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読み物
Art
2019.09.11

AmazonやNetflixでも!自宅で楽しめるアート映画を10作品選んでみた

この記事を書いた人

オススメ映画9「メットガラ ドレスをまとった美術館」(2017)

シネマで楽しむ美術鑑賞! アート・美術がテーマのおすすめ映画10選
販売:アルバトロス

ここ数年、展覧会の企画・制作や運営にかかわる裏方の作業にフォーカスした、いわゆる「美術館の舞台裏」を特集したアートドキュメンタリーが多くリリースされていますが、本作は中でも一番のオススメ。本作は、ニューヨーク・メトロポリタン美術館で年に1回開催される世界最大規模でのファッションの祭典イベント「メットガラ」と、イベントに関連した展覧会制作について、そのメイキングシーンを綿密な取材に基づいて編集した実直なドキュメンタリー。

「そこまで出しちゃっていいの?」と思えるような赤裸々な本音トークや、ファッション業界のカリスマ、VOGUE編集長、アナ・ウインター(映画「プラダを着た悪魔」でも有名)とのピリピリした緊張感溢れる打ち合わせシーンなど、ドキュメンタリーの面白さを凝縮した作品に仕上がっています。数年がかりで展覧会の準備を行い、関係者の利害調整や噴出する問題・課題に対して臨機応変に対処しながらプロジェクト管理にあたる世界トップキュレーターの激務ぶりはただただ凄まじいの一言です。

オススメ映画10「ザ・スクエア 思いやりの聖域」(2018)

シネマで楽しむ美術鑑賞! アート・美術がテーマのおすすめ映画10選
「ザ・スクエア 思いやりの聖域」DVD&Blu-ray発売中
DVD 3,900円 (税抜) Blu-ray 4,800円 (税抜) 販売元:ハピネット
(C)2017 Plattform Prodtion AB / Societe Parisienne de Production / Essential Filmproduktion GmbH / Coproduction Office ApS

2017年、カンヌ国際映画祭にて最高賞「パルム・ドール」を獲得したスウェーデンのフィクション作品。現代アートを専門とする王宮美術館において人間の差別意識や貧富の格差に問題意識を投げかけた「ザ・スクエア」という新作インスタレーションの宣伝告知を巡る炎上劇と、展覧会期間中、主人公であるチーフキュレーターが遭遇した万引き事件への拙い対処が引き起こす波紋とが、同時並行でシンクロしながら描かれる風刺ドラマです。

物語では、デュシャン以来現代アートの主要テーマの一つである「何がアートで何がアートでないのか」アートと非アートの境界線をはじめ、現代アート界隈の抱える様々な矛盾点や限界が風刺たっぷりに描かれます。ストーリーの核心では社会的な文脈や環境が変われば、人間がいかに醜悪で狡い行動を取りうるのか、主人公やその周囲の人々の愚かさをコミカルなタッチでこれでもかとあぶりだしてきます。

正直なところ、心温まる感動ストーリーとは正反対の、思わず目を背けたくなるような胸糞悪いシーンが多いのですが、不思議とスクリーンから目が離せず、何度も見返してはいろいろ考えてみたくなる高品質な作品です。

オススメ映画11「FOUJITA」(2015)

シネマで楽しむ美術鑑賞! アート・美術がテーマのおすすめ映画10選

最後に、おまけとして日本人監督が制作した本格的な実写映画を1つ紹介させて下さい。小栗康平監督が約10年ぶりにリリースした日仏両国でロケを行った、藤田嗣治の内面世界に光を当てた作品「FOUJITA」です。藤田嗣治は、時代の波に翻弄されながら次々に活動場所や作風を変え、謎多き人生を送りました。戦前にパリで大成功を収め、画壇の寵児として大活躍していたにもかかわらず、その後メキシコでの絵画修業を経て日本へ帰国。日本では一転して戦争協力画を描き、終戦後はフランスへ渡り、現地でキリスト教へ改宗して日本に戻らないまま亡くなるなど、まさに激動の人生でした。

本作では、そんな藤田嗣治の人生における対照的な2つの時期に焦点を絞って、小栗監督の独自視点で徹底的に彼の内面を掘り下げています。爛熟期を迎え最後の輝きを放つパリのモンパルナスで、エコール・ド・パリの代表格として大活躍していた華やかな1920年代の全盛期を描いた前半から一転して、後半は日本へ帰国後、疎開先での生活風景が描かれます。そこは、地味で水墨画のようなモノトーンな世界。映画はいよいよ藤田の内面世界へと切り込んでいきます。そして最後にはセリフも消えて観念的な映像世界のみが映し出されます。

状況説明もほとんどなく、起伏のあるストーリーなど「わかりやすさ」を支えるための要素がバッサリ斬られているので、正直なところ初心者向けとは言い難いのですが、代わりに、小栗監督が考える「藤田嗣治に見えていたであろう世界」が一貫して映画の中で表現されています。ぜひ、藤田の心情に寄り添って、一体彼にはどんな世界が見えていたのか、小栗監督の作家性がたっぷり投影された映像世界を見ながらじっくり考えてみるのも面白いかもしれません。

面白い作品はまだまだある! 展覧会とセットで楽しもう

いかがでしたでしょうか?映画史上、非常に多数のアート関連作品が発表されてきましたが、特に2010年代に入ってからは佳作が目立つようになってきています。ここで選んだ10作品以外にも、まだまだたくさん良い作品があります。展覧会とセットで楽しむと、また違った角度から作家の人間性や作風を見ることができるので、楽しみながら教養も深めることができますよ。ぜひ、ご自身で色々と探してみてくださいね。

文/齋藤久嗣

書いた人

サラリーマン生活に疲れ、40歳で突如会社を退職。日々の始末書提出で鍛えた長文作成能力を活かし、ブログ一本で生活をしてみようと思い立って3年。主夫業をこなす傍ら、美術館・博物館の面白さにハマり、子供と共に全国の展覧会に出没しては10000字オーバーの長文まとめ記事を嬉々として書き散らしている。