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2019.09.03

妖怪画 ザ・ベストテン!付喪神、猫また、九尾の狐…北斎・若冲・国芳・暁斎の浮世絵も!

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都合のわるいことは全部妖怪のせい!?

古来、日本人は日常に不思議なことがあれば、「妖怪のせい」にしていたといいます。いたずら好きの妖怪たちは絵画の中から抜け出すことだって、なんのその。懐かしの歌手たちに化けて、伝説の歌番組が始まります!

黒柳鍋子

◆司会の黒柳鍋子(くろやなぎなべこ)でございます。『付喪神絵詞』(国際日本文化研究センター蔵)より

木魚宏

◆同じく、木魚宏(きぎょひろし)です。靖々光一『滑稽百鬼夜行絵巻』(国際日本文化研究センター蔵)より

第10位
『化けられて』クビー・オング

クビー・オング
◆鍋子 巨大な顔に手が付いて、本当にいたら怖いけど、顔がかわいいわね
◆木魚 江戸時代、備後三次(びんごみよし)藩(現・広島県三次市)に伝わる怪異を記した『生稲物怪録(いのうもののけろく)』に登場する妖怪です。三次藩士の生稲平太郎のもとに次々と妖怪が出てくるのですが、平太郎はまったく怖がらなくて、ついには妖怪のほうが降参したんですって(笑)。
『生稲物怪録絵巻』(部分) 万延元(1860)年 個人蔵 三次市教育委員会提供

第9位
『化けてこいよ』猫また和子

猫また和子
◆鍋子 人気妖怪の登場です! 古くは鎌倉時代、藤原定家の『明月記(めいげつき)』や兼好法師(けんこうほうし)『徒然草(つれづれぐさ)』にも猫またの話が記されていますね。
◆木魚 この猫または、江戸時代中期、佐脇嵩之(さわきすうし)の『百怪図巻(ひゃっかいずかん)』に描かれたもの。多数の妖怪を並べて描いた図鑑形式の絵巻が人気を博しました。
佐脇嵩之『百怪図巻』(部分) 元文2(1737)年 福岡市博物館蔵

第8位
『おばけになりました』バケ22スペシャル

バケ22
◆鍋子 まあ! このお三方も妖怪図鑑形式の絵巻からの登場ですね。右から「どうもこうも」「はぢっかき」「うはん」というお名前なのね。
◆木魚 江戸末期に描かれた『化物尽絵巻(ばけものづくしえまき)』からやってきてくれました! この絵巻には22体の妖怪が描かれているんですって。まるでアニメのキャラクターのように、みなさん個性が際立っていますね。
北斎季親(ほくさいすえちか)『化物尽絵巻』(部分) 江戸時代末期 国際日本文化研究センター蔵

第7位
『三味線は気まぐれ』和楽器クラブ

和楽器クラブ
◆鍋子 まあまあ、三味長老(しゃみちょうろう)さん、真っ赤なお召しものが素敵ですねえ。月岡芳年『百器夜行(ひゃっきやぎょう)』に描かれた妖怪ですが、実は元絵があるんでしょう?
◆木魚 はい。『画図百鬼夜行(がずひゃっきやっぎょう)』という版本が大ヒットした鳥山石燕(とりやませきえん)の妖怪本『百器徒然袋(ひゃっきつれづれぶくろ)』に同じ姿の三味長老がいるんですよ。
百器夜行
月岡芳年『百器夜行』(部分) 大判錦絵二枚続 慶応元(1865)年 国際日本文化研究センター蔵

第6位
『狐の勲章』九尾大輔

九尾大輔
◆鍋子 九尾(きゅうび)の狐はいつ見てもかっこいいですね。りりしい顔にフサフサの9本の尾! 素敵だわ~。
◆木魚 そりゃあ、そうですよ。幕末から明治中期に活躍した河鍋暁斎(かわなべきょうさい)の肉筆の屛風(びょうぶ)画ですから! 暁斎は、「画鬼」とも呼ばれた人気絵師。妖怪画も多く描いていて、どの画もエネルギッシュで魅力的です。
河鍋暁斎『九尾の狐図屛風』(部分) 二曲一隻 明治3(1870)年以前 河鍋暁斎記念美術館蔵

