喫茶店・バー・和菓子店…。今も昔も人々を惹きつける京都「茶味」の名店9選

喫茶店・バー・和菓子店…。今も昔も人々を惹きつける京都「茶味」の名店9選

「茶味」とは、わび・さびに代表されるような茶の湯で確立された美意識。茶の湯のふるさとである京都を訪れたとき、ハッと感じるときめきはこの茶味にあるのではないかと思います。季節が感じられる店、目に見えないところにまでおもてなしを感じられる店、奥行きのあるつきあいができる店…。京都の名店には茶味(=茶のこころ)が潜んでいます。そんな名店を9軒ご紹介して、地元で愛される伝統の店、新しい店の秘密にも迫ります。

京都・茶味なる名店9選

1 亀屋良永

寺町通を上がり、御池通にぶつかる手前の左角。「亀屋良永」は道行く人たちに四季折々の景色を届ける京菓子店です。名物「御池煎餅」に並んでウィンドーを飾るのは、自身が創案した落雁「大原路(おおはらじ)」。長方形の中に丸の入る単純なデザインですが、丸の形と色が変わるだけで、それが菖蒲(あやめ)にも秋の月にも見えてくる茶心あふれるお菓子です。

落雁製干菓子「大原路」は1年に9回表情を変える。こちらは、「春の色」1,404円(税込)

「ウィンドーの目を変え、品をかえることを考えるのは店の親父の仕事です。菓子屋に限らず、親父がいる店が少なくなったのは寂しいもんや」と5代目の下村隆さん。数年前に息子・修さんが6代目を継ぎましたが、5代目も毎日店に顔を出し、帳場から目配りをしています。

ウィンドーショッピングという言葉が消えつつある今、京都の店先も変わりました。だからこそ昔ながらのあり方を続けるこの店が尊く感じます。

◆亀屋良永(かめやよしなが)
住所:京都市中京区寺町通御池下ル下本能寺前町504
営業時間:8時〜18時
定休日:日曜日・第1、第3水曜日休み
公式サイト

2 辻留 京都本店

三条大橋にある「辻留 京都本店」は茶道裏千家の懐石料理を預かり、出張料理専門のお店。観光客でも、折詰弁当でこの店の味を知ることができます。

あしらいの花びらは生姜の酢漬け。口直しも兼ねている。

折詰弁当5,000円。放送しの京都絵地図は日本画家 池田遙邨(いけだ ようそん)作。ひざ掛けに描かれた画は北大路魯山人(きたおおじ ろさんじん)によるもので、紐は茶を表す色として選ばれた。

「20年前、初めてこのお弁当を出したとき、5,000円という金額は突出して高かった。それでも、料理はいいものを必ず詰める、折箱は細部まで大事につくるという考えを変えることはありませんでした」とお弁当を考案した店主の平晴彦さん。

それは、その時期に食べごろを迎えた食材を使ったり、食べやすいように盛り付けたり、懐石の基本にのっとったお弁当です。寿司(春は鯛桜葉巻寿司)やだし巻き玉子といった定番とともに、季節の味もたっぷり入ります。

◆辻留 京都本店(つじとめ きょうとほんてん)
住所:京都市東山区三条大橋東3町目
営業時間:9時〜18時
定休日:無休
※折詰弁当は要事前予約、本店でも受け渡しは可能。ジェイアール京都伊勢丹B2の老舗弁当売り場、もしくはJR京都駅2F新幹線改札内「舞妓」でも販売中。
公式サイト

3 洋食の店 みしな

手の細やかさ、品のあるたたずまい。ひと味違う洋食がいただける「洋食の店 みしな」は清水寺の近く、二寧坂の途中の路地にあります。

店はカウンター席のみになっていて、オープンキッチン手前から三品(みしな)雅子さん(母)、貴子さん(長女)、ガス台に貴史さん(長男)がスタンバイ。夫婦で始めた店が年月を経て、今は親子3人で切り盛りされています。

「それぞれが持ち場を確保して。責任もって働くことが、家族の間でも大事なことよね」と雅子さん。家族経営の店のもつ温かみに少しの緊張感。そこがこの店のよさです。

ランチの一品。カニクリームコロッケとエビフライの盛り合わせ(お茶漬け付)2,700円(税込)。締めのお茶漬けの洗練された味も!

