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Culture
2020.06.05

教室で初体験?大奥の女性同士で?「春画」はストーリーを知るとエロさ倍増でスゴイ!

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男女が濃厚に絡み合っている。ただそれだけでも刺激的ですが、行為中の2人のストーリーや詳細なシチュエーションがわかると、ますます興奮度が増すのが「エロス」ではないでしょうか。

日本には、海外の芸術家たちの度肝を抜いた「春画」というエロティックなアートがあります。春画には男女のみならず、女性同士や男性同士、3P以上の複数性交、はたまたタコのような人間以外の生き物との性交が描かれるなど、その内容は多種多様。このことから江戸時代は、誰もが性の楽しみを享受していたことがわかります。

そんな春画には、詞書(ことばがき)といって、絵の解説やストーリーが書かれているものも多いことを知っていましたか?1枚の絵にストーリーが添えられることで、春画のもつ”エロさ”は倍増。詞書を読めばもっともっと春画を楽しめるのです。

そこで本記事では、春画の「詞書」に着目してご紹介。想像力を膨らませて、江戸時代の性生活の世界に飛び込みましょう!

※詞書の訳は一部表現の調整や、筆者の意訳を含んでいます。また、画像は適宜トリミングを行っています。

行為中の音がリアル!葛飾北斎

浮世絵と言えばこの人、というほどの有名人・葛飾北斎(かつしか ほくさい)。北斎の春画はダイナミックで細部まで非常にリアル。ただエロティックなだけでなく、髪や衣服など、細部の美しさにもこだわりが見られます。

まずは非常に有名な春画「海女と蛸(あまとたこ)」をご紹介しましょう。2匹のタコと絡み合っているのは海女さんです。

wikimedia commonsより

【詞書訳】
大タコ「ずっと狙っていたけれど、今日という今日はいよいよ捕まえた。吸って吸って吸い尽くしてやろう。ズウッズッ、チュウチュウ……」

海女「憎らしいタコだこと。奥の方を吸われるので息がはずんで……あぁ、もう、どうすればいいの……。いい、いい。ハァ、フウ」ヒチャヒチャグチャグチャ……。

大タコ「八本足の絡み具合はどうだ?あれあれ中が膨れ上がっているよ」湯のような淫水がぬらぬら、どくどく。

海女「もうくすぐったくなって、腰に感覚がなくなって……行き続けだわ。アレアレソレソレ。いいよいいよ」

小タコ「親方(大タコ)が終わったら、今度はこのオレが、イボを使って体中擦って淫水を吸いだしてやろう。チュウチュウ」

北斎の春画は、グチャグチャ・チュウチュウなど、音の表現が豊かなのが特徴。音が入ることで、よりリアルに感じられるのではないでしょうか。

女性が「アレアレソレソレ」と言っているところなど思わずクスッと笑ってしまいますが、春画は「笑い絵」とも呼ばれており、シュールで面白い表現も多用されています。

次は、女性同士が男性器を模した道具を使っている春画です。

wikimedia commonsより

【詞書訳】
妹奥女中「おすき(相手の名前)、とってもいいよ。フウフウ、(男性器が)本物ならもっと良かったと思うけれど。本当におすきがカワイイ。本当のお姉さんだと思って……いる……の。ああ……」

姉奥女中「おつび(相手の名前)、気持ちいい?この間取り寄せたこれ(男性器型の道具のこと)、あぁ、大きい……!」

ナレーション:しばらく口をスッパスッパ、チュウチュウと吸い、肩で息をして口もきけないほど。二人の鼻息と音が掛け合っている。「フウフウ、ムムム」ぴっちゃりぴっちゃり「ハァハァ」……ぐすっぽ、びちゃり、ぐちゃり……。

吐息から音まで、擬音がかなりリアルに長々と書かれています。この二人は「奥女中」といって、江戸城大奥で働く女性と推測されます。女性ばかりの空間で、女性同士がこのような行為をしていたかどうかははっきりしませんが、「女の園」への妄想も含めて書かれたのでしょう。

