陶芸家・今井完眞さんがつくる海洋生物がリアルすぎる!制作へのこだわりや工房を紹介

陶芸家・今井完眞さんがつくる海洋生物がリアルすぎる!制作へのこだわりや工房を紹介

本物と見紛うリアルな造形に美しい光沢。今にも動き出し、息遣いまで伝わってくるかのような迫力。金属?それともプラスチックでできたフィギュア?いいえ、こちらの蟹は・・・なんと土でできているんです。いわば、陶器のフィギュアと言えるかもしれません。

「Tasmanian giant crab」幅 51 奥行43 高さ27cm

作品をつくられたのは、京都府で作陶活動をされている陶芸家の今井完眞さん。今井さんは蟹や亀をはじめとした海洋生物をモチーフにした作品を数多く制作されています。陶芸と聞くとコップや茶碗、壺といった普段私たちの生活に身近なものが頭に浮かんできますが、それらと同じ素材の土でできていると思うとなんだか不思議で面白いですよね。

陶芸家のお家に生まれた今井さん

今井さんのご家族は祖父の政之さん(陶芸)、父の眞正さん(陶芸)、伯父の裕之さん(金工)、完眞さん(陶芸)と三代にわたって4名が美術の世界を追求されています。

「椰子蟹」幅 75 奥行44 高さ27cm

「小さい時、仕事場の隅っこで渡された粘土で何かつくっていたのが最初ですね」

幼少期から土という存在が身近にあったと語る今井さんは、京都市立銅駝美術工芸高等学校にて彫刻を学びました。その後、東京藝術大学2年時の進級展で焦がした枕木に青磁の蟹を組み合わせた作品をつくったことが現在の作品スタイルへの始まりとなったそうです。

蟹をモチーフに選んだのは《ぬるっとつるっと硬い質感》がやきものに合っていると感じたからだと今井さんは言います。

実物をいつも傍らに

これだけリアルな作品をつくられているので、作品をつくり始める際のアイディアスケッチはさぞ大変なのでは・・・と気になっていたので聞いてみました。

「アイディアスケッチはほぼしないですね。スケッチをしていてもつくっていると構図も変わりますし。平面で見ていて良くても、立体にするとおかしく感じることが多い。だからできる限り実物を傍らに置き、じっくり観察しながらつくります」

「鰐」幅 70 奥行34 高さ35cm

なんと、動きを観察する為に水槽の中で蟹や魚、さらには蛸を飼っていたことまであるそうです。実際に生の姿を観察しながらつくっているからこそ、我々が作品を観たときに感じる力強さや生命力といった迫力に繋がっているのかもしれませんね。

「蛸」幅 17 奥行20 高さ29cm

「普段なかなか観ることのできない貴重な瞬間や生きていないとわからない表情や動き方。そういったところは覚えてつくるようにしていますね」

モチーフは自ら捕まえることも

作品にしたいモチーフがあり、それが近くで手に入らない時は現地まで赴くこともあるのだとか。これまで石垣島で捕獲したり、遠方ではオーストラリアまで買いに行ったとのこと!すごい行動力です。

「魚とかは無理ですけど蟹は保存がきくのでモチーフとして管理しやすいのがいいですね。正直臭いが凄いですけど(笑)」

まるで今獲ってきたかのような瑞々しさのある保存状態。確かに臭いが凄かった・・・。初めは室内に置いていたけれど、夏場の臭いが特に凄く外に移した程だとか。

作品をつくる際にすぐ実物を見ることができるように、蟹はアルコールに浸けて保存されているそうです。

ひとえに蟹と言っても様々な種類があり、興味はあるけれど生きている蟹だと少し怖くて触れない(正直見せていただいた蟹も怖くて触れそうにない)。しかし陶芸の作品として目の前にあると思わず手にとって間近に観ることができる。そういった面白さや楽しさが感じられるのも、今井さんがつくる作品の魅力の一つかもしれません。

税関を通れない!?

