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2017.01.25

『書』とは何か、現代アートからひもとく白と黒の世界

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書のはじまり

書の歴史は3300年以上前、中国で亀の甲羅や動物の骨に、刀で文字を刻みつけた甲骨文からはじまりました。それがいつしか木簡になり、石碑になって、やがては現在のような紙の上に墨と筆を用いて文字を書くようになるのです。その意味において、書とは墨で文字を書くという狭い定義に収まるものではないのです。-2015年和樂5月号より-

書とは何かという命題を突きつける二作品

では、紙と墨を使っていれば、それはすべて書と呼べるのか?そのひとつの答えといえるのが、現代アートの先駆的作家として知られるジャクソン・ボロックのその名も「黒と白」と呼ばれる作品です。
s_DMA-AKG340978ジャクソン・ポロック『黒と白ナンバー6』
光沢ペイント カンヴァス 142.5×114.9㎝ 1951年 個人蔵

ポロックは20世紀のアメリカが生んだ偉大な作家のひとりであり、抽象表現主義の代表的な画家でした。彼は何かを描くのではなく、自らの意識を無意識のうちにキャンバスに写し取ることをひとつの表現として模索した作家。キャンバスを床に広げ、刷毛やコテで空中から塗料を滴らせる「ドリッピング」や、線を描く「ポーリング」という技法を使って、自らの内面にあるイメージを具現化しようとしました。アクション・ペインティングと呼ばれるこうした作品は、書家が自らの内面の意識や思想を、書きぶりという筆さばきによって表現しようとする行為と、何ら変わることのない技法と言えるでしょう。

こちらは、昭和の三筆と呼ばれた手島右卿(てしまゆうけい)の作品。
s_DMA-手島右卿「吟月」手島右卿『吟月』
65.5×124.5㎝ 1959年 光ミュージアム蔵

『吟月』という文字を知っているからこそ、そのように読むことができますが、“黒と白”という世界において、ボロックの作品と本質的にどこか違うのかと問われれば、すぐに答えが出せるものではないでしょう。

s_スクリーンショット 2017-01-25 11.59.39