「藝」という字の真ん中の難しいところをスポーンと外すと「芸」になります。そのため、「芸」は「藝」の略字として認識されていますが、もともとは別の意味を表す漢字だったことを知っていましたか?
「藝」と「芸」のもつ深~い歴史と意味をご紹介します!
藝と芸の意味は?
「藝」という漢字は、草木の苗を植えている様子を表しています。そこから「幼い頃から教育の種を蒔くことで、豊かな教養が身に付きいずれ花開く」といった意味をもつようになりました。
それに対し「芸」という漢字はもともと農業用語。防虫効果のある強い臭のミカン科の植物と、「草を刈り取ること」を意味します。読みも「ゲイ」ではなく「ウン」「くさぎる」です。
ちなみに「芸」の方が当用漢字になったのは、昭和21年のことです。当用漢字については次項で説明しましょう。
戦後、漢字廃止の危機があった!
「当用漢字」とは「当面の間用いる漢字」という意味です。当面とはいつまでなのかと言うと、第二次世界大戦後から漢字を廃止するまでの期間。なんと、日本では漢字廃止の危機があったのです!理由は、漢字が難しすぎて識字率を下げている、とGHQから指摘があったからだと言われています。
しかし、漢字と識字率に因果関係がないことがわかり、「当用漢字」は廃止され、昭和56年に「常用漢字」と名を改めることとなりました。
この「当用漢字」は、膨大な量がわずか11日で告示されています。そのため「藝」と「芸」の意味を考えている暇などなかったのかもしれません。「あっ、藝の真ん中の難しいところ取ったら芸になるじゃん。はいこれで決定!次次!どんどんやるよ!」そんな雰囲気だったのでしょうか。
「藝術」という言葉は明治時代につくられた
藝が芸になる前、「藝術」という言葉がつくられたのは明治時代のこと。つくった人物は、徳川慶喜の側近だった西周(にし あまね)だと言われています。artという単語を日本語に表す際、「藝術」としたのです。
西周はこのほかにも、哲学・理性・心理学・意識・命題など、さまざまな英単語を日本語で表現しています。
現代は、リスケ・アサイン・アポ・インスピレーション・エンドユーザーなど、多種多様なカタカナ言葉が使われています。これを西周のように2~3の漢字の組み合わせからなる単語に置き換えるとなったら、あなたはどのように表現しますか?