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2019.08.21

暑い夏こそ美術展!2019年8月編集部オススメのとっておき展覧会10選!

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8月に入り、猛暑が続く日本列島。もはや、暑すぎて朝出勤するのすら億劫だったりしますが、そんな時こそ都会のオアシス「美術館」はいかがでしょうか?!炎熱地獄を乗り越えて館内にたどり着けば、外界の炎暑が嘘のように快適な美的空間が広がっています!

また、夏休みはここぞとばかり海や山など様々なレジャーを楽しむ人も多いと思いますが、意外に繁忙期に遊ぼうとするとどこに行っても結構なお金がかかりますよね。そんな、涼しいだけじゃなくて財布にも優しいのがミュージアム!一番お値段の張る大型企画展でさえわずか1500円程度の出費ですみますし、子供はほとんどタダだったりするわけです。下手したら、子供の夏休みの自由研究もさっさと企画展のレポートを書けば片付いてしまうかも知れません!

タイトルにも書きましたが、暑い夏こそ美術展がオススメです。季節柄、春や秋ほど館内も混み合っていませんし、夏休み向けに子供でも楽しく観られる展示内容や、春や秋ではやらないような斬新な企画も目白押しなのがこの時期に開催される美術展の特徴なのです。そこで、和樂Webでは2019年8月にぜひ行ってみたい要注目展覧会を「10」展選んで、紹介してみました!

それでは早速見ていきましょう!

オススメ展覧会1:「カラヴァッジョ展」(北海道立近代美術館)

ルネサンス美術の本場・イタリアにおいて、15世紀~16世紀前半はダ・ヴィンチ、ラファエロ、ミケランジェロ、ティツィアーノといった名だたる巨匠たち大活躍しました。しかし度重なる戦乱や政情不安などで国力が低下するにつれ、イタリアの美術界は若干パワーが落ちてきます。そんなスター不在となった17世紀前半、彗星の如くイタリアに現れた世界最高の技量を持った天才画家・カラヴァッジョ。迫真に迫る圧倒的な写実力と、光と影のコントラストを劇的に演出した宗教画・歴史画でヨーロッパ中に名声を得て、西洋美術史上最重要なアーティストの一人となった凄い画家です。

「ホロフェルネスの首を斬るユディト」 ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ1602年頃 油彩・カンヴァス バルベリーニ宮国立古典美術館蔵、大阪展のみ出品、日本初公開 © Roma, Gallerie Nazionali d’Arte Antica – Palazzo Barberini. Su concessione del Ministero per i Beni e le Attività Culturali. È vietata ogni ulteriore riproduzione o duplicazione con qualsiasi mezzo.

そんなカラヴァッジョですが、2016年に40万人弱を動員して大好評だった「カラヴァッジョ展」(国立西洋美術館)に続き、わずか3年ぶりに北海道・名古屋・大阪を巡回する大規模展が開催されています。そこでまずオススメしたいのが、巡回展のトップバッターとなる北海道立近代美術館で開催される北海道展です。これはぜひ遠征してでも観ておきたい!

「病めるバッカス」ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ 1594年頃 油彩・カンヴァス ボルゲーゼ美術館蔵、札幌展のみ出品、日本初公開 © Ministero per i Beni e le attività culturali – Galleria Borghese

なぜカラヴァッジョ展を見逃してはならないのか?それには3つの理由があります。

まず第1に、カラヴァッジョ作品の希少性です。フェルメールやダ・ヴィンチ同様、カラヴァッジョが生涯で描いた作品は非常に少なく、現存する作品はわずか約60点ほどしかありません。残念ながら日本の美術館には1点も収蔵されていないので、作品を見たいと思ったら、イギリス、フランス、イタリア、アメリカ、ロシアなど世界中の美術館へと足を運ぶ必要があるのです。しかし今回の展覧会では、そんな貴重なカラヴァッジョ作品が約10点来日決定。世界各地に足を運ばなくても、向こうから史上最高レベルの点数で来てくれるのです。もちろん初来日作品もあります!

「ゴリアテの首を持つダヴィデ」 ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ 1609~1610年頃 油彩・カンヴァス ボルゲーゼ美術館蔵、名古屋展のみ出品、日本初公開 © Ministero per i Beni e le attività culturali – Galleria Borghese

第2に、西洋美術史における影響の大きさです。まだまだ日本ではルネサンス期や印象派の巨匠に比べると知名度は一歩劣りますが、明暗のくっきりした劇的な構図や実在感のあるリアルな人物表現など、カラヴァッジョが17世紀以降のバロック美術や近代芸術に与えた影響は計り知れないものがあります。バルトロメオ・マンフレーディやジョルジュ・ド・ラ・トゥールなど、カラヴァッジョの生前から「カラヴァジェスキ」と言われた熱烈なフォロワーがいた他、ルーベンス、レンブラント、リベーラやフェルメールなど名だたる巨匠たちも彼から影響を受けているとされています。そんな西洋美術史における金字塔であるカラヴァッジョの作品をまとめて観られるのは、非常に大きな学びにもなるはず!

