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2019.09.20

貴重な優品が続々来日!2019年秋に楽しめる全国の西洋美術展20選!

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オススメ展覧会16:「ブダペスト——ヨーロッパとハンガリーの美術400年」(国立新美術館)

2019年の秋は「ハプスブルク展」「ショパン展」「チェコ・デザイン展」など中央諸国の美術・文化を紹介する企画展が数多く開催されますが、そのラストを飾る「隠し玉」的な展覧会がこの「ブダペスト展」です。展覧会名の「ブダペスト」とはハンガリーの首都の名前です。

1867年、ハプスブルク家がハンガリー国内の自治権拡大を認め、「オーストリア=ハンガリー二重帝国」が生まれると、ハンガリーは急速に影響力をつけ首都ブダペストは、パリ、ウィーンとともに、ヨーロッパ文化の中心地として非常に栄えました。そのブダペストが世界に誇る2つのミュージアムが「ブダペスト国立西洋美術館」と「ハンガリー・ナショナル・ギャラリー」です。

本展では、日本・ハンガリー修好150周年を記念して、2館が所蔵するルノワールやモネなど西洋美術の巨匠作品と共に、ハンガリー人作家の作品130点が来日。中でも絶対に見ておきたいのがメインビジュアルにも選ばれた「ハンガリーのモナ・リザ」とも言われる名画《紫のドレスの婦人》。美しい黄緑色の草原に、ビビッドな紫のドレスを着た美しい女性が座る肖像画は存在感抜群。約40年ぶりに来日する本作を「生」で美術館で見るだけでも足を運ぶ価値がありそうです!

展覧会名:日本・ハンガリー外交関係開設150周年記念 ブダペスト国立西洋美術館 & ハンガリー・ナショナル・ギャラリー所蔵「ブダペスト——ヨーロッパとハンガリーの美術400年」
会場:国立新美術館(〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2 )
会期:2019年12月4日(水)~2020年3月16日(月)
公式サイト

オススメ展覧会17:「ラファエル前派の軌跡展」(あべのハルカス美術館)

19世紀~20世紀にかけて、フランス、イタリア、ドイツ、オランダなど各国では保守的なアカデミズムの伝統絵画の因習を打ち破り、新たな表現方法や絵画様式を打ち立てようと様々な会派やグループが離合集散を繰り返しました。本展の展覧会名にもある通り、イギリスにも「ラファエル前派」という前衛的なグループが登場。グループでの活動期間はたった5年程度でしたが、イギリスだけでなく後の西洋美術史に大きな影響を与えました。

彼らは、そのグループ名の通り盛期ルネサンスの三巨匠の一角・ラファエロを手本とするアカデミズムの伝統を否定し、彼以前のイタリア絵画の素朴かつ実直な作風を理想に掲げ、英国美術のバージョンアップを目指しました。当然、フランスの印象派のように彼らは画壇の主流派からの激しい攻撃に晒されます。そんな彼らを積極的に支持したのは、美術批評家ラスキンでした。本展では、ラスキンがなぜ「ラファエル前派」を積極的に擁護したのか、そしてラスキンの思想はどのようなものだったのか、ロセッティやミレイ、バーン=ジョーンズ、モリスらの作品や、ラスキン自身の作品(珍しい!)を通してラスキンの美学とラファエル前派の作品の魅力をじっくり見ていくことができます。

展覧会名:「ラファエル前派の軌跡展」
会場:あべのハルカス美術館(〒545-6016 大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16F)
会期:2019年10月5日(土)~12月15日(日)
公式サイト

オススメ展覧会18:「ウィーン・モダン展」(国立国際美術館)

「芸術の都」というと、真っ先にわたしたちが思い浮かべるのはフランスの首都・パリだと思います。太陽王・ルイ14世の治世で全盛期を迎えた17世紀から20世紀前半まで300年以上の間、パリは常に画家や音楽家、文士達アーティストが身を立て、活躍するための芸術の中心地であり続けました。しかしパリが栄える一方、ウィーンもまたハプスブルク家の帝都として長らく栄え、貴族を中心とする上流階級の華やかな文化がパリに負けず劣らず栄えたのでした。

特に産業革命後、ウィーンは大規模な都市計画が進行する中急速な人口増を果たします。ハプスブルク家は凋落する一方でしたが、音楽家・芸術家たちは次々と新しい芸術を生み出し続けました。

