日本文化の入り口マガジン和樂web
12月9日(金)
柴扉暁に出づれば 霜雪のごとし(廣瀬淡窓)
日本文化の入り口マガジン 和樂web
日本文化の入り口マガジン 和樂web
12月8日(木)

柴扉暁に出づれば 霜雪のごとし(廣瀬淡窓)

読み物
Art
2022.09.27

北欧家具にこそ古美術を!初心者でも楽しめる空間づくりを専門家に聞いてきた

この記事を書いた人

住まいにアートを飾りたい! そう思ってはみても、二の足を踏む人が少なくないかもしれません。ましてや、古美術となれば……。「だって、古美術を飾るなら床の間が必要じゃない?」「なにを選べばいいかわからない」。そんなギモンや不安に応えるように開催されるのが、東京・銀座で北欧家具の販売&空間コーディネイトを手がける「DANSK MØBEL GALLERY(ダンスク・ムーベル・ギャラリー)」と、奈良で宗教美術を中心に扱うアート・ギャラリー「古美術 中上」による企画展『古美術をしつらえる』です。

今回は初心者代表として、私、森が古美術をインテリアに生かすアイデアとコツを聞いてきました。

教えてくれる人
古美術中上 店主、中上修作さん(左)とDANSK MØBEL GALLERY 取締役・ストアマネージャー、中村祐介さん(右)

現代空間と古美術の組み合わせ。詳しく教えて!

美術館に通って日本美術に親しみつつも、もっぱら鑑賞専門の私。そこに舞い込んできたのが、一通の案内でした。「歴史をインテリアに。奈良時代の古美術が購入できます」。しかも、北欧のインテリアに古美術を合わせる? これは! 観るだけの美術から一歩踏み出したい気持ちをぐらりと揺さぶられながら、ダンスク・ムーベル・ギャラリーへと向かいました。

――現代空間に古美術を取り入れるヒントに興味深々です。いろいろ教えてください。

中村:私たちは北欧家具を中心にモダンなアイテムを紹介してきました。北欧の家具は懐が深いんです。具体的には足元が全体的にスッキリしてラインが細く、表面の仕上げもマットです。光があたると陰影やグラデーションがうまれる。日本の土壁や砂壁との相性も良く、サイズ感もいい。ですから日本の骨董や古美術が入っても、イメージはズレにくいんです。3年程前に中上さんと知り合い古美術品を拝見させていただいたとき、自然とそれらが住空間に置かれたイメージが湧いて、コラボレーションに至りました。ヨーロッパでは古いものをインテリアに取り入れることは非常に多いです。かえって日本のほうが古美術や骨董は専門性が高いと考えて、暮らしの空間に置くことを思い浮かべないかもしれません。

――宗教美術を自宅に取り入れていいものか、ひるむところもあります。

中上:その辺りは考えすぎずに、「これキレイだな」「素敵だな」と洋服を選ぶような感覚で選んでいただくのが一番です。私自身が宗教美術に対する思いには敏感ですので、初めから気に掛かるものは仕入れないようにしています。どなたが見ても、ここには重々しいと感じるものはないはずです。

1.手のひらサイズから「小さく」はじめよう

――住宅という空間の広さに合わせてか、古美術品のサイズは小さめですね。

中上:はい、「小品」は最初におすすめするキーワードの一つです。個人的には大きな屏風や壺も好きですが、現代の平均的な住空間にはトゥーマッチ。身の丈に合った物ってどんなものだろう?と意識すると分かりやすいかもしれません。小さなものは手のひらでも楽しめて、飾っても存在感がある。手に触れることって意外と大事で、重みや質感を知ることは古いものに接する際の一つの魅力だと思います。

――自分のものにすれば触ることができる。仏像好きの憧れです。

中上:最近は日常で身につけたり、身辺に置いて拝む念持仏(ねんじぶつ)の購入を希望される女性が増えています。誕生仏(生まれてすぐに七歩歩いて天地を指さし「天上天下唯我独尊」と唱えたと伝わるお釈迦さまの姿)などの金銅仏を、自分のお守りとして手元に置きたい方が増えてきているんです。

誕生仏は仏像コレクターに人気の高い像のひとつ。高さは15cmほどと手にしやすい大きさ

――へぇ。それはうかつにも知りませんでした。ちなみに、こちらはおいくらですか?