「法悦のマグダラのマリア」ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ 1606年 油彩・カンヴァス 個人蔵

そして第3に、本邦初公開作品があることです。2010年代に入ってから、フランスの農家の屋根裏で見つかり、オークション市場で法外な値段をつけて話題になった「ホロフェルネスの首を切るユディト」や、カラヴァッジョが生涯肌見放さず大切に持っていた「法悦のマグダラのマリア」など、新発見が続くカラヴァッジョの作品ですが、その前にまだまだ日本には来日していない作品が多いのです。

実はこれだけ凄い展覧会なのに、諸事情あって東京では観られません!関東在住の方は、ぜひ夏休みの機会を活かして遠征してみてはいかがでしょうか?筆者もお盆が終わって格安航空券が調達できたら観光とセットで飛ぶ予定です!!

展覧会名:「カラヴァッジョ展」
会場:北海道立近代美術館(〒060-0001 札幌市中央区北1条西17丁目)
会期:2019年8月10日(土)~10月14日(月・祝)
公式サイト

オススメ展覧会2:「美術の森でバードウォッチング」(海の見える杜美術館)

「海の見える杜」という名称からなんとなく現代アートや野外彫刻中心の美術館なのかなと思いきや、竹内栖鳳や京都画壇を中心に近代日本画の名品を取り揃え、絵巻物や浮世絵、書跡、中国絵画など非常に広いジャンルのコレクションを多数所蔵する、日本美術を専門とする実力派のミュージアムである「海の見える杜美術館」。2018年春のリニューアルオープン以来、毎回趣向を凝らしたテーマの企画展で目の肥えた日本美術ファンを楽しませてくれていますが、この8月から始まった展覧会「美術の森でバードウォッチング」展も要注目です。

言うまでもなく「鳥」は日本絵画において流派を問わず大切に描き継がれてきたモチーフです。さえずり、飛び、泳ぎ、はねるという変化に富むしぐさ、鮮やかな色、美しい声色などの鳥の特性を、古くから人々は愛で、時に神聖なものとして崇め、吉祥の意味を見出し、あるいは生活と密接に結びつくものとして絵に描いてきました。

歌川広重「月に木莵」江戸時代 天保中期頃(後期展示)

本展覧会では、ヤタガラスという神の使いとしての鳥の姿や、長寿を象徴し、吉祥モチーフとして絶えず描かれてきた鶴、聖天子の誕生とともに現れると考えられた瑞獣・鳳凰、四季おりおりの花と合わせて愛でるために描かれた美しく愛らしい鳥など、鳥の多種多様な表現を楽しむことができます。

出品される作家も良い意味で非常に個性的で、石崎光瑤(いしざきこうよう)、高谷篁圃(たかやこうほ)、奥文鳴(おくぶんめい)など、名だたる巨匠たちに比べると知名度が一歩劣るものの花鳥画の隠れた名手を積極的に紹介。また木版画では、最近ブレイクを果たした小原古邨(おはらこそん)、ひょっとしたら腕前的には風景画よりも上手なのでは?とも思える歌川広重を大きく取り上げています。

小原古邨「木蓮に九官鳥」明治時代(前期展示)/小原古邨作品は、前後期合わせて大量約60点が展示。まとめて一気に小原古邨の魅力を楽しむ良いチャンスです!

石崎光瑤「春晝」大正3年(1914)(後期展示)左隻

石崎光瑤「春晝」大正3年(1914)(後期展示)右隻

こうした個性豊かな近代の作家たちが描いた雀や鶏、鳳凰など様々な鳥たちを「美術の森」でぜひバードウォッチングしてみてくださいね。意外なお気に入りの作家や作品が見つかるかも知れません。また、年に4回展示替えされる竹内栖鳳展示室の最新展示「栖鳳と鳥」も合わせて観ておきたいところ。やはりこちらも企画展に合わせて、六曲一双の金屏風や初出品となる「闘鶏図」(前期展示)などは見逃せません!