第5位
『不思議江戸シンデレラ』フェアリー・フォー

フェアリー・フォー
◆鍋子 江戸の街から中継のようです。かわいらしい化粧道具の妖怪さんたち、こんばんは~。花火を観に行っているところなんですね。江戸時代の奇才・歌川国芳(うたがわくによし)の浮世絵は、やはり発想が面白いです。
◆木魚 「武者絵(むしゃえ)の国芳」と称されていましたが、ユーモラスな戯画も天下一品ですよね。妖怪画もたくさん描いています。
花火
歌川国芳『道外(どうげ)化粧のたわむれ 花火』(部分) 団扇絵判錦絵 天保14(1843)年ごろ ギャラリー紅屋

第4位
『なごり革』サカナ

サカナ
◆鍋子 明治時代になっても妖怪ブームは続いたようで、『百鬼夜行』に登場する太鼓の顔をもつ魚の妖怪が『滑稽倭日史記(こっけいやまとしき)』という版本に描かれています。混沌とした不安定な時代は妖怪が出現しやすいみたいですね。
◆木魚 まさにこの版本が刊行されたのは、日清戦争中ですから、世情と妖怪というものの相性がよかったのかもしれないです。
歌川芳幾『滑稽倭日史記』(部分) 明治28(1895)年 国際日本文化研究センター蔵

第3位
『茶会・オールナイト』ちゃわん&ブラザーズ

粗-P03-02_p3-4_2_付喪神図n付喪神図

◆鍋子 いよいよ大御所アーティストがランクインしてきましたね! 伊藤若冲が描いた、ちょっと間が抜けた表情がかわいい妖怪たちです。茶碗に茶筅、釜、水指……、茶道具たちが茶会を開いています。
◆木魚 長い年月を経て古くなった器物が妖怪になる付喪神(つくもがみ)は、妖怪画ではよく描かれるモチーフです。物を大切に思う日本人ならではの心が表れていますね。
伊藤若冲『付喪神図』 紙本墨画 一幅 江戸時代(18世紀) 福岡市博物館蔵

第2位
『病むわ』あむし

あむし
◆鍋子 わぁ! 驚きのキモカワイイ妖怪が出てきましたよ。なんと医学書に描かれた腹の虫なんですって!?
◆木魚 体調が悪いのも妖怪のしわざというわけですね。左側は大病のあとに胃に生じる「血積(けっしゃく)」という虫。右側は庚申(こうしん)の夜に性交すると出てきて、閻魔大王(えんまだいおう)に告げ口するという「蟯虫(ぎょうちゅう)」です。かわいいけれど、ちょっと怖いデュオですね。
茨木元行(いばらきげんぎょう)『針聞書(はりききがき)』 永禄11(1568)年 九州国立博物館蔵 撮影/小平忠生 

第1位
『ヘッド提灯・テール提灯』おいわ

百物語 お岩さん
◆鍋子 じゃーん! 今回のトップ・オブ・トップ・ザ・かわいい妖怪は、葛飾北斎(かつしかほくさい)のお岩さんです。見てください、一度見たら忘れられないこの顔!
◆木魚 さすが北斎です! これを描いたのは71歳ごろというのに驚きます。同時期には、歴史に残る浮世絵の傑作『冨嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)』を刊行したというのも興味深いですね。
葛飾北斎『百物語 お岩さん』 中判錦絵 天保(1830~1844)年間初期 中外産業株式会社(原安三郎コレクション)蔵 

これからの暑くなる季節、妖怪の次は地獄絵図で涼むのはどうでしょう?ひんやりすること間違いなし!?

地獄絵ワンダーランド

会場/三井記念美術館
住所/東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7F 地図
会期/前期:2017年7月15日(土)〜8月6日(日)
後期:   8月8日(火)〜9月3日(日)
休館日/月曜日※7月17日(月・祝)は開館し、翌18日(火)は休館。
開館時間/10時〜17時(入館は16時30分まで)
※ナイトミュージアム 会期中毎週金曜日19時まで開館。(入館は18時30分まで)
観覧料(一般)/1,300円