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2019.10.04

高知の未来派創造集団「ZAKURI」の通販で買える多目的ナイフがすごい!

この記事を書いた人

ナイフの「価値」とは

本来、ナイフは身近なものであった。

日常生活において、包丁以外の刃物が不要になったのはほんの数十年前からである。高度経済成長の恩恵が列島の隅々まで行きわたり、多売を持ち味とする大型スーパーマーケットが確立し、土地も次々に民間企業が買収した。子供たちが寄り集まってちょっとしたアウトドアができるほどの空地はなくなり、日本の家庭も徐々に核家族化した。スーパーマーケットに行けばいつでも切り身の魚や肉が手に入るから、包丁すらなくても生きていける。

逆に言えば、それ以前の時代で健康的に生きようと思ったら、自分がナイフを手に取って何かを作るしかないのだ。

東京23区に住んでいる者に「山菜狩りをしてみないか?」と言っても、笑われるだけだろう。2019年の今、山菜狩りができる場所など23区内にあるだろうか。だからこそ、ここは少し角度を変えて「気晴らしに多摩へ行ってみないか?」と告げてみる。せっかくの日曜日だから、山菜狩りのできる多摩あたりへ足を運んで美味い空気を吸ってみよう、と。

多目的ナイフの本当の価値は、ここから発生するのではないか。「このナイフ、便利だから使ってみなよ」と友人に渡してみる。予想外の使い勝手の良さに友人は目を丸くし、やがて饒舌になっていく。

ナイフは文明を進化させる

「ナイフなんか危ない!」と述べるだけの人に遭遇した時、筆者はいつも「ナイフは人を笑顔にする」と話しかけている。

刃渡り25cm超のボウイナイフを使って薪を割り、それを火にくべる。その火は飯盒の中のスープを煮立てている。それを前に笑みを溢さない者はいないだろう。

アウトドアナイフの伝説的名匠ロバート・ウォルドーフ・ラブレスは、自分の作品が観賞用にされることを好まなかった。私のナイフを使い込んでくれ、と言っていたのだ。それはラブレスが、ナイフの本当の価値は「使用された後の光景」にあることを知っていたからではないか。

どんなにテクノロジーが発達しようとも、ナイフ職人が絶滅することはまずないと筆者は確信する。

仮にそうした未来が訪れるとしたら、それは人類が「自分で創作する楽しみ」を失い、既製品の娯楽で中途半端な満足感を得ることしかできなくなった光景である。その世界では、文明やテクノロジーの進化は完全停止しているはずだ。人類全員が脱出不可能の閉塞感に陥る暗黒の未来である。

だが、そのようなシナリオはまず訪れないだろう。我々の国では、今も卓越した技術を持った職人が槌を振るい、至高の1本を鍛造しているからだ。それはラブレスの言葉を借りれば、「持つと気持ちのいいもの」である。

【参考】
ZAKURI

書いた人

ノンフィクションライター、グラップリング選手、刀剣評論家。各メディアでテクノロジー、ガジェット、ライフハック、ナイフ評論、スタートアップビジネス等の記事を手がける。