雅子さんの実家はかつて祇園にあった「つぼさか」という高級洋食店。そのメニューをこちらでも提供しています。フライの衣からわかるように、レシピは超絶技巧の域!

◆洋食の店 みしな
住所:京都市東山区桝屋町357
営業時間:12時〜14時30分(L.O.) 17時〜19時30分(L.O.)
定休日:水曜日、第1・第3木曜日(祝日の場合は翌日)
※昼は予約不可、夜は要予約。
京の坂みち 一念坂・二年坂 公式サイト

4 酒陶 桺野

約20年前、4人も入れば満席となる小部屋から始まり、“土壁・無垢材・花一輪の空間”とバーの組み合わせから生まれた「酒陶 桺野」。

「大学生の時に『古美術 佃』を営む佃達雄さんの元で見習いを始めた経緯から、店づくりも手を貸してもらいました。佃さんの美意識では茶室が最高の空間なんです。僕はお酒が好きだから、茶室バーになりました」と桺野浩成さん。2回の移転を経てカウンター10席にテーブル1卓という現空間に落ち着きました。

「酒陶」は造語で、酒と骨董好きから始まった店の背景を物語る。画像右側、手前にある「にんじんのパテ」の中皿は、明末(みんまつ)の京白磁(きょうはくじ)。バーでの会話がうつわから始まるのもここならでは。

フードメニューは一般的なバーフードとは別格。便箋に店主の手書きの品書きはさながら季節の便りのようで読むのがうれしくなります。

シャンパンの入るグラスは1900年ごろのドーム製。

「カウンターをはさんでキャッチボールが楽しめる方に来ていただけたらうれしいです。要望に応えたいし、それ以上のものを提供したいと思います」と桺野さん。

◆酒陶 桺野(しゅとう やなぎの)
住所:京都市中京区三条通新町西入ル
営業時間:18時〜26時
定休日:木曜日
※チャージ500円、カクテル900円〜。要事前予約の料理コースひとり8,000円〜。

5 有次 錦店

京都といえば手仕事の宝庫。都が置かれていたときから、ものづくりを続けてきた職人の子孫が残っているなんて…! 永禄3年(1560年)創業の有次はその代表、刀鍛冶に始まり仏像彫刻の小刀を長く扱う背景をもちます。主力の包丁や明治末ごろに手がけるようになった料理道具など、創業からの品質を守りながら、ひとつひとつ手間を惜しまずつくられています。

左/切れ味抜群、余計な装飾のない洗練されたデザインが有次の包丁。お茶関係の人には茶杓を削る小刀が人気。右/プロの料理人に支持される有次製の鍋。頑丈なつくりだが、長く使ってもらうための修理体制も十分に整っている。

真鍮(しんちゅう)を使うことで繊細な表情が出る抜き型。150種類以上あり小1個1,000円から。

1日にたくさんはできないため、新商品の登場は稀。ですが、年末になると翌年の干支の型抜きが前列に置かれたりして、季節感も感じられるお店です。

◆有次 錦店(ありつぐ にしきてん)
住所:京都市中京区錦小路御幸町西入ル鍛冶屋町219
営業時間:9時〜17時30分
定休日:1月1日〜3日
錦市場商店街 公式サイト

6 京都の花屋 みたて

京都・北区の一角に、趣のある花屋「みたて」があります。路地の草花を生かした花器の見立てによって唯一無二の世界観が生まれています。

黒松と弥生土器の花器で1万円ほどが予算の目安。店内にはその季節に咲く野花や枝物などが並ぶ。
「お寺に行って、ふと足元を見たら木瓜(ぼけ)と葉蘭(はらん)のなにげない取り合わせにときめく。そういう記憶を大事にしています」。と店主の西山さんは言います

