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2017.03.24

浮世絵誕生は実はこの絵から!国宝『風俗図』の謎は深い

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『風俗図(彦根屛風)』

この屛風は、京都・六条三筋町(ろくじょうみすじまち)にあった遊里の情景を描いた寛永年間(1624〜44)の作品と考えられ、着飾った遊女らがさまざまな姿でクローズアップされています。こうした風俗画がやがては遊女ひとりを描いた美人画へと発展していったため、この屛風は浮世絵の源流ともいわれています。

遊里の風俗を描いたこの作品、謎が多いことでも知られています。たとえば、右から2番目に立つ女性を見てください。着物が芭蕉柄であることから、この絵の中には“世の無常”を女性の姿で謡い上げる謡曲『芭蕉』の物語が秘められているのではないかという見立てがされています。描かれた場所柄、悲恋の女性の物語が込められた浮世の絵なのかもしれません。
s_DMA-①国宝 「風俗図(彦根屏風)」六曲一隻 紙本金地着色 94.0×271.0㎝ 寛永年間(1624〜44) 滋賀・彦根城博物館蔵 国宝

この屛風は代々、彦根藩主だった井伊家に伝えられたので、広く『彦根屛風』の名で知られています。屛風の正面から左にかけては中国趣味の画題である「琴棋書画(きんきしょが)」を踏襲。しかし遊里の情景を描いた絵らしく、琴は三味線、棋は双六、書は恋文、画は屛風にそれぞれ置き換えられているのがこの作品の面白さです。
トリミング
右から二番目の禿(遊女見習)を従えた女性の着物に注目すると、柄が芭蕉になっていることがわかります。左の洋犬を連れた遊女の立ち姿は、元祖見返り美人と見ることもできる。さまざまな意味で浮世絵の始祖と呼べる作品と言えるでしょう。