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Culture
2020.08.20

テレビは画質や大きさだけじゃない!昭和のリモコンの進化が健気すぎる

この記事を書いた人

テレビに求めるものは何だろう。画面の大きさ? 画質の鮮明さ? 
私たちの暮らしに登場して以降、進化し続けてきたテレビ。しかしその中で、あって当然だった機能が今、役割をスマート家電やアプリに譲ろうとしている。そうリモコンだ。
テレビ本体の進化とともにテレビリモコンも様々な変遷を遂げてきたが、あまりピンとこないという人も多いのではないだろうか。むしろ「大きい」「ボタンが多い」などの不便が先に立つかもしれない。
でも、想像して欲しい。リモコンがなかった時代のことを。リモコンが登場した時の庶民の喜びを。そして今、その役割を終えようとしているテレビリモコンの健気な進化の歴史を、ちょっと振り返ってみようではないか。

最初のテレビリモコンは有線だった

有線式のテレビリモコンは昭和30年代に登場したといわれている。日本初の民生用テレビが発売されたのが昭和27(1952)年ということを考えると意外と早い。
しかし、このころのリモコンは有線。今では考えられないことだが、コードの届く範囲でしかチャンネルを変えることができず、ぜんぜんリモートコントロールではなかった。テレビを見ていると、家族の誰かがコードに足を引っ掛けて転ぶ状況が容易に想像できるのではないだろうか。しかし、テレビ本体のチャンネルを操作しなければいけなかったそれまでと比べると、これでもかなり画期的なことだった。

そしておよそ10年の時を経て、ついに昭和46(1971)年、無線のテレビリモコンが登場する。
三洋電機株式会社から発売された「ズバコン」である。ネーミングもリモコンの操作性を前面に押し出している。
しかし、これはこれで難点もあった。ズバコンのリモコンは現在のような赤外線ではなく、超音波を採用していた。そのため、テレビ本体が電話のベルやパトカーや消防車のサイレン、鍵や食器の擦れる音など「超音波っぽい生活音」を感知してしまうと、勝手にチャンネルが切り替わるという珍事が発生した。
とてもホッコリする話だが、それは今私たちが何の不便もなくリモコンを操作しているからだ。親や祖父母世代の人たちは最初とてもビックリしたに違いない。
また、この頃のチャンネルはロータリー式といって、テレビ本体にアナログ時計の文字盤のようなダイヤルがあり、それを回転させてチャンネルを合わせていた。リモコンで操作する際もテレビ本体のダイヤルが連動して回転するため、現在のように希望のチャンネルに直接飛ぶことはできなかった。

赤外線リモコンの登場

昭和52(1977)年頃、赤外線リモコンを採用したテレビが発売されて、チャンネルの誤動作を一気に解決すると、昭和50年代後半には、リモコンひとつで電源のオンオフや音量の調節ができるようになった。それにより、チャンネルや音調のつまみを搭載する必要がなくなったテレビ本体はデザインの簡素化が進んだ。
赤外線リモコンはその後、エアコンやラジカセ、ビデオデッキなどにも広がり、家の中がリモコンだらけになったのもこの頃。家族の誰かが「リモコンどこー」と歩き回る風景を見た人も多いはず。エアコンのリモコンでテレビのチャンネルを変えようとするお年寄りがいたり、小さな子供のオモチャと化したりとリモコンにまつわる矛盾が完全に解消することはなかった。

外出中も家電を操作?現代のリモコン事情

リモコンの多様化は、現在も続いている。そのひとつがスマートスピーカーだろう。
端末に話しかけて家じゅうの家電を操作するなんて、漫画やアニメで見ていた未来の姿そのものだ。ただ家の中にあふれていたリモコンの山を片付けることには成功したが、現代のスマートスピーカーは人間の声を正確に感知できないといった問題も抱えている。超音波リモコンが希望のチャンネルに合わない問題とよく似ている。技術の進歩がいつかは解決する問題なのかもしれないけれど、その頃にはまた別の問題が持ち上がっている気がしないでもない。

スマートフォンを利用したリモコンも浸透してきている。アプリをインストールして対応する家電を登録すれば、スマートフォンひとつで複数の家電を操作できるというもの。外出先から、Wi-Fi回線を経由して自宅の家電を操作できてとても便利だ。真冬の寒い時期、帰宅前にエアコンを操作して部屋を温めたり、風呂を沸かしたりといったことが可能というスグレモノである。
でも、これはこれで「外出先から操作できるかどうか」が家電に求められる機能として浮上する。買い物や仕事など外出しなくても生活できる未来を想像すると、息の長い機能かどうかはわからない。

テレビリモコンの進化は現代人の矛盾をあらわしている?

あたらしい家電が発売されても「必要か?」「本当にいいものか?」と、二の足を踏んでしまうことが多くなった気はしないだろうか。その点、昭和の家電は単純明快で、発売されてすぐ良いか悪いかを判別できたように思う。テレビひとつを取ってみても、カラーになったり、リモコンがついたり、わかりやすい進化に人々は跳び付き、そこにオマケのようについてくる不具合には目をつぶる、それが昭和の家電だった。

世の中は便利を求めるし、その流れは止められそうもない。でも便利が「いいこと」かどうかは、テレビリモコンの進化をみていると正直わからない。
昨今「昭和」が静かなブームらしい。便利になりすぎた現代に疲れたら、テレビリモコンを思い出してみて欲しい。少し気が楽になるかもしれない。

書いた人

生粋のナニワっ子です。大阪での暮らしが長すぎて、地方に移住したい欲と地元の魅力に後ろ髪惹かれる気持ちの狭間で葛藤中。小説が好き、銭湯が好き、サブカルやオカルトが好き、お酒が好き。しっかりしてそうと言われるけれど、肝心なところが抜けているので怒られる時はいつも想像以上に怒られています。