展覧会名:「美術の森でバードウォッチング」
会場:海の見える杜美術館(〒739-0481 広島県廿日市市大野亀ヶ岡10701)
会期:2019年8月3日~11月10日
(前期:8/3~9/16、後期:9/21~11/10)
公式サイト

オススメ展覧会3:企画展「優しいほとけ・怖いほとけ」(根津美術館)

紀元前5世紀頃、釈迦によってインドで布教が始まった仏教は、その後様々な諸宗派が生まれるとともに、如来や菩薩、明王や天など様々な種類の仏像が制作されるようになりました。仏像や仏画に表現された多様化した「ほとけ」の表情を見てみると、穏やかな顔付きをした如来から怖い顔をした明王まで、様々なバリエーションがあることに気付かされます。

本展では、根津美術館が所蔵する仏像・仏画作品を通して多種多様な仏像の「顔つき」に注目。密教での「尊格」で大まかに分類・展示しつつ、仏像・仏画に描かれたそれぞれの仏像の「表情」を楽しんでみませんか、という面白い趣向の展覧会です。

一番のおすすめは、今回が初公開となる愛染明王像(あいぜんみょうおうぞう)です。和合や良縁を求めて信仰を集めたこの「厳しいほとけ」は、人間の持つ煩悩を燃え盛る炎で焼き尽くし、夫婦和合や良縁を叶えてくれるご本尊として、特に江戸時代に人気が高かった仏像の一つ。

愛染明王坐像 1軀 木造彩色 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵

本作は、明治期に根津嘉一郎によって収集されて以来、ずっと美術館の倉庫で修復されるのを待っていたそうで、今回ようやく100年以上のブランクを経て、修復が完了。満を持しての収蔵後初公開となりました。細部に至るまで非常に丁寧に彫り込まれたハイレベルな作品を、ガラスケースもなく裸展示でぐっと近くから360度ぐるりと回って楽しむことができるのは嬉しい趣向。(実は意外なことに、企画展においては今回はじめていくつかの仏像をガラスケースなしで展示しているそうです)


重要文化財 大威徳明王像 1幅 絹本着色 日本・鎌倉時代 13世紀 根津美術館蔵

僕は数ある仏像群の中で憤怒の表情を浮かべる精悍な「明王」や「天」が好みなのですが、特に今回印象的だったのが、光背の燃え盛る炎の表現が迫真の出来だった大威徳明王を描いた仏画。状態も素晴らしく、製作されて700年以上経過した今でもストレスなく作品と向き合うことができます。明かりを落として、たとえばろうそく1本の灯る暗い部屋でこの仏画と向き合えば本当に身が引き締まるような怖さを感じるだろうなと思いながら見ていました。

色絵秋草文小鉢 肥前 鍋島藩窯(大川内) 1口 施釉磁器 日本・江戸時代 17−18世紀 /色絵薔薇文小鉢 肥前 鍋島藩窯(大川内) 1口 施釉磁器 日本・江戸時代 17−18世紀 /色絵牡丹唐草文小鉢 肥前 鍋島藩窯(大川内) 1口 施釉磁器 日本・江戸時代 17−18世紀 以上3点全て山本正之氏寄贈 根津美術館蔵

さて、1Fの展示で、怖い不動明王や大威徳明王に見送られて展示室2を後にしたら、ぜひ口直しに2Fの展示室5「鍋島の小品」、展示室6「納涼の茶」もしっかり観ておきたいところ。夏らしく、両展示とも水流の涼しさを意識させるような「青」が印象的で、明王たちの「赤」を見て火照った心を優しくクールダウンしてくれました。いずれも名品揃いです!

色絵唐花文変形皿 肥前 鍋島藩窯(大川内) 1枚 施釉磁器 日本・江戸時代 17世紀 山本正之氏寄贈 根津美術館蔵/鍋島にしては非常に珍しい派手な色使いとデザイン。非常に目を引きました。

青磁透彫二階香炉 龍泉窯 1口 施釉陶器 中国・元時代 14世紀 根津美術館蔵/日本で「砧青磁」と呼ばれ珍重された龍泉窯全盛期の優品。少し黄緑がかった上品な色合いや複雑な造形に惹かれます。

法花蓮花文水指 1口 施釉陶器 中国・明時代 16世紀 根津美術館蔵

展覧会名:企画展「優しいほとけ・怖いほとけ」
会場:根津美術館(〒107-0062 東京都港区南青山6-5-1)
会期:2019年7月25日(木)~8月25日(日)
公式サイト

オススメ展覧会4:「円山応挙から近代京都画壇へ」(東京藝術大学大学美術館)