中上:約15万円です。室町時代、約600年前のものがそれぐらいで手に入ります。今回の展示は、古美術に対するハードルを下げることが目的ですから、3万円から100万円までの範囲で商品をセレクトしています。

――目玉の飛び出る金額を出さなくても、もしかして買えちゃう? 頑張っておこづかいを貯めれば手が出せそうなのがあるんですね。

中上:意外と心が軽くなるでしょう? もちろん上を見たらキリがありませんが、とっかかりとしては、金額もモノも小さくはじめるといいですね。今回の展示にはありませんが、最近では陶片が人気で箸置きに使ったり、高台(こうだい/茶碗や皿などの底にある支えの台)が付いているものならお酒を飲むときのおつまみ皿にして日常に取り入れる方もいらっしゃる。古伊万里の皿でも数千円からあって現代作家の作品と変わらない値段で古美術を手に入れられますよ。

中村:小さなものは棚に飾っても、デスクの上に置いたっていいんです。玄関先や寝室のちょっとしたスペースに置く形で充分だと思います。昔からある大事なものだから、きちんと場所を作らなくちゃというのも一つの飾り方ですが、「テーブルに飾るものが欲しい」とか「棚になにかあると落ち着くな」という気軽な感覚で取り入れていただきたいですね。

2.額装した写経の断巻や印仏を壁に飾る

中村:今回は、壁面に飾るものもいろいろ用意しました。みなさん、壁だったら飾れるという場所があるといいます。

――使えていない壁、確かにあります。

中村:例えば、この柱の幅、40cmぐらいのスペースなら多くの方が見つけられるのでは? そこに額装したお経を飾っています。

――お経を額装?

中上:染紙経(そめがみきょう)といって植物染料で紙を染めた古い写経の断巻です。何色かあるので繋げて一巻にしたり、一枚を額装して持ってきました。赤いのは弁柄で、青いのは藍で染めていると思われます。実は、この色を出すのはすごく大変なことで、平安時代の超高級品です。

染紙経 額装(10行/2色) 平安時代/気になる文字が入っているものを見つけて選ぶ人も

 
――平安時代! なにより額装されるとぐっと扱いやすそう。

中上:メクリといって一枚ずつの断巻を手に入れて、私が額装してもってきました。そうした仕事も骨董店の仕事だと思いますから、積極的に取り組んでいます。染紙経は遠くからは抽象画のように見えて、近づけばお経の文字がはっきりわかる。近くと遠くで異なる楽しみ方ができるんです。

――抽象画かぁ。そう捉えると意識も変わりますね。現代アート的。

中上:こちらは少しマニアックですが、密教の偉い人が弟子に教えを授ける儀式、灌頂(かんじょう)で使われた用具のひとつ、宝冠の残欠です。本来は5枚がつながって五角形になっていましたが、いつしか1枚ずつに離れて、室町時代の金工品として楽しめるようになりました。

――密教の道具も額装しちゃうんですか。面白い! 