和花、山野草の専門店はほかにもありますが「みたて」がひと味違うところは花器となりうるものを見立てて取り合わせる力。たとえば上の黒松は弥生土器のかけら、ときには陶磁器を焼く時に使われる釜道具・匣鉢(さや)がうつわとなることも。

店は2013年にオープン。季節をそのままの姿に寄せて贈る試みが町に新しい風を吹かせています。

◆みたて
住所:京都市北区紫竹下竹殿町41
営業時間:金・土曜日 12時〜17時
定休日:月・火・水・木・日曜日
公式サイト

7 真田紐師 江南

「真田紐師 江南」は四条河原町より徒歩15分のところにあります。武具や重量物を縛る目的でつくられた真田紐は「伸びずに強靭」。茶道具を収める桐箱にこの紐を掛けることを始めたのが千利休です。

草木染手織真田紐。2分幅(6mm)〜1寸7分幅(5cm)まであり1m1,500円〜4,500円。

腰紐(白)5,000円。

「紐の柄に太いラインが入っているものには“重いものが入っているので注意”という意味をもたせたようで、さすがです」と15代店主・和田伊三男さん。大正以前は、茶道具に使われる真田紐は草木染めの木綿製が中心でしたが、それに準じて和田さん夫妻は手染め・手織りの真田紐を製作しているのだとか。紐をおしゃれにアレンジといった趣味の話から茶道具まで、会話が楽しめるのもこの店の魅力です。

◆真田紐師 江南(さなだひもし えなみ)
住所:京都市東山区問屋町通五条下ル上人町430
営業時間:10時〜17時
定休日:水曜日
公式サイト

8 開化堂

100年経っても使える茶筒をつくり続ける「開化堂」。店内の目立つ場所に飾られている創業時(明治初期)のブリキの茶筒は、今でも開け閉めができて、気密性が保たれています…!

茶筒はブリキ、鋼、真鍮(しんちゅう)製があり、色の経年変化が楽しめる。新品のブリキ製茶筒10,000円(100g)。

お抹茶用の銅製茶筒(40g)とブリキ製のふるい網の付いたセット(携帯用巾着、ヘラ、茶匙付)1,4000円。

「祖父の代で抹茶用のふるい網の付いた茶筒をつくり、父の代で携帯用の茶筒が加わりました。僕の代で珈琲缶がつくれたのはうれしかったですね」と語るのは6代目・八木隆祐さん。

「自分の代で何かひとつでも次の世代につなげるものをつくりたい」とは京都の老舗でよく耳にする言葉ですが、いい店はそれが形に表れています。

◆開化堂(かいかどう)
住所:京都市下京区河原町六条東入ル
営業時間:9時〜18時
定休日:第2月曜日・日曜日・祝日
公式サイト

9 フランソア喫茶室

画家の「フランソア・ミレー」から名前をつけたというフランソア喫茶室。昭和9年に創業し、イタリアバロックの豪華客船内のホールをイメージしたこちらのお店は、日本初の文化財登録喫茶店です。

朝10時の開店から店内はすでにムーディな雰囲気。全身を包み込むほどのボリュームで、壮大なバロック音楽が流れています。

1番人気はケーキですが、サンドイッチやトースト類も完璧に整えられていて、味も抜群。付け合わせのサラダにも愛らしいトッピングがあります。ネルドリップで淹れる珈琲しかり、手の力から生まれるおいしさがこの店を支えています。

歴史のある店でありながらその重みを主張しないところも心地よく、お客様のリクエストに応じて音楽を変えるために、1番から234番まで用意されているというBGMにも底知れない魅力を感じる喫茶室です。

◆フランソア喫茶室
住所:京都市下京区西木屋町四条下ル船頭町184
営業時間:10時〜22時30分
定休日:年末年始
※食事21時30分L.O. 飲み物とケーキ22時15分L.O.
公式サイト

喫茶店・バー・和菓子店…。今も昔も人々を惹きつける京都「茶味」の名店9選
この記事をSNSでシェアする
この記事をSNSでシェアする