ここ数年、浮世絵も含め、江戸絵画の人気が非常に高まってきていますよね。江戸時代には、葛飾北斎・喜多川歌麿といった浮世絵師、幕府代々の御用絵師集団として活躍した「狩野派」、デザインセンスが美しい「琳派」、そして伊藤若冲を筆頭とする「奇想の絵画」など多士済々な面々が活躍しましたが、2019年最も熱いのはこの中の誰でもなく、円山応挙が創始した「京都画壇」の絵師たちかも知れません。

18世紀は江戸絵画の黄金期と言われますが、その盛り上がりを支えていたのが、写実的・叙情的な作風で当時若冲を凌ぐ人気を獲得していた円山応挙や彼の弟子たちが集った「京都画壇」の画家たちだったのです。当時京都で若冲を凌ぐ人気絵師だった円山応挙の没後もその勢力は衰えず、諸派に分裂しつつもゆるやかに一体感を保ちながら20世紀になるまでその命脈を保ち続けました。

本展では、円山応挙を中心とした京都画壇のスター絵師たちをがっつりと特集。前後期で約100点が出揃います!

円山応挙「松に孔雀図」寛政7年(1795)兵庫・大乗寺蔵

まず、一番注目したいのが応挙がプロデュースした生涯最高傑作とされる大乗寺の障壁画群がまとまって公開されることです。東京では実に10年ぶりの来日となりましたが、天井の高い藝大美術館の特性を活かし、館内のディスプレイは非常に斬新で目を引きます。作品保護のため、現地の大乗寺でも現在はレプリカ展示となっていますが、本展では紛うことなき「本物」が観られるのです!応挙と弟子たちが精魂込めて作り上げた京都画壇の金字塔的作品をぜひ楽しんでみてくださいね。

さて、一口に円山応挙とその弟子たちの系譜を綴った「京都画壇」といっても、全員が全員応挙の作風を忠実に受け継いでいったわけではありません。応挙没後、彼の弟子がまとまった「円山派」と応挙+蕪村のDNAを受け継いだ呉春率いる四条派に分かれましたし、後に森狙仙に始まる「森派」、精悍な虎の絵が冴えた「岸派」など様々な流派に分かれて発展していきました。

でも、内覧会で見つけた彼らの大きな共通点としては、生前応挙が力を入れて描いてきた「動物」たちを写実的に捉えようとする姿勢です。会場内で非常に存在感があった作品群の一つが、彼らが描いた動物たちの作品でした。琳派のようにデフォルメされているわけでもなく、狩野派のように粉本を忠実に受け継いでいるわけでもないのですが、絵師一人ひとりが個性を活かしつつ、応挙好みの画題をそれぞれの技法で描いたリアルな「動物画」には惹かれるものがありました。いくつかピックアップしてみます。

左:呉春「巌上孔雀図」江戸時代後期 公益財団法人阪急文化財団 逸翁美術館蔵 中:呉春「松下游鯉図」江戸時代後期 公益財団法人阪急文化財団 逸翁美術館蔵 右:長沢芦雪「孔雀図」江戸時代後期 静岡県立美術館蔵(※3点とも前期展示)/大乗寺襖絵でも応挙が描いた孔雀は、彼の有力な弟子たちも好んで描いています。

岸駒「松虎図」江戸時代後期 公益財団法人 角屋保存会蔵/生きた実物を見ることなく、ここまで迫力ある虎を再現できる岸駒の力量には脱帽です。

国井応文・望月玉泉「花卉鳥獣図巻」江戸時代後期~明治時代 京都国立博物館蔵(※前期展示)

また、京都画壇の絵師たちには、「とらえどころのない一体感」があります。各時代の巨匠たちの作品を観ていくと円山応挙の写実性・叙情性をエッセンスとして引き継ぎつつも、時代に応じて割と自由に作風を変化させているのですが、たとえばこうした寄せ書きでの即興画を全員で描くと、まるで一人の絵師が描いたような統一感が持った絵ができあがるのですね。

森寛斎ほか「魚介尽くし」明治5~6年頃/総勢28名の京都画壇の画家たちが、一つの画面に魚介類を描いた合作。これほどの大人数で、限られた色数で即興・寄せ描き風に制作されているのに誰一人なく突出・破綻することなく調和してまとまっているあたりに、京都画壇の作家たちの目に見えない「まとまり」を読み取れるかもしれません。

ちなみに、展覧会に行く前に是非チェックしておきたい和樂Webの記事がこちら。江戸絵画や浮世絵に詳しい実力派ライター、松﨑さんによる本展に関する渾身の特集記事で予習をしてから本展「円山応挙から近代京都画壇へ」を見に行くと、展示がスーッと頭に入ってきますよ!