「題句」でシチュエーションを読み解く!磯田湖龍斎

磯田湖龍斎(いそだ こりゅうさい)は、鈴木春信を師とする浮世絵師。ご紹介するのは『風流十二季の栄花』という、月々の年中行事の絵にエロティックな句を記したものです。例えば「花の名も よしや卯月の 色すがた」という句には、「卯月(うづき/4月のこと)」と「疼き」が掛かっています。このような絵解きが楽しめるのが、磯田湖龍斎の春画の魅力です。

こちらの春画が描いたのは2月。ハッキリ行為が描かれているわけではありませんが、一体何をしているのでしょうか。

wikimedia commonsより

【題句】
如月(2月) 初午や今日を初めのさしもぐさ

【詞書訳】
少年「それ、温かくていい気持ちだろう」
少女「痛いけれど私は我慢しているのよ」

「初午」は2月最初の牛の日のことで、今でいう入学式の日でもありました。「挿艾(さしもぐさ)」はお灸につかうヨモギのこと。これを読み解くと、「午」は男性器のこと、「挿艾」はそれを挿入することを表していると想像できます。

少年は右手で硯を擦るふりをしながら、机に突っ伏した少女と行為を行っているのでしょう。「初午」とあり、少女が痛がっていることから、恐らくこれが2人の初体験。破れた障子から誰かが覗いています。

学校でこんな行為をするなんて、随分大胆なシチュエーション。性器が描かれているわけではありませんが、想像力を掻き立てるエロティックさがあります。

風流で知的な楽しみも。奥村政信

背景や小物まで丁寧に美しく描かれた、奥村政信(おくむら まさのぶ)の春画。北斎のように長い詞書ではなく、色っぽい意味を含んだ句が添えられています。一見するだけでも芸術性の高さが伺えますが、井原西鶴(いはら さいかく)の『好色五人女』の引用や、絵解きが含まれているなど、知的な楽しみができるのも魅力です。

wikimedia commonsより

【題句】
月に愧(はじ)芋くう口をすぼめけり

【訳】
中秋の名月が見ているので、恥ずかしがって芋を食う口をすぼめている。
※芋は男性器、口は女性器を表している。

江戸時代、性は誰のものだった?

レンタルビデオ店で、18禁コーナーに入ったことがある女性はほとんどいないでしょう。インターネット上には、男性向けの性的コンテンツは星の数ほどありますが、女性向けはほんの一握り。その存在すら知らない方も多いはずです。

現代は、女性が表立って「性」を楽しむことを、特に意識するまでもなく否定されているように感じます。しかし、江戸時代は奥様向けに春画を売り歩く業者がいたり、嫁入り道具に春画を持っていったりするなど、性的コンテンツは女性にとっても身近なものでした。

今回ご紹介した春画も、女性が見ても楽しめるものだったと思います。それなのになぜ、今の性の楽しみは、ほとんど男性だけのものになってしまったのでしょうか。

「女性ももっと性に積極的になろう」と言いたいのではありません。春画は、時にそのシュールさやありえないシチュエーションに笑ったり、高い知的レベルを求められたり、情景の美しさにため息をもらしたりできるものです。江戸時代の性は、誰もがあらゆる楽しみを享受できるものでした。現代にもただ”エロい”という視点で見るのではなく、生きる喜びのひとつとして、男性も女性も楽しめる性的コンテンツがあってもいいのではないかと感じます。

エロスとは、もともと「生きる欲求」という意味です。江戸時代の人々は、今の私たちより「生」を楽しんでいたのではないでしょうか。

書いた人

大学で源氏物語を専攻していた。が、この話をしても「へーそうなんだ」以上の会話が生まれたことはないので、わざわざ誰かに話すことはない。学生時代は茶道や華道、歌舞伎などの日本文化を楽しんでいたものの、子育てに追われる今残ったのは小さな茶箱のみ。旅行によく出かけ、好きな場所は海辺のリゾート地。