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2019.05.22

魯山人 没後60年の注目すべき特別展が2019年7月、千葉市美術館で開幕

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美食家の最高峰と目され、『美味しんぼ』の海原雄山(かいばらゆうざん)のモデルとしても知られている北大路魯山人(きたおおじろさんじん)。今年は魯山人の没後60年。その節目の年に合わせて、千葉市美術館で7月に開催される展覧会が今から注目を集めています。

「没後60年 北大路魯山人 古典復興 ー現代陶芸をひらくー」千葉市美術館


北大路魯山人《織部間道文俎鉢》1953年(昭和28)ごろ 八勝館蔵

北大路魯山人とは?
明治16(1883)年、京都に生まれ、昭和34(1959)年12月21日死去。
はじめ、書や篆刻(てんこく)の分野で活動し、大正4(1915)年に初めて作陶を体験した魯山人は大正11(1922)年から、生来の食に対する関心の深さから「料理の着物」としてのやきものの制作に向かっています。

当時、古美術商を営んできた魯山人は会員制の「美食倶楽部(くらぶ)」を発足させ、大正14(1925)年には東京麹町(こうじまち)の星岡茶寮(ほしがおかさりょう)の顧問兼料理長となり、料理や食器の演出に携わるようになっていました。

そして、北鎌倉の山崎に築いた星岡窯で、魯山人は陶磁器の鬼才をいかんなく発揮。中国や朝鮮、日本の古陶磁の様式を受け継ぎながら、専門陶工ではない趣味人ならではの当意即妙な意匠の世界に新境地を開いていったのです。


北大路魯山人《色絵染付鮑形鉢》1935-44年(昭和10年代) 世田谷美術館(塩田コレクション)

魯山人の陶芸とは?
かつて中国大陸や朝鮮半島からもたらされ、日本人が守り伝え、また生み出した素朴な焼き物から鮮やかな色絵まで、長い年月をかけて育まれてきた焼き物のさまざまな美を取り入れた魯山人の作陶への評価は、生前には賛否両論ありました。

しかし、絶えず同時代の陶芸家たちを触発してきたこともまた事実です。

魯山人は日本文化の中核をなしていた中世以来の茶道をもとにした伝統に触れたことで、たちまち陶芸における古典復興を代表する存在に。その活動は、まさに「『美』を食す人」と形容されるものでした。


北大路魯山人《染付葡萄文鉢》1941年(昭和16) 世田谷美術館(塩田コレクション)

伝説の芸術者、魯山人の作品約120点を一挙展示!

今もなお名料亭として語り継がれる「星岡茶寮」を舞台に活躍し、茶寮を退いた後は作陶を中心に自らの美学を貫いた北大路魯山人。

漫画『美味しんぼ』の海原雄山のモデルとされ、傍若無人で真っ向からものを言っていた魯山人は、生前からさまざまな評価があり、毀誉褒貶(きよほうへん)が激しかったことでも知られています。

と同時に、魯山人が生涯にわたって世に送り出したやきものは膨大な点数にのぼります。この展覧会では、そのうち約120 点の作品が紹介され、魯山人とはいったい何者だったのかを教えてくれます。


北大路魯山人《日月椀》1937年(昭和12) 世田谷美術館(塩田コレクション)

魯山人の作陶を考えるための名品のかずかず

大正から昭和にかけての陶芸の流れは、桃山陶芸や、中国大陸や朝鮮半島の焼き物が陶芸家たちにより再発見され、古典復興という大きなうねりとなっていました。

本展では、温故知新を体現したこの動きを中心に、桃山古陶磁の陶片を発見して注目を集めるきっかけとなった荒川豊蔵、魯山人同様に多方面で才能を発揮した川喜田半泥子(かわきたはんでいし)、石黒宗麿といった同時代の陶芸家たちの作品が集結。

魯山人の作品は、ゆかりの名料亭「八勝館」の所蔵品と、世田谷美術館の塩田コレクションを中心に。川喜田半泥子、石黒宗麿、荒川豊蔵から八木一夫にいたる同時代の陶芸家たちの作品に加え、彼らが学んだ中国大陸、朝鮮半島そして日本の古陶磁の名品の総点数202点があわせて展示されます。※会期中一部展示替えあり。


川喜田半泥子《粉引茶碗 銘「たつた川」》1945-54年(昭和20年代) 石水博物館蔵

「没後60年 北大路魯山人 古典復興 ー現代陶芸をひらくー」概要

会期 2019年7月2日(火)~8月25日(日)
会場 千葉市美術館 千葉県千葉市中央区中央3-10-8
開館時間 10:00~18:00 (金・土曜日は20:00まで) ※入場受付は閉館の30分前まで
休館日 8月5日(月)
観覧料 一般 1200円 大学生 700円 小・中学生、高校生無料
公式サイト 展覧会関連イベント


北大路魯山人《萌葱金襴手鳳凰文煎茶碗》1939年(昭和14) 中野邸記念館

講演会「私と古陶磁」(事前申込制)
講師 十四代今泉今右衛門(陶芸作家、重要無形文化財「色絵磁器」保持者)
日時 7月21日(日)14:00~(13:30開場予定)11階講堂にて定員150名(聴講無料)
申込方法 往復はがきの場合、郵便番号・住所・氏名・電話番号・参加人数(2名まで)を明記の上、〒260-0013 千葉市中央区中央3-10-8 千葉市美術館イベント係まで。申込締切7月10日(水)必着。応募多数の場合は抽選。公式サイトでも申し込み受付中。


荒川豊蔵《志野筍絵茶碗 銘「随縁」》1961年(昭和36) 荒川豊蔵資料館蔵

講演会「近代のアウトサイダーたち一川喜田半泥子、北大路魯山人、青山二郎」
講師:森孝一(美術評論家)
日時 8月3日(土) 14:00~(13:30開場予定)11階講堂にて先着150名(当日12:00より11階にて整理券配布 聴請無料)

ワークショップ「魯山人にならう~金継ぎでアクセサリーづくり~」(事前申込制)
講師:柳澤綾佳(グラフィックデザイナー)
日時 8月4日(日) 13:30より 11階講堂にて定員20名(中学生以上) 
参加費 1000 円(材料代込み)
申込方法 往復はがきの場合、郵便番号・住所・氏名・電話番号・参加人数(2名まで)を明記の上、〒260-0013 千葉市中央区中央3-10-8 千葉市美術館イベント係まで。申込締切7月24日(水)必着。応募多数の場合は抽選。


北大路魯山人《横行君子平向》1957年(昭和32)年ごろ 八勝館蔵

ギャラリートーク
担当学芸員によるギャラリートーク 7月3日(水)14:00~
ボランティアスクッフによるギャラリートーク 会期中の毎週水曜(7月3日を除く) ※水曜以外の平日14:00 の開催や、混雑時には中止する場合もあります。

※各イベントの変更、中止については公式サイトをご確認ください。

同時開催 所蔵作品展「やっぱり素敵な人だった ―勅使河原蒼風、棟方志功の作品を中心に―」
※「没後60年 北大路魯山人」展観覧の方は無料

書いた人

通称TAKE-G(たけ爺)。福岡県飯塚市出身。東京で生活を始めて40年を過ぎても、いまだに心は飯塚市民。もともとファッション誌から始まったライター歴も30年を数え、「和樂」では15年超。日々の自炊が唯一の楽しみ(?)で、近所にできた小さな八百屋を溺愛中。だったが、すぐに無くなってしまい、現在やさぐれ中。