漫画「JIN-仁-」にも登場!激動の幕末に来日したアメリカ人医師ヘボンの功績

漫画「JIN-仁-」にも登場!激動の幕末に来日したアメリカ人医師ヘボンの功績

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テレビドラマ『JIN-仁-』の原作は、スーパージャンプ(集英社)で連載されていた漫画である。

この漫画には、ドラマ以上に実在の人物が登場する。その中のひとり、アメリカ人医師のジェームズ・カーティス・ヘボンは主人公の南方仁との絡みもあり、シナリオ上の重要人物として描写された。

「ヘボン」と聞いて、大抵の人はヘボン式ローマ字を思い浮かべるだろう。これを開発したのは、もちろんヘボンである。が、彼はそれ以外にも日本で様々な業績を残したのだ。

「ヘボン」と「ヘプバーン」

まずは「ヘボン」という日本語表記について説明する必要がある。

これをアルファベットで書いた場合「Hepburn」となる。往年の名俳優オードリー・ヘプバーンと同じ姓だ。日本語は発音が単純な言語だから、このような表記揺れが度々発生する。

従って、表記揺れを解消するならアメリカ人医師も「ヘプバーン」にしなければならないのだが、ここでは歴史的固有名詞の「ヘボン」を尊重したい。

ヘボンが来日を果たしたのは1859(安政6)年。時代はまさに幕末の真っ只中である。ヘボンは医者であるが、同時にキリスト教の宣教師でもあった。

とはいっても、戦国時代のフランシスコ・ザビエルのような人々を連想してはいけない。ザビエルはカトリックの聖職者だが、ヘボンは米長老派の伝道師である。故に、ヘボンは日本におけるプロテスタント伝道の先駆けとも言える人物だ。

彼が来日したこの年、横浜港が正式開港した。それに従って外国人居住地も整備されていく。今日の大都市横浜の系譜は、ここから始まっていると言ってもいいだろう。しかし、外国人にとって当時の日本は安全な場所ではない。護衛なしに横浜を出ることはできない。外国人目当てのスリや強盗が辺りをうろついている……ということではない。彼らを狙うのは尊王攘夷派だ。

1862(文久2)年、横浜港から近い生麦で恐るべき事件が発生した。薩摩藩の大名行列に割り込んでしまったイギリス人が、その場で斬られたのだ。脱藩浪士の個人的犯行ではなく、一大名が仕掛けた「宣戦布告」である。少なくとも、横浜の外国人たちはそう受け取った。

この生麦事件で負傷したイギリス商人の手術に、ヘボンも加わった。彼は激動の幕末をその目で見ていたのだ。

長生きできなかった「歌舞伎役者」という職業

さて、テレビドラマ『JIN-仁-』にも登場した3代目澤村田之助という人物がいる。

田之助も無論、実在の人だ。女形で有名だった歌舞伎役者である。その美貌は江戸中の女子の心を鷲掴みにし、様々なキャラグッズが発売されるほどの人気を誇っていた。

そんな田之助は、晩年に四肢を切断した。

当時の歌舞伎役者は命がけ、というよりも長く生きられない職業だった。理由はおしろいに含まれていた鉛である。有毒物質の入ったおしろいをいつも使っているため、いずれ鉛中毒を発症してしまうのだ。

田之助の四肢、特に足は深刻な壊疽を起こした。もはや切断手術をするしかないという容体である。

しかし、当時の日本に外科手術のできる医師はあまり多くない。いや、数えるほどしか存在しないと表現するべきか。田之助の左足切断を執刀したのは、日本人医師ではなくアメリカ人のヘボンである。

彼の医術は、当時の日本人にとっては神の領域とも言えるものだった。

近代化と医術の進歩は切っても切り離せない。国民全員が健康的な生活を送ることが、国力の向上につながる。フランス革命以降の国民国家の概念は、貴族も平民も関係なく国民は健やかな生活を送る必要がある、というものだ。だからこそ、その中の成人男性を効率的に徴兵できる。

開明的な考えの日本人医師は、尊攘派の脅威をくぐり抜けて横浜に押し寄せた。

明治学院の創立者

ヘボンは日本人の学生を私塾に受け入れた。

彼を始めとする外国人にとっての「日本人」とは、言い換えれば「異国の原住民」である。そのような意識のままでいれば、日本人に最先端の学問など教える必要は一切ない。しかし、ヘボンは日本人を蛮族のように扱うことは決してなかった。

「日本陸軍の父」大村益次郎、三井財閥の重鎮益田孝、昭和の二・二六事件で殺害された政治家高橋是清も、ヘボンの弟子である。現代につながる明治学院も、明治維新以降にヘボンが私財を投じて創立した学術機関だ。

この人物を「ローマ字を作った人」としてのみ捉えるのは、あまりにもったいない。

19世紀のアジアは、国によってはっきりと明暗が分かれた。日本やタイのように近代化を果たして欧米列強の植民地化から逃れた国、インドネシアのように西洋の植民地となってしまった国、清帝国のように改革が徹底されなかった国。これらを鑑みると、西洋から教育者を受け入れた国だけが近代化に成功したと判断できる。

ヘボンの愛した日本は、明治維新後40年かけて一等国に成長した。

トップ画像:Wikimedia Commons

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