★若冲よりもすごいかも?!円山応挙の美術展へ行く前に。その天才っぷりを解説【注目美術展】
https://intojapanwaraku.com/jpart/19811/

展覧会名:「円山応挙から近代京都画壇へ」
会場:東京藝術大学大学美術館(〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8)
会期:2019年8月3日(土)~9月29日(日)
(前期:8/3~9/1、後期:9/3~9/29)
※前後期で大幅な展示替えあり(大乗寺襖絵は通期展示)
公式サイト

オススメ展覧会5:「ICOM京都大会開催記念 東京富士美術館所蔵 百花繚乱 ニッポン×ビジュツ展」(京都文化博物館)

日本で初開催されるICOM(国際博物館会議)京都大会が9月1日から開幕することを記念して、京都市内では「日本美術」を世界へとアピールする力の入った企画展が相次いで開催されます。その中で最も注目したい展覧会の一つが、東京富士美術館の所蔵品から日本美術についての銘品を一挙紹介する「百花繚乱 ニッポン×ビジュツ展」です。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」天保1~天保3年(1830-32)頃 東京富士美術館蔵

本展では、日本文化の豊穣な芸術世界のエッセンスをわかりやすく楽しむことができるように「カワイイ」「サムライ」「デザイン」「黄金」「四季」「富士山」など、日本美術を特徴づけるキーワードを選定。このキーワードに沿って、東京富士美術館の名品群がズラリと紹介される構成となっています。

鈴木其一「風神雷神図襖」より雷神図 江戸時代後期 東京富士美術館所蔵

順姫所用「竹雀紋堅三引両紋牡丹唐草蒔絵女乗物」江戸時代中期 東京富士美術館所蔵

また、ハイレベルな美術品を楽しむだけでなく、工夫を凝らされた展示方法にも注目です。たとえば、初心者にとって鑑賞ポイントが分かりづらい「刀剣」については、あたかも実際に手に持つようなスタイルで大事な鑑賞ポイントの一つである「刃文」をわかりやすく楽しむことができる「刃文鑑賞特設ケース」が用意されました。

刀 銘 和泉守藤原兼定作(之定)美濃 室町時代中後期 東京富士美術館蔵

また、江戸時代の室内環境をVR技術で再現することで、当時の人々にはどのように「金屏風」が見えていたのかシミュレーション体験できる仕組みなど、従来の展覧会にはない新たな展示の工夫がされているとのこと。こちらも非常に楽しみです。

作者不詳「武蔵野図屏風」(左隻) 江戸時代前期 東京富士美術館蔵

絵画、浮世絵、漆工、刀剣、武具甲冑など、東京富士美術館の珠玉の所蔵品群を惜しげもなく披露された本展を通して、ぜひ日本美術の面白さ、奥深さを体験してみてくださいね。

展覧会名:「ICOM京都大会開催記念 東京富士美術館所蔵 百花繚乱 ニッポン×ビジュツ展」
会場:京都文化博物館(〒604-8183 京都市中京区三条高倉)
会期:2019年8月25日(日)〜9月29日(日)
公式サイト

オススメ展覧会6:「入門 墨の美術―古写経・古筆・水墨画―」(静嘉堂文庫美術館)

色がしっかりついた江戸時代の花鳥画や絵付けが華やかな陶磁器は好きだけど、水墨画や墨跡、古写経といった「墨」の作品はなんとなく難しそうだし、どう観ていいのかわからない・・・そんな方は意外と多いのではないでしょうか?

「寸松庵色紙」平安時代(11世紀)静嘉堂文庫美術館蔵【全期間展示】

そこでオススメしたい「墨」作品への入門に最適な展覧会が、静嘉堂文庫美術館で開催される「入門 墨の美術―古写経・古筆・水墨画―」です。本展では、「墨」をテーマに、奈良時代から室町時代までの日本美術の優品を約30点展示。

「大般若波羅蜜多経 巻第四三四」(小水麻呂願経) 平安時代・貞観13年(871)静嘉堂文庫美術館蔵【全期間展示】

奈良時代に国家事業として仏教振興のために取り組まれた「古写経」、貴族文化がピークを迎えた平安時代に発達した和様の「書」、そして鎌倉時代~室町時代の禅宗文化・唐物の流行を反映した「水墨画」と、日本では古来からバラエティ豊かな「墨」の文化が受け継がれてきました。本展では、こうした様々な「墨」を味わう名品を、一つずつわかりやすい解説と丁寧な音声ガイドでじっくりと楽しむことができます。

国宝 「倭漢朗詠抄 太田切」平安時代(11世紀)静嘉堂文庫美術館蔵【全期間展示】

重要美術品 前島宗祐筆「高士観瀑図」室町時代(16世紀)静嘉堂文庫美術館蔵【全期間展示】

中でも、絶対観ておきたいのが、修理後初公開となる「四季山水図屏風」。室町時代最高峰の画僧・周文が手掛けたと伝えられる逸品です。六曲一双の屏風に描かれた雄大かつ幽玄な山水風景は、室町時代の水墨画の白眉。計算しつくされた構成と見事な筆墨による大気の表現など、深遠な水墨山水画の世界をたっぷり味わえる作品です!これを見たことで、水墨画の面白さに一気にハマるかもしれませんね?!

