『万葉集(まんようしゅう)』は、奈良時代に編纂された和歌集です。収載された和歌の数は、約4500首。
その一つひとつを紐解くと、7~8世紀に生きた日本人の、生き方・感じ方がリアルに聞こえてくるかのようです。
……ということなのですが、多くの方にとって『万葉集』なんてサッパリわからないし、どうでもいい。そんな存在なのではないかと思います。
でも実は、かなりセクシーなやり取りが多い和歌集なんです! ページを開くと、なんと!! 『万葉集』は天皇の“ナンパ”からスタート!
意外すぎるその内容をご紹介します。
雄略天皇の「圧が強い」ナンパ
『万葉集』っていう名前からして堅苦しい! 一体最初にどんな難しいことが書かれているんだ! そんな期待を良い意味で裏切ってくれるのが、冒頭を飾る雄略天皇が詠んだとされる歌です。
まずは原文をご紹介します。
籠もよ み籠持ち ふくしもよ みぶくし持ち
この岡に 菜摘ます児 家告らせ 名告らさね
そらみつ 大和の国は おしなべて 我こそ居れ
しきなべて 我こそいませ
我こそは 告らめ 家をも名をも雄略天皇
サッパリわけがわからないと思いますが、このような意味です(私の意訳も含まれています)。
若菜摘んでるお嬢さん! いい籠とへら持ってるね!
ねぇねぇ家どこ? 名前なんて言うの?
え~教えてくれないの?
実は、この国は私が治めている国なんだよね。
そっちが言わないなら、私から言ってもいいけど?
と、こんな感じです。
当時、女性の本名は非常にプライベートなもので、結婚する男性にしか教えませんでした。つまり、この歌は求婚の歌なのです。
いきなりナンパされた若菜を摘んでいるお嬢さんは、もちろん本名を明かしません。そこで雄略天皇は「実は自分、国治めてるんだよね~」と、天皇という最高権力者であることを匂わせています。
このように、かなり強引なナンパから『万葉集』はスタートするのです。
雄略天皇は女好き&ルーズだった?
第21代天皇に数えられる、5世紀後半に在位した雄略天皇。数々の伝承が残っていますが、その中には「女好きだった」という話も。しかも結構いい加減だったようで、川で洗濯していた女の子と結婚の約束をしたのに、すっかり忘れて80年も待たせたこともあったのだとか(むしろ思い出したのがスゴイ……)。
当時は天皇が多妻なことは子孫の繁栄、さらには国の発展をも意味したので、万葉集の成立した8世紀の人々は、雄略天皇を魅力的な天皇としてとらえていたのでしょう。
そのため、この歌を冒頭にもってきた理由には、雄略天皇の歌を載せることによる『万葉集』の権威付けなど、さまざまなことが考えられています。
『万葉集』はセクシーなんだ!
いきなりナンパからスタートした『万葉集』。この後も次々と恋愛の歌が続きます。
『万葉集』に収載された約4500首の中には、恋愛以外の歌もありますが、今後はもっとセクシーな歌をピックアップしていきたいと思います! ドキドキする色っぽいやりとりや下ネタも楽しめる「セクシー万葉集」どうぞお楽しみに!
参考文献
日本古典文学全集『万葉集』小学館
『みんなの万葉集』上野誠著 PHP研究所