あまりのリアルさに海外展示から作品が帰ってくる際に税関で「申告にないものが入っている!」と止められたり、国内の個展で作品を購入されたお客様が空港の荷物検査に引っ掛かる等、本物の生物と間違えられるなんて珍事もしばしば。

「海亀」幅 45 奥行38 高さ35cm

さらには、外で作品を干しているとトンビが上空を旋回したり、今井家愛猫のクロちゃんが攻撃したりと動物たちから間違えられるなんてことも。

人だけでなく動物たちからも間違えられるリアルさ・・・と驚きですが、同時に大事な作品が壊されちゃうのではというハラハラ感も凄そうです。

今井さん曰く「動物たちは目で判断するから、色を塗るとやられる」とのこと。

大事なのは“らしさ”

「リアリズムにこだわっているわけではない」

そう語る今井さんに、これだけリアルな作品なのにどういうことだろう・・・?と思い聞いてみました。

「赤紋蟹」幅 23 奥行21 高さ15cm

「やはり生きている時の雰囲気というのは形だけじゃなくて、人が捉えてる部分があると思うので。そこをひろっていけたらいいなと。要素として重要な所は誇張するし、そうでないところはサラッと流しています」

作品の印象をみて、実物と全然形が違っていても作品を観た時に蟹なら蟹と思って観てもらえるような“らしさ”のある形。そこにこだわりながら考えて、つくっているとのことです。実際にある部分と大胆にデフォルメされた部分。今井さんの手でこの二つが組み合わされることによって実物がもつ雰囲気や存在感を纏った“らしさ”が生み出されているのですね。

海洋生物から川の生き物に、そして架空の生き物へ

工房を見学させていただきました。
ここまで沢山の海や川の生き物をモチーフにした作品を観させていただきましたが、現在制作中のモチーフはなんと・・・龍!工房内に入るまで頭の中に蟹を思い浮かべていたので驚きました。

削って形を整え、鱗をつくる作業に入る場面。

鱗をつくっている場面。一気に迫力が増し、正面がどうなっているのか非常に気になります。

展覧会のテーマにまとまりを持たせる為、初めの頃は海洋生物に焦点を当てていた今井さんですが、変化をつけようと近年では川の生物も増えてきているとのこと。そして、2020年1月に行われる京都府新鋭選抜展に向け、新たな挑戦としてモチーフに龍を選んだそうです。現在鋭意制作中の本作品、今から展覧会で観られる日が楽しみで仕方がありません。

陶芸へのこだわり

最後に木材やガラス、金属といった様々な素材がある中、土という素材にこだわって作品をつくり続ける理由を伺いました。

手のひらサイズの蟹がコロンとしていて愛らしい。

「陶芸は人の手でつくりますが、土は収縮もするし焼いた時に形も変わるので、作為性が弱まる。いわゆる人工物であるけれども狙った感じでなくなるところが、人工物なんだけど自然物に近づいていくような。これが陶芸でつくるときの良いところで他の分野にはない面白いところだと思います。例えばこのモチーフを焼き物でつくったら面白そうと思うだけで、他分野が手を出せるようなことでもない。突き詰めていかないと陶芸という分野で生き物はできない。私はそこに特化して、やろうと思っているんです」

この言葉を受けて、素材にこだわり続け、またその素材でしかできないことを考え実践されているからこそ、想いが新たないのちとして作品に宿り、魅力となって私たちの心に深く訴えかけてくるのだなぁと感じました。

もっともっとつくりたいモチーフが沢山いる、これからも様々な生き物にチャレンジしたいと語る今井さん。今後生まれてくる作品たちから目が離せませんね!

作品写真提供:今井完眞

展覧会情報

「京都府新鋭選抜展」

会  期:2020年1月25日(土)〜2月9日(日)

休館日:月曜日

開室時間10:00~18:00 金曜日は19:30まで(入室はそれぞれ30分前まで)

会  場:京都文化博物館 3階展示室

入 場 料:一般500(400)円、大学生400(320)円、高校生以下無料

( )内は20名以上の団体料金

上記料金で、2階総合展示・3階フィルムシアターもご覧いただけます

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