中上:形や色がとてもいいです。中央に梵字(ぼんじ=仏などを表す文字)が彫ってありますが、ややゆるい感じの文字も味わい深い。

五智宝冠額装 室町時代/書とはまた異なる趣き

 

――国宝に指定されている仏像に入っていたものもあるとインスタで見てきたんですが。

中上:京都の浄瑠璃寺の本堂に9体ある阿弥陀如来像の胎内から何万枚とでてきたもので、印仏(いんぶつ)と摺仏(しゅうぶつ)と呼ばれる版画です。右側の摺仏は百体一版といって、本来、一度に百体の仏様を摺ったものです。左は3×4の十二体で一版がハンコのように押されているので印仏といいます。2つが手に入ったので額装して、並べて飾りました。

――よく見ると、仏の形がひとつひとつ違ってかわいいですね。

浄瑠璃寺十二体一版印仏額(左)と浄瑠璃寺百体一版摺仏(右)ともに平安時代/浄瑠璃寺印仏と摺仏は日本最古の仏教版画。サイズはお経の額装と比べると少し大きめ

中上:印仏や摺仏は千体仏の代用として、功徳を求めて仏像に納められたと考えられています。当時の庶民が仏像を千体彫って奉納するのは金額的にも大変なことですので、多分お寺さんが考えたんでしょうけれども、一日一回、拝んだら一個、100日拝んだら一枚がもらえた。で、掛ける10で千体です。

中村:古美術には細かく精巧なつくりのものもあれば、印仏のようにシンプルなもので魅力が充分に伝わってくるものもある。デフォルメされて、イラスト的でもあり重すぎなくていいですね。

中上:軽やかなんです。白と黒のモノクロですし、連続性があるのでミニマル・アートとして見ることができます。

――どれもこれも、心がくすぐられるなー。

3.間にワンクッション入れるとキマる


――北欧家具の素材は木でもさまざまな色があります。石仏でも金銅仏でも、置くときのコツってありますか?

中村:インテリアコーディネートでは、ラグなどを敷いて床と家具との間にワンクッションを挟むことで納まりをよくします。同じように古美術品の場合でも敷板を使って像と棚板の間に挟むことでおさまりよく見せられますよ。


中上:これ(上の写真)は桐の板の周囲に杉をまわしてつくってもらいました。

――ヒトテマを考えるのもちょっとした楽しみですね。

家で過ごす時間をぐっと豊かにしてくれる、古美術

――最後に、古美術のある暮らしの魅力ってズバリなんでしょう?

中村:生活スタイルは今と昔で変わっても、私たちが元々持っている潜在的な意識と骨董、古美術って相性がとてもいいですし、問題なく取り入れられると思います。見た目がスタイリッシュになり空間に奥行きが生まれるのはもちろんですが、なにより自宅で過ごす時間がぐっと豊かになるのが一番の魅力ではないでしょうか。

中上:日常生活を送るなかで、なにげなく目に触れるだけでも安らぎが得られる効能があると思います。かつてその物をつくった人に思いをはせながら……日常生活を共にする仲間として過ごしていただけたらうれしいですね。

※展示品には売約済みのものもあります

展示会&店舗情報

展示会名:「古美術をしつらえる」
期間:~2022年10月2日(日)
(中上さん在廊日:10月1日、2日予定)
会場:ダンスク・ムーベル・ギャラリー

ダンスク・ムーベル・ギャラリー
住所:東京都中央区銀座1-9-6 松岡第二銀緑館2F
時間:12:00-19:00(※水曜定休)
電話:03-6263-0675
公式サイト https://www.republicstore-keizo.com/dmg/

古美術 中上
住所:奈良県奈良市登大路町57-5
電話:0742-25-2566
時間:11:00-18:00(月、火、水曜日はアポイントのみ)
公式サイト https://nara-nakagami.com
メール:info@nara-nakagami.com
※来店の際は事前にお問い合わせください。

書いた人

日本美術や伝統芸能(特に沖縄の歌や祭り)、建築、デザイン、ライフスタイルホテルからブラック・ミュージックまで!? クロス・ジャンルで世の中を楽しむ取材を続ける。相棒は、オリンパスOM-D E-M5 Mark III。独学で三線を練習するも、道はケワシイ。島唄の名人と言われた、神=登川誠仁師と生前、お目にかかれたことが心の支え。