重要文化財 伝周文筆「四季山水図屏風」室町時代(15世紀)静嘉堂文庫美術館蔵【全期間展示】

ちょうど暑さも落ち着いた初秋に嗜むにはぴったりの風流なテーマです。本展を通して、「墨の美術」の魅力をたっぷり感じてみてくださいね。

展覧会名:「入門 墨の美術―古写経・古筆・水墨画―」
会場:静嘉堂文庫美術館(〒157-0076 東京都世田谷区岡本2-23-1)
会期:2019年8月31日(土)~10月14日(月・祝)
公式サイト

オススメ展覧会7:「日本の美 美術×デザイン」(富山県美術館)

アートとデザインをテーマに、目の肥えた美術展ファンを楽しませ続けてくれる富山県美術館の真骨頂とも言える展覧会が始まりました!それが、現在開催中の「日本の美 美術×デザイン」展です。

本展では、日本美術の最大の特徴であるデザインセンス豊かな「装飾性」に着目。浮世絵、江戸絵画、近現代日本画、ポスター作品など様々な年代・多様なジャンルにわたる作品を通して、日本美術の中に潜む「デザイン」の美しさ・面白さを紹介しています。

不詳「武蔵野図屏風」江戸時代 サントリー美術館蔵 後期展示

展覧会で特に大きく取り上げられているのが、現代でも多くのファンに支持されている「琳派」と「浮世絵」の中に観られる独自の装飾性です。

「琳派」は、やまと絵の伝統を基盤に置きながら、斬新な表現と装飾性の強い大胆な構図により、一頂点を築き上げました。俵屋宗達が創始し、それ以降私淑の連鎖によって現代まで受け継がれてきた琳派の系譜を辿りながら、そのデザインセンスがどのようにして受け継がれてきたのか観ていきます。宗達、光悦の共作や江戸琳派を大成した酒井抱一、鈴木其一ら琳派の優品が登場。

不詳「光琳菊文様肩衣」江戸後期 茂山千五郎家蔵 前期展示

神坂雪佳『百々世草』「狗児」 1909-10刊 千葉市美術館(ラヴィッツ・コレクション) 後期展示

福井江太郎「晴」2014年 作家蔵

一方、江戸時代中期以降、出版業界と結びついて安価・大量に複製品を作り出すことで庶民芸術として発展していった「浮世絵」は、19世紀後半~20世紀初頭にかけて「ジャポニスム」を巻き起こすなど、海外においても広く影響を与えました。葛飾北斎や喜多川歌麿など、浮世絵の巨匠たちの作品から前後期合わせて約130点と多数の優品を見ながら、日本のグラフィックデザインのルーツともいえる浮世絵版画から「構図のさまざまな 工夫」や「抽象化」など、デザイン的な視点がクローズアップされていきます。

喜多川歌麿 「青樓七小町 若那屋内白露」 江戸時代 光ミュージアム蔵 前期展示

葛飾北斎『冨獄三十六景』より「常州 牛堀」 1831年頃 石川県立美術館蔵 後期展示

本展では、こうした「琳派」「浮世絵」を中心として、前後期で大量約250点を展示。様々な時代の多様な作品を通して、日本美術の豊かな表現をたっぷり楽しむことができる展覧会です。富山県美術館ならではのユニークな企画です。夏休みや秋の大型連休などを利用して、旅行とセットで遠征してみるのも面白いですね!

ちなみに、屋上庭園「オノマトペの屋上」や、レストラン「日本橋たいめいけん 富山店」はなんと夜の22時まで営業しています!(※美術館は18時まで)比較的夜が遅い東京や大阪でも21時終了となる美術館が多い中、これは凄いですよね。ぜひ富山の夜景も楽しんでみてくださいね!

