剣鉈とは?特徴や用途・ボウイナイフとの共通点や違いを紹介。日曜大工や園芸・登山にもおすすめ!

剣鉈とは?特徴や用途・ボウイナイフとの共通点や違いを紹介。日曜大工や園芸・登山にもおすすめ!

目次

日本には「剣鉈」という素晴らしいナイフがある!

筆者はこの和樂Webで、日本製ナイフに関する記事を複数執筆している。今まで肥後守、鉈、包丁、鉞等を紹介してきたが、今回の記事は剣鉈である。和式ナイフには珍しいクリップポイント、分厚いブレード、和包丁とは一線を画す丈夫なタング。しかもその用途は「狩猟用」だ。これほど男心くすぐる1本は、他にあるだろうか。

さらに剣鉈の形状は、アメリカ開拓民の魂ボウイナイフと瓜二つである。そう、剣鉈は「和式ボウイナイフ」とも表現できるものなのだ。

ボウイナイフとは?

アウトドアナイフ愛好家であれば、誰しもボウイナイフというものに憧れた経験があるだろう。

ボウイナイフは、それ自体がもはやひとつのカテゴリーを形成している。「アウトドアナイフ」の中の「ボウイナイフ」ではなく、このふたつは別物という感覚だ。それだけボウイナイフは偉大な刃物ということでもある。

ここで言う「ボウイ」とは「Bowie」で、即ち人名だ。19世紀初旬のアメリカ、ジェームズ・ボウイ(通称ジム・ボウイ)という男が所有していた当時新設計のナイフで、彼はこの得物で保安官ノリス・ライトを刺殺した。

このライトは銀行家でもあったのだが、ボウイに金を貸さなかったことでいざこざが発生し、遂に他人の決闘に便乗して自分たちが決闘を始めてしまったのだ。これが1827年にミシシッピ川沿いで起きた「サンドバーの決闘」と呼ばれる乱闘騒ぎである。

ライトは拳銃、ボウイはナイフを持っていた。いくら何でも拳銃にナイフで立ち向かうのは無茶ではないか、と現代人なら思ってしまうかもしれない。だがサミュエル・コルトが撃鉄とシリンダーが連動するリボルバー拳銃を開発したのは1836年。サンドバーの決闘の頃の連発拳銃と言えば、多連装の銃身を持つペッパーボックス型である。1発撃つ毎に自分で銃身を回す手間が発生する代物だ。

これでは、ナイフの名手の突進を阻止することはできない。出典:fineartamerica

この決闘で、ボウイはアメリカ中にその名が知れ渡ることになる。インターネットどころかテレビもラジオも電話もない時代、あるひとつの新製品を宣伝する手段は「実績を残すこと」しかない。ボウイのナイフは彼自身の手による発明というわけではないが、今では「ボウイナイフ」という名が普通名詞になってしまった。ボウイの活躍に触発された西部の男どもが、こぞって同型のナイフを買い求めたということだ。

大自然の中で生きるために

神様は、時折恐ろしいことを思案する。

ハチャメチャなエピソードを持ったボウイナイフと酷似した得物を、よりにもよって極東の刃物産業大国の民にお与えになったのだから。今回手に入れたのは、兵庫県三木市の株式会社豊稔企販の剣鉈。家庭用刃物から製麺用品まで生産する企業だが、「これぞ播州刃物」と言うべき堅牢な製品も生み出している。ギラギラと光輝くクリップポイント、無口で逞しい労働者の身体を再現しているかのようなブレード、そしてフルタング。何から何まで、ボウイナイフの特徴と共通している!タングの部分はパラコードが巻かれていて、これは和式ナイフの中では割と珍しい設計だと筆者は考える。しかし、林業従事者が獣道の草木を払うには絶好のデザインだ。剣鉈とは長方形の鉈に明確な刃先をつけたものであるが、山林に覆われたかつての日本ではこのようなナイフがなければ生活できなかったという事情もあるのだろう。無論、時折現れる猪の解体に使うこともできる。むしろ、そうした用途が剣鉈の本分とも言える。ボウイナイフのような「誰かを殺した」という血生臭いエピソードは、剣鉈にはない。しかし考えてみれば、アメリカのカウボーイと日本の林業従事者は性格がよく似ている。前者は地平線を望む荒野の只中で、後者は太い木々と獣が息づく山林で家族を養わなければならなかった。どこまでも広がる大自然では、頼れるのは己の腕のみである。ナイフを駆使し、モノを作り、家を建て、集落を形成する。ボウイナイフも剣鉈も、人が自然の猛威に打ち勝つためには欠かせない道具だったのだ。

タイムマシンがあったら、筆者はこの剣鉈を1836年のアラモ砦にいるジム・ボウイとデイビー・クロケット、ウィリアム・トラヴィスにプレゼントしてやりたい。きっと、いや絶対に気に入るはずだ。

伝統ナイフに根づく「尺貫法」

だが、この両者には違いも存在する。

ボウイナイフはブレードが長くなればなるほど、その幅も広がる傾向にある。もちろん製品毎にデザインは違うからその例に漏れるものもあるが、一般論としてボウイナイフは「長い=幅広」だ。

しかし剣鉈の場合は、ブレードが長くなっても幅は変わらない。となると、刃渡りが伸びれば伸びるほどそのデザインはスリムに、ともすれば柳刃包丁を連想させるような見た目になっていく。刃渡りが概ね20cmを超えたら、ボウイナイフと剣鉈の違いが少しずつ現れる。そして、最大の違いは度量。アメリカのナイフはヤード・ポンド法即ちインチで設計されるのに対し、日本の伝統的ナイフは今でも尺貫法で製造されていることが多い。この記事の剣鉈の刃渡りは約18cm、尺貫法では6寸である。中には1尺(約30cm)の剣鉈というのも存在する。

6寸剣鉈。かっこいい呼び方じゃないか! 尺貫法にこれだけ胸ときめく要素があるとは、筆者も想像していなかったが。

今回紹介した剣鉈は狩猟だけでなく、日曜大工や趣味の園芸にも用いることができるだろう。ナイフは生活に彩りを与える、素晴らしい道具である。

剣鉈とは?特徴や用途・ボウイナイフとの共通点や違いを紹介。日曜大工や園芸・登山にもおすすめ!
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