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2019.09.27

上野で開催の今秋最高の印象派展!「コートールド美術館展」を見逃すな!

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圧倒的なクオリティ!モネやピサロが描いた美しすぎる風景画

クロード・モネ「秋の効果、アルジャントゥイユ」1873年 油彩、カンヴァス 55×74.5cm

さてセザンヌで大満足した後、次に待っているのが印象派の真打モネの傑作群でした。モネはその長い画業を通じて、初期はバルビゾン派のような平明で写実的なタッチの風景画から、最晩年のほぼ抽象絵画と言っても良いような粗放で素早い筆さばきの作品まで様々な味わいの作品を残しましたが、本展で展示されているのは、60年以上にわたる画業の中でも比較的穏やかで明るい作品が多い1880年代中頃までの作品群が中心です。

クロード・モネ「アンティーブ」1888年 油彩、カンヴァス 65.5×92.4cm

特にこちらのみずみずしい水色で海辺の風景が描かれた本作は絶品。その涼しげで叙情的ないつまでも見ていたいと思う抜けるようなさわやかな水色に支配された画面の中、画面中央手前に描かれたそびえ立つ1本の大木はどことなく「和」のテイストを感じさせ、モネが日本美術から影響を受けていたことを感じさせます。

続いては、モネと名前がよく似たマネの風景画の傑作。

エドゥアール・マネ「アルジャントゥイユのセーヌ河岸」1874年 油彩、カンヴァス 62.3×103cm 個人蔵(サミュエル・コートールド旧蔵、コートールド美術館に長期貸与)

印象派の作家たちは、風景表現において特に印象派の理論を構築していくしていく上で、こうした「舟遊び」など水辺の風景を主題に「水面」の表現について研究を重ねました。画面に明るさを確保するため、敢えて絵の具を混ぜずに原色のまま置いていき、鑑賞者が作品から離れた時に色彩が溶け合って目の中で混じり合う効果を狙いました。

エドゥアール・マネ「アルジャントゥイユのセーヌ河岸」(部分)

続いては、印象派画家の中では最年長だったピサロの作品。

カミーユ・ピサロ「ロードシップ・レーン駅、ダリッジ」1871年 油彩、カンヴァス 44.5×72.5cm

本作はパリではなくロンドン郊外の情景。印象派画家によって描かれた初めての「蒸気機関車」をモチーフとした作品です。1870年12月、普仏戦争の戦火から逃れるため、モネと共にロンドンへ疎開していたピサロは、ターナーやコンスタブル、ゲインズボロ、ローレンス、レイノルズなど現地作家の水彩画や油彩画を研究。ロンドン郊外の自然風景を夢中になって描きました。本作で描かれた機関車はなんだか控えめでブリキのおもちゃのようですが、ピサロが描きたかったのはあくまでイギリスの自然風景だったのでしょうね。

ドガやルノワールの作品では、19世紀の都市生活の情景を味わえる

セザンヌやモネの作品では、彼らが探求した「筆さばき」の面白さや美しい風景画の中に表現された多彩な色使いを楽しめますが、ドガやルノワールは自然風景よりも人物をモチーフの中心として描くことを好みました。彼らが描いたパリに集う人々の都市生活からは、産業発展により急速に近代化しつつあった当時のパリの情景がリアルに浮かび上がってきます。

エドガー・ドガ「舞台上の二人の踊り子」1874年 油彩、カンヴァス 61.5×46cm

ドガは風景画よりも都市生活の室内風景や競馬場などの群衆を描くことを好みましたが、なんといっても日本人に親しまれているのは「バレリーナ」を描いた作品群でしょう。劇場左手の桟敷席から斜め下に見下ろす珍しい視点や、画面左奥で見切れて描かれた3人目のバレリーナなどは、日本美術からの影響だと言われています。

エドガー・ドガ「舞台上の二人の踊り子」(部分)

それにしても美しいですよね。舞台の上でスポットライトを浴びてひときわ白く輝く肌の質感や二人の衣装の描き込み、瞬間的な躍動感をスナップショット的に閉じ込めた構図など、とてもカメラがない時代に描かれたとは思えない正確な記憶力です。ちなみに、他作品ではもっと顔の表情をぼかして描かれる事が多い踊り子ですが、本作では丁寧に顔つきまで描かれていますね、

ピエール=オーギュスト・ルノワール「桟敷席」1874年 油彩、カンヴァス 80×63.3cm

続いては、客席から桟敷席に座る男女のカップルを描いたルノワールの作品をご紹介。本作は1874年、第1回印象派展にルノワールが出品した記念すべき大作。当時の批評家たちから「現代的」であると肯定的な評価を受けました。劇場の桟敷席という珍しいモチーフを用いて、人工照明の下で明るく照らされた男女の華やかなファッションを描いた本作は、パリにおける現代的な都市生活の象徴的な一シーンであるとみなされたのです。それにしても大きく胸元が空き、白・黒の太いストライプのドレスを着て背筋の伸びた女性は、まるでモデルのようでもありますね。19世紀後半のパリの華やかさが伝わってくる作品でした。

書いた人

サラリーマン生活に疲れ、40歳で突如会社を退職。日々の始末書提出で鍛えた長文作成能力を活かし、ブログ一本で生活をしてみようと思い立って3年。主夫業をこなす傍ら、美術館・博物館の面白さにハマり、子供と共に全国の展覧会に出没しては10000字オーバーの長文まとめ記事を嬉々として書き散らしている。