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信貴山縁起絵巻

ART

醍醐寺・信貴山縁起絵巻
〜ニッポンの国宝100 FILE 59,60〜

日本美術の最高到達点ともいえる「国宝」。小学館では、その秘められた美と文化の歴史を再発見する「週刊 ニッポンの国宝100」を発売中。

信貴山縁起絵巻

各号のダイジェストとして、名宝のプロフィールをご紹介します。

今回は、密教の大寺院、「醍醐寺」と説話絵巻の最高傑作、「信貴山縁起絵巻」です。

密教の大寺院「醍醐寺」

信貴山縁起絵巻

醍醐寺は、京都市伏見区にある真言宗醍醐派総本山の寺院です。標高452メートルの醍醐山山上の上醍醐と、山麓の下醍醐を合わせた広大な境内に堂宇が点在しています。1994年には「古都京都の文化財」として世界遺産にも登録されました。

貞観16年(874)、空海の孫弟子である理源大師聖宝が、笠取山(醍醐山を含む)の山上に草庵を結び、准胝、如意輪の両観音像を祀ったのが醍醐寺の始まりです。延喜7年(907)、醍醐天皇の発願により、山上の上醍醐に薬師堂の建立が開始され、まもなく山麓の伽藍整備も行なわれ、さらに金堂、五重塔が落成するなど、下醍醐の造営も進みました。
 
応仁・文明の乱で、五重塔を除き下醍醐の堂宇が全焼、寺運は一時衰えますが、慶長3年(1598)、豊臣秀吉が、時の座主(住職)義演と協力して主要塔頭の三宝院を整備するなど桃山時代に復興が進みました。

現在、上醍醐にある平安時代の薬師堂と室町時代の清瀧宮拝殿の2件、下醍醐は創建当初の唯一の遺構である五重塔と平安時代の金堂の2件、三宝院の唐門と表書院の2件(ともに桃山時代)の計6件が国宝に指定されています。
 
上醍醐の薬師堂にあった国宝の薬師三尊像(現在は霊宝館に安置)は、醍醐天皇の発願で造立された像で、中尊の薬師如来坐像は、どっしりした重厚感に満ちた平安時代を代表する仏像です。仏像では、ほかに虚空蔵菩薩立像も国宝指定を受けています。絵画では「五重塔初重壁画」「文殊渡海図」「五大尊像」など6件が国宝、ほかにも総数およそ7万点に及ぶ「醍醐寺文書聖教」(国宝)など、膨大な文化財が収蔵されています。
 
醍醐寺は、真言宗の大寺であるとともに、真言宗系の修験道(山中での修行により法力を得ようとする宗教)である当山派の本山として、現在も修験者を統括しています。また、上醍醐の准胝堂が本来、西国三十三所観音霊場の第11番札所ですが、平成20年の落雷で焼失。現在は下醍醐の観音堂で納経を行なっています。しかし、今も多くの巡礼者を集めており、重層的な奥深い魅力をもつ密教寺院です。

国宝プロフィール

醍醐寺

京都・伏見区に所在する真言宗の寺院・醍醐寺は、平安時代前期に空海の孫弟子である僧・聖宝によって創建された。醍醐山の山上の上醍醐と、山麓の下醍醐の広大な境内に堂宇が点在する。寺宝では、とくに密教関連の絵画の名品が多く伝来している。

醍醐寺

奇想天外なファンタジー「信貴山縁起絵巻」

信貴山縁起絵巻

「信貴山縁起絵巻」は、奈良・信貴山の中腹に建つ朝護孫子寺に伝わります。同寺は、聖徳太子(厩戸皇子)が毘沙門天を祀って創建したとの伝承があります。
 
この朝護孫子寺の中興の祖・命蓮にまつわる3つの霊験譚(宗教的な奇跡の話)を描いたのが、「信貴山縁起絵巻」です。縁起絵巻とは、社寺建立や本尊造像の由来にまつわる説話を描いた絵巻のことをいいます。
 
上巻「山崎長者の巻」は、信貴山の命蓮が、日ごろ法力で山崎長者の家へ鉢を飛ばして布施を受けていたところ、長者が鉢を放置したため、米倉が空を飛んで信貴山へ運ばれてしまう話。長者が倉を返すよう頼むと、命蓮は倉の中の米俵を次々と空に飛ばして長者の家へ返します。
 
中巻「延喜加持の巻」は、病を得た醍醐天皇を、命蓮が信貴山にいながら加持祈禱によって癒やす話。命蓮は、剣の鎧をつけた毘沙門天の使い、護法童子を内裏に遣わし、帝をただちに癒やします。この功で宮廷から褒賞の使者が訪れますが、命蓮は取り合いません。

下巻「尼公の巻」は、生き別れとなっていた命蓮の姉の尼公が主人公。修行に出たまま帰らない弟を探して、信濃(長野県)からはるばる上京した尼公。東大寺大仏の前で一夜祈り続けると、夢のお告げを受けて信貴山にたどり着き、無事に命蓮と再会を果たします。
 
この絵巻は、「源氏物語絵巻」「伴大納言絵巻」「鳥獣人物戯画」とともに、四大絵巻に数えられています。マンガ的ともいえる誇張表現で、人物の表情や姿が生き生きと躍動的に描かれ、また対象への視点を自在に変化させて、ダイナミックな空間描写や緩急ある物語展開が横長の画面に繰り広げられていきます。見る者を霊験譚の物語世界に引き込んでいく作者の手腕は見事。この絵巻の作者が誰であるかは不明ですが、数多くの絵巻を制作させて所有した後白河法皇周辺の宮廷絵師が関与したと推測されています。
 
実在の僧にまつわる奇想天外な物語を、自由な発想と高度な筆さばきで描いた「信貴山縁起絵巻」。その躍動感に満ちた空間描写で、時代を超えて愛される、説話絵巻の金字塔です。

国宝プロフィール

信貴山縁起絵巻

12世紀 紙本着色 3巻 山崎長者の巻:31.7×879.9cm 延喜加持の巻:31.7×1290.8cm 尼公の巻:31.7×1424.1cm 朝護孫子寺 奈良

信貴山上にある朝護孫子寺を中興した僧・命蓮にまつわる3つの奇跡の物語を描いた絵巻。平安時代後期の代表的な説話絵巻で、生き生きとした人物描写や、遠近自在な視点で物語を展開させた名作。

朝護孫子寺

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