展覧会名:「日本の美 美術×デザイン-琳派、浮世絵版画から現代へ-」
会場:富山県美術館(〒930-0806 富山県富山市木場町3-20)
会期:2019年8月10日(土)~10月20日(日)
(前期:8/10~9/16 後期:9/21~10/20)
※会期中、複数回展示替えがあります。
公式サイト

オススメ展覧会8:ICOM京都大会開催記念 特別企画 京博寄託の名宝 ─美を守り、美を伝える─(京都国立博物館)

京都国立博物館では、春と秋に大規模な「特別展」を開催されますが、2019年はこれらに加えて日本美術ファンにとって見逃せない展示が夏に開催されます。ICOM京都大会を記念して開催される特別企画「京博寄託の名宝」です。

京都国立博物館には、地元京都府をはじめ、主に関西一円の由緒ある古寺社や有力なコレクターなどから多数の文物・美術品が「寄託」されています。「寄託」というのは、「寄贈」とは違い、所有権そのものはお寺や神社(=持ち主)に残ります。持ち主は作品を手放すことなく、作品を理想的な環境下で保管・管理することができる一方、博物館側も預かっている間は作品の調査研究、展示が自由に行えるので、博物館・所有者双方にとってメリットがある管理形態だといえます。

どんなミュージアムでも必ず一定の「寄託」作品は存在しますが、京都国立博物館では特に「寄託」作品が多く、その数はなんと約6200件!とてつもない数ですよね。本展では、そんな京博への「寄託」作品の中から、ICOM国際博物館会議で多数来日する外国人へ日本文化を幅広くアピールするという目的も兼ねて、国宝36件、重要文化財59件を含む全139件が平成知新館の各展示室にズラリと並ぶことになりました。

それでは、ちょっとみてみることにしましょう。まずは、教科書にも掲載されている有名な国宝作品から。

国宝「風神雷神図屛風」(右隻) 俵屋宗達筆 京都・建仁寺蔵

国宝 伝源頼朝像 京都・神護寺蔵

また、平成知新館の各フロアをフルに使った展示では、江戸絵画はもちろん、仏像、陶磁器、金工、漆工、染織といった各工芸分野、そして中国絵画や書跡など、各分野での出品を見てみると、国宝・重文クラスの凄い作品群がズラリと並びます。

重要文化財 色絵蓮華香炉 伝野々村仁清作 京都・法金剛院蔵

重要文化財 束熨斗文様振袖 友禅史会蔵

いかがでしょうか?この堂々たる威容を見ていると、2017年に全国から60万人強の美術ファンを集めた「国宝」展を彷彿とさせますよね。これが全部「寄託」作品というのだから凄いです。京都をはじめとする日本美術のレベルの高さを実感させられるとともに、こうした数々の貴重な文化財を守り伝えていく京都国立博物館の使命の重さが実感できる展覧会となりました。わずか1ヶ月間の短い「特別企画」ではありますが、日本美術好きなら遠征必至の好展示です。是非、期間中に足を運んでみてくださいね!

展覧会名:ICOM京都大会開催記念 特別企画「京博寄託の名宝 ─美を守り、美を伝える─」
会場:京都国立博物館 平成知新館(〒605-0931京都市東山区茶屋町527)
会期:2019年8月14日(水)~9月16日(月・祝)
公式サイト

オススメ展覧会9:「見て、知って、楽しむ 茶碗の世界」(野村美術館)

戦前、銀行や証券など金融業を中心として野村財閥を作り上げ、実業家として成功した野村徳七。彼は自ら「徳庵」と名乗り、近代数寄者として多数の茶道具や東洋美術を収集しました。そんな「証券王」野村徳七が生前収集したコレクションの中から、春季・秋期にそれぞれ特別展を開催しているのが京都・南禅寺近くにある「野村美術館」です。

彫三島茶碗 銘-池水(前期展示)

本展では、野村徳七が収集した茶道具の中から、年代や産地によって様々な特徴・魅力を持つ茶碗を選りすぐって展示しています。

灰被天目(前期展示)

本展では、中国製の「唐物」、朝鮮半島製の「高麗物」、日本製の「和物」が揃い踏み。「和物」は主として産地により分類がされ、仁清や乾山など優れた名工の作品を楽しむことができます。

薩摩荒磯絵茶碗(前期展示)

野村美術館の近くには秋の京都観光の絶好のロケーション・南禅寺もあります。南禅寺の美しい紅葉・天井画・水道橋・建物とあわせて、野村美術館の秋季特別展「見て、知って、楽しむ 茶碗の世界」を回ってみて下さいね。

展覧会名:「2019年秋季特別展 見て、知って、楽しむ 茶碗の世界」
会場:野村美術館(〒606-8434 京都府京都市左京区南禅寺下河原町61)
会期:【前期】8月31日(土)~12月1日(日)
(前期:8/31~10/14 後期:10/16~12/1)
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オススメ展覧会10:没後100年 村山槐多展 ―驚きの新発見作品を一挙公開-(サントミューゼ上田市立美術館)