本展はそんな芸術都市・ウィーンを19世紀前半の「ビーダーマイヤー時代」からハプスブルク家事実上最後の皇帝・フランツ・ヨーゼフ1世の長い統治が終わる頃までを特集。時代が変化し続ける中、絵画や彫刻、デザイン、音楽、工芸、建築など幅広い芸術の潮流を時系列に沿って紹介。一番の目玉は、世紀末ウィーンで最も活躍した画家の一人、グスタフ・クリムトの作品が大量18点出揃ったこと。国内にほとんどクリムト作品が存在しない日本で、これだけのクリムト作品を同時に観られる機会は滅多にありません。19世紀前半から20世紀前半まで、ウィーン激動の約100年間の文化史を俯瞰できる凄い展覧会です。会期も長めに設定されているので、機会があれば時間を置いて2回、3回と通ってみたい展覧会です。

展覧会名:「日本・オーストリア外交樹立150周年記念 ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」
会場:国立国際美術館(〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4-2-55)
会期:2019年8月27日(火)〜12月8日(日)
公式サイト

オススメ展覧会19:「国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア」(愛媛県美術館)

ルネサンス~近代に至るまで、近現代の西洋美術史の中では地理的なイメージも重なって「辺境」的な扱いも受けがちなロシア絵画ですが、19世紀後半以降の近代絵画において、写実をベースに叙情的・幻想的な独自の豊穣な絵画世界が広がっていたことをご存知でしょうか?19世紀後半、ロシア革命が勃発したことをきっかけに国内情勢が不安定になる中、ナショナリズムの高まりとともに郷土愛に目覚めた画家たちはロシアの大自然に目を向け、雪深い森や海への憧憬、素朴な民族の生活風景を情緒たっぷりに描くようになりました。

本展では、ロシア絵画の殿堂である国立トレチャコフ美術館が所蔵する、ロシア人作家の手による風景画や風俗画など約70点が楽しめます。ぜひ、自分自身も絵の中の情景にどっぷり入り込んで楽しんでみてくださいね。

展覧会名:「国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア」
会場:愛媛県美術館(〒790-0007 愛媛県松山市堀之内)
会期:2019年9月7日(土)~11月4日(月・振休)
公式サイト

オススメ展覧会20:「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ―線の魔術」(京都文化博物館)

堺市にある「堺市文化館 堺アルフォンス・ミュシャ館」をはじめとして、ここ数年毎年のようにミュシャをテーマとした展覧会が数多く開催されるようになりました。縦4m~6mもある超巨大な絵画群「スラブ叙事詩」全20作品が一挙に来日し、広大な館内を埋め尽くした国立新美術館で開催された2017年のミュシャ展はミュシャの「愛国者」としての新たな一面をクローズアップした異色の展覧会として大きく話題となりました。

今回、Bunkamura ザ・ミュージアムを皮切りに全国巡回する「みんなのミュシャ展」は、ミュシャがパリで活躍した時代、すなわちポスター等の商業美術で華々しい成功を収めた時期の作品を紹介しつつ、彼がこうした一連の商業美術を通して確立した「構図」や「様式」を掘り下げて整理。そして、展示後半ではミュシャ作品におけるこうした特徴が洋楽のレコード・ジャケットや日本・アメリカなどのマンガ作品にどのような影響を与えたのか、具体的な作品を挙げながら検証していくという構成になっています。

特にミュシャの可憐で美しい装飾表現は、日本の少女漫画に対して多大な影響を与えました。展示されているマンガ作品やイラストなどを見て、「この作品もミュシャの影響を受けているのか」と意外な影響の広がりを実感できそうです。展示点数も多く、グッズも豊富に用意されているのでミュシャファンの方はぜひ!

展覧会名:「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ―線の魔術」
会場:京都文化博物館(〒604-8183 京都市中京区三条高倉)
会期:2019年10月12日(土)~2020年1月13日(月・祝)
公式サイト

芸術の秋を美術展で思い切り楽しもう!

いかがでしたでしょうか?今年の秋も全国津々浦々で世界中の美術館・博物館から西洋美術の粋を集めた作品群が大量に来日してくれています。

モネ、ルノワールといった印象派はもちろん、ほんのわずかしか作品を残していないクリムトやカラヴァッジョ、ギュスターヴ・モローやラウル・デュフィといった個性派の巨匠たち、ポーランドやハンガリーといった中欧諸国の芸術作品まで、2019年秋は非常に充実したラインナップとなりました。中には今回を見逃すと確実にあと数十年は来日しない可能性がある作品もゴロゴロあります。ぜひ、この機会を逃さず、連休等を活用して旅行やグルメなどとセットで楽しんでみてくださいね。

書いた人

サラリーマン生活に疲れ、40歳で突如会社を退職。日々の始末書提出で鍛えた長文作成能力を活かし、ブログ一本で生活をしてみようと思い立って3年。主夫業をこなす傍ら、美術館・博物館の面白さにハマり、子供と共に全国の展覧会に出没しては10000字オーバーの長文まとめ記事を嬉々として書き散らしている。