Culture
2020.10.06

クイズ!誰でも知ってる身近な「晴れ系妖怪」ってな~んだ?ヒントはまん丸い頭!

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夜、廊下、トイレなど、暗所には妖怪の気配がする。
真っ昼間の燦々と日差しが降り注ぐなか現れる妖怪もそれはそれでちょっと怖いけれど、ムードを大切にする妖怪たちの出現する場所や時間帯は「暗くて静か」が定番だろう。
「雨」もそのひとつ。江戸時代の画家・鳥山石燕(とりやませきえん)の妖怪画集『画図百鬼夜行(がずひゃっきやこう/がずひゃっきやぎょう)』や『今昔百鬼拾遺(こんじゃくひゃっきしゅうい』には姑獲鳥(うぶめ)や雨女など雨系妖怪がズラリ。雨と妖怪の親和性の高さをうかがわせている。
しかし、少数ではあるが晴れ系妖怪もちゃんと存在している。そして現代の日本人の暮らしの中にすっかり馴染んでいるものがいたりもするのだ。

圧倒的多数!与党「雨系妖怪」のみなさん

履き物に雨が染み込む本降りのなか身をかがめながら先を急いでいると、傘の露先からのぞく何者かの不気味な足。たたずんでいるのがトトロだったら最高だけど、あなたが子どもの年齢ではない場合は雨系妖怪の可能性大である。

国立国会図書館デジタルコレクション(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2551540?tocOpened=1)

■姑獲鳥(うぶめ)
産女という表記もあるように妊婦の妖怪というイメージが一般的。中国には姑獲鳥と書いてコカクチョウと呼ばれる鬼神の伝承があり、日本の姑獲鳥が鳥のような叫び声をあげたり鳥のモチーフで描かれたりするのもそこからきていると思われる。

■雨女
一緒に出かけると必ず雨が降る女性の知人友人を「雨女」などといじったりすることがあるが、実は元は妖怪。姑獲鳥が妊婦であるのに対し、雨女は失くした自分の子を悲しむあまり子どもをさらいにくる。はた迷惑な雨系妖怪だ。

■雨降小僧
名前のまんま、雨の日に現れる傘を被った男の子の妖怪。江戸時代中期に流行った黄表紙(きびょうし)という絵本で人気を博した道化師的な妖怪。
黄表紙には「豆腐小僧」という類似の妖怪も登場し、こちらも雨降小僧と見た目は似ているがなぜか豆腐を携えている。現代で豆腐小僧が現れたとしても妖怪だと気づくだろうか。「雨の中おつかい大変だね」くらいにしか思わないかもしれない。

妖怪ビジュアル大図鑑 (講談社ポケット百科シリーズ)

数少ない晴れ系妖怪「日和坊」

これらの雨系妖怪は大勢いる中の氷山の一角。派生した妖怪や地方の伝承と結びついて祀られているものも含めると、雨にまつわる妖怪の数は計り知れない。
妖怪とは「異」なるものの象徴。晴れと雨を比較した場合、晴れは平素で雨は特別ということなのか。しかし、晴れを司る妖怪がまったくいないわけではない。その一例が日和坊(ひよりぼう)である。
こちらも前述した石燕の著書『今昔画図続百鬼』で紹介されていて、常陸国(現在の茨城県)の深い山の中に住み、晴れの日には顔を出すが雨が降ると隠れてしまうとのこと。姑獲鳥や雨女のような悪さもはたらかないけど、妖怪らしい神通力もない。これって妖怪と言えるのだろうか。本当に山に住んでいる子どもと見分けがつかないのでは……。

遠足や運動会の前日、軒先に吊るしたてるてる坊主こそ日和坊の正体

妖怪っぽくない日和坊だが、晴れの日にあらわれるという特徴は時として有難い。
幼い頃、晴れを願って「てるてる坊主」を吊るした記憶はないだろうか。実はあれこそが現代に息づく日和坊なのである。
てるてる坊主の風習は江戸中期にはすでにあり、当時は服を着せたり晴天になった後に顔に目を書き入れたりと現代と比べてより多くの手順を踏んでいた。

また、日和坊には中国の魃(ばつ/ひでりがみ)という旱魃を起こす神から派生したという説もある。そういわれれば確かに「魃」は旱魃の魃。
魃は現象が神格化したもので、文献によって女神や獣神など様々だが、日照りによって人々に害をもたらすという特徴は共通している。魃も江戸時代には日本に伝わっていたことから、日和坊と結びついたと考えられる。

台風や豪雨被害が多発する今こそ日和坊の力に頼りたい

筆者は雨の日に家の中から街が洗われていく様子を眺めるのがわりと好きなのだが「服や靴が濡れる」「洗濯物が外に干せない」などの理由で雨を嫌う人は多いと思う。そうした心理を突いた日和坊は人間社会ではむしろ好意的な存在だ。

梅雨や台風の時期など、とんでもない豪雨によって毎年のように災害が起きる時代になってきた。科学技術によって被害を抑えられる未来に期待をしつつ、今私たちに出来ることがあるとしたら「てるてる坊主を吊るすこと」ではないだろうか。
おまじないなどと言ってられない。昔の人たちが村人総出で雨乞いをしたように、こうなったら日和坊の大活躍を願うしかない。ただし、たくさん吊るしすぎて旱魃にならないように。その点だけは注意したい。

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トップ画像出典:メトロポリタン美術館

書いた人

生粋のナニワっ子です。大阪での暮らしが長すぎて、地方に移住したい欲と地元の魅力に後ろ髪惹かれる気持ちの狭間で葛藤中。小説が好き、銭湯が好き、サブカルやオカルトが好き、お酒が好き。しっかりしてそうと言われるけれど、肝心なところが抜けているので怒られる時はいつも想像以上に怒られています。