関根正二、青木繁、岸田劉生、松本竣介、長谷川利行など、圧倒的な個性を見せながら夭逝した戦前の洋画家は多いですが、わずか22歳の若さで惜しくも亡くなった早熟の天才洋画家・村山槐多(むらやまかいた)もまた、一度作品を見たら忘れられない強烈な個性を放った画家です。

「バラと少女」1917年 東京国立近代美術館蔵/各種美術雑誌などにも頻繁に登場し、東京国立近代美術館でも主力作品の一つとして頻繁に展示されているため、恐らく村山槐多の作品の中で一番有名な作品かもしれません。

2019年は、村山槐多の没後100周年にあたる記念イヤーです。そこで、槐多が一時期制作のため滞在したゆかりの地・信州にあるサントミューゼ上田市立美術館にて、100点を越える未公表作品も含めた大規模回顧展が開催中なのです。

「紙風船をかぶれる自画像」1914年 個人蔵

本展の一番の特徴は、なんと言っても全国各地から集められた村山槐多の作品を初期から晩年まで一挙に楽しむことができることです。村山槐多と言えば、高村光太郎に「火だるま槐多」と詩に詠まれたこともあり、美術ファンの間では奔放で情熱的・野性的な作品のイメージが定着しているかもしれません。しかし、展示を通して見えてくるのは、意外にも人や静物の内面に宿る美しさの本質を描こうとしていた槐多の「静かな情熱」です。こういった意外な一面が見えてくるのは大規模回顧展ならではの面白さですね。

「房州風景」1917年 個人蔵/初公開作品。静かな漁村の日常風景を叙情的に描いた佳作。

「山門」1910年 個人蔵/建築家のようにパースを学んだ跡が生々しく残っているパステル画。

また、ぜひ着目したいのは2018年に京都で新発見された140点を越える一連の未公表作品の数々です。特に驚かされるのは、14~15歳頃に残した下絵やパステル画における天才的な作画技術と創意工夫が伺える足跡です。

「雲湧く山」1911年 個人蔵/初公開作品。村山槐多は「山」を描いた風景画を多数残していますが、本作はなんと14歳の時の作品。叔父・山本鼎から油彩道具一式をもらってわずか半年でここまでの技量に達しているとはまさに神童ですね・・・

「カンナ」1915年 個人蔵/わずか14歳の時に描いた作品。早くもその天才性の片鱗が絵から滲み出ています。

中学校ではクラスで「絵の虫」と言われ、四六時中なにか絵を描いていたので学校でも顔が墨で真っ黒だったというエピソードが残っている通り、早熟な天才画家と呼ばれた裏には人並み外れた努力があったことを感じさせます。

わずか22歳で惜しくも早世してしまった村山槐多。本展では、わずか8年足らずの画業の中で制作された人物画・風景画・デッサン他、自作の詩や初公開資料を通して、村山槐多の人並み外れた芸術への情熱をたっぷり感じることができそうです。展示作品には水彩画など繊細な作品も含まれるため、展示期間はわずか1ヶ月程度と非常に短期間となっていますが、この期を逃さずぜひチェックしてみてくださいね!

展覧会名:「没後100年 村山槐多展 ―驚きの新発見作品を一挙公開-」
会場:サントミューゼ上田市立美術館(〒386-0025 長野県上田市天神三丁目15番15号)
会期:2019年7月27日(土)~9月1日(日)
(第1期:7/27~8/12 第2期:8/14~9/1)
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まとまった休みが取れる夏休み。旅行とセットでの遠征もオススメ!

いかがでしたでしょうか?2019年8月は、東京・大阪といった都心部よりも、大都市からちょっと足を伸ばしたところの地方都市にある美術館・博物館に意外な掘り出し物的展覧会が多い印象。8月から始まる展覧会は、9月~10月と秋口まで継続するものも多いので、3連休を活用したり、ちょっと遅めの夏休みを利用して旅行がてらに立ち寄ってみるのもいいですね。筆者もお盆明けで高速道路や飛行機が空いたところで遠征に出かける予定です!

書いた人

サラリーマン生活に疲れ、40歳で突如会社を退職。日々の始末書提出で鍛えた長文作成能力を活かし、ブログ一本で生活をしてみようと思い立って3年。主夫業をこなす傍ら、美術館・博物館の面白さにハマり、子供と共に全国の展覧会に出没しては10000字オーバーの長文まとめ記事を嬉々として書き散らしている。