 広重は神社仏閣を描くとき、お堂などを直接描くことをあまりせず、近景に坂や門を置くことを好みました。湯島天満宮下の男坂に到着して社(やしろ)を見上げると、そこに見えるのは広重の描いた世界! 江戸のころ、神社やお寺の境内やその周辺は、市や縁日がたち、料理屋が並びました。この浮世絵にも、人の往来だけでなく、楽しげな宴席の様子を見ることができます。この絵の中に、赤ちょうちんが下がる料理屋に、早くも話題のとと(NHK朝ドラ「とと姉ちゃん」で、西島秀俊さん演じる父のこと)がいそうな気がしませんか?(時代も地域も違いますが…)

広重の時代も上野は桜の名所でした

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写真/歌川広重は『名所江戸百景』で、上野公園に立つ観音堂を近景に、不忍池を遠景に描いた。絵に登場する〝月の松〟は明治時代の台風によって消失したが、2013年に復活。江戸の庶民に愛された景色を追体験できる。「清水観音堂」東京都台東区上野公園1-29 拝観時間9時~16時

 湯島天満宮から歩いて数分で不忍池。スワンボートが行き交う池を越し、弁天堂の脇を抜けて向かうのは清水観音堂です。東京一の桜の名所である上野公園ですが、今の時期の観音堂周辺は比較的ひと気の少ないエリア。桜と松と水辺の景色を、静かに楽しみたいものです。
 観音堂に上ったら〝月の松〟を覗いてみて。松の枝が描く輪を通して不忍池に浮かぶ弁天堂を見る風景は、きっと江戸時代のまま。この変わらなさは奇跡ともいえるのではないでしょうか。変わり続ける町東京では、広重が見た風景をそのまま残す場所はほとんどありません。けれど、広重が描いた地に立ち、その絵を思い浮かべると、彼がいかに江戸という町を愛していたのかが強く伝わってくるのです。 
 このあたりで昼食を…というなら、公園内の日本料理屋「松韻亭」がおすすめ。桜の名所は緑も紅葉も美しいもの。大きな窓いっぱいに広がる桜は、これから紅葉の季節までたっぷり楽しむことができます。

 次回の「広重の眼で、湯島・上野・谷中を歩いてみよう!<後編>」では、乙女ゴコロをくすぐる町、谷中をご紹介します。

湯島・上野 立ち寄りスポット

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十三やくし店/江戸っ娘の必需品

1736年に初代が当地に店を開いて以来、280年近くにわたって手作りのつげの櫛を商う老舗。鹿児島産のつげの木へのこだわりは、木の生産にまで注文をつけるほど。その櫛は3代にわたって使えるという。
東京都台東区上野2-12-21
 10時~18時30分 日曜休

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松韻亭/特等席で桜鑑賞

明治8年、上野公園内に創業した上野の森を堪能できる料亭。昼の予約は2,600円~、夜は鳥すき5,500円~、会席6,800円~。茶店「喫茶去」も併設。
東京都台東区上野公園4-59 11時~15時L.O./17時~22時L.O.(祝・日曜は夜17時~21時L.O.) 無休(年末年始は休業)