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2022.01.04

正月はこれにてお開き!無病息災や家内安全を祈る「鏡開き」を3分で解説

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ふっくらとした曲線、どっしりとした佇まい。
鏡餅は縁起物として、長らく日本の正月を彩ってきました。
今回は、そんな鏡餅にまつわる行事「鏡開き」について3分でご説明いたします。

鏡餅のあのフォルムにテンション上がって、鏡開きにもまたテンション上がるお正月好きなので、とても気になる!

ちなみに鏡開きはいつかと言うと、一般的には毎年1月11日。その日になった理由も詳しくご紹介します!

鏡餅と鏡開き

鏡餅とは、年の暮れについた餅を、丸く平たい形にして重ねたものです。それを、正月の神棚や床の間に供えました。
鏡餅の名は、鏡のような形が由来と言われています。また、その丸さが家庭円満の象徴とされました。

確かに、まん丸い鏡餅見ていらいらした気分になる人ってあまりいないかも(特別な事情がある場合は別でしょうが)。

全部白い餅で作ったものが一般的ですが、紅白の鏡餅もあり、石川県金沢市のものが有名です。(画像出典:『新版引札見本帖. 第1』国立国会図書館デジタルコレクションより)

鏡開きは、供え物の鏡餅を下ろし、みんなで分かち合って食べる行事です。
このとき、刃物で餅を切るのは、縁起の悪いことと見なされました。代わりに、手で欠いたり槌(つち)で叩いたりして砕きました。

刃物を使わない理由は、「年神様の魂が宿っているものだから」「神霊が刃物を嫌う」「(武士の)切腹を連想させるから」「固いから危険」など、いくつかの説が唱えられているようです。

細かな破片になった餅は、汁粉や雑煮、欠餅(かきもち)などに使われます。それを食べながら、人々は無病息災や家内安全を祈りました。

鏡餅には年神様が宿るとされるため、その力を分けていただく意味があったようですね。

また、割った餅の一部は、歯固(はがため/正月と6月に長寿を願って催される行事)に使われることがありました。ここでの「歯」は、齢(よわい)を意味します。固いものを食べて歯を丈夫にし、齢を固める(新たに寿命を得る)行事です。

鏡開きは「鏡割り」とも言われます。けれども、「割る」は忌み言葉にあたりました。そこで、おめでたい言葉の「開く」が好まれて使われました。

1月11日になった理由はあの徳川将軍?

鏡開きは、一般的に、1月11日前後に行われます(地域によっては4日や7日、月末)。しかし、江戸時代初期までは、小正月(こしょうがつ/1月15日前後に行われる正月行事)も過ぎた、20日の行事とされました。
鏡開きとはもともと、年始行事の終わりを意味する儀式だったのです。

なぜ10日近くも日付が移動したのか、不思議ですよね。

江戸時代初期に、きっと何かがあったのでしょうが……なんだろう?

実は、徳川幕府の3代将軍・徳川家光(とくがわいえみつ)の忌日(きじつ/命日、月命日)が20日なのです。
徳川幕府は、将軍たちの忌日をとても大事にしていたようです。そのため、鏡開きは11日に繰り上げられました。
ちなみに、1月11日は、商家の蔵開き(その年初めて蔵を開く行事)の日でもありました。

これは明治に描かれた、江戸城での鏡開きの様子。厳粛な雰囲気です。(画像出典:『千代田之御表 御鏡開ノ図』国立国会図書館デジタルコレクションより)

庶民は、1月4日になるとすぐに鏡餅を下げる傾向にありました。しかし、武家の影響を受けて、同じく11日に行うようになりました。

鏡餅の飾り方、すぐに思い出せますか?

現代には、いろいろなタイプの鏡餅が流通していますよね。

飾り方の一例を挙げると、三方(さんぽう/正方形のお盆に穴をあけた台をつけたもの)に半紙とウラジロ(シダの一種)という植物を敷き、その上に2段重ねた餅を据えます。
餅を重ねる理由は、「福が重なるように」「太陽と月(陰陽)を表している」など諸説あります。地域によっては3段重ねます。

餅には、橙(だいだい)や伊勢海老、昆布、ユズリハなどで飾りつけます。
橙は小さくて丸い柑橘類です。一説によると、この名前は「代々」から来ているとのこと。1年で実が落ちず、ひとつの枝に世代の違う実が混在するため、「代々永続」に通じる縁起物となりました。

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画像のように、串柿(くしがき/串に刺した干し柿)を飾ることも。串柿は、三種の神器のひとつ「天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)」を表すという見方があります。(画像出典:『新版引札見本帖. 第1』国立国会図書館デジタルコレクションより)

正月の鏡餅を床の間に飾る習慣は、室町時代に始まったとされます。このころ、平安時代の寝殿造(しんでんづくり)から発展した武家の住宅様式「書院造(しょいんづくり)」が生まれました。
武家では、床の間に飾った甲冑へ餅を供えました。また、女性は餅を鏡台に供える文化があったそうです。それぞれの餅は「刃柄(はつか)」「初顔(はつかお)」と呼ばれました。本来の鏡開きの日であった20日との語呂合わせで、縁起をかついだとされます。

日本では古くから語呂合わせや洒落・縁起担ぎがよく行われていたようです。戦国時代・合戦前のしきたり5選。駄洒落みたいな縁起担ぎやタブー・吉凶占いも紹介

鏡開きは、正月に区切りをつける行事です。非日常から日常に戻ってしまうのはなんだか寂しい、という人もいるかもしれません。
しかし、まだまだ1年は始まったばかり。よい年になるよう、餅をしっかり噛みしめて、気力を充実させましょう!

アイキャッチ画像:国立国会図書館デジタルコレクションより『新版引札見本帖. 第2

主な参考文献
『年中行事大辞典』 山田邦明・長沢利明・高埜利彦・加藤友康/編 吉川弘文館 2009年
『日本文化事典』 神崎宣武・白幡洋三郎・井上章一/編 丸善出版 2016年

書いた人

日本文化や美術を中心に、興味があちこちにありすぎたため、何者にもなれなかった代わりに行動力だけはある。展示施設にて来館者への解説に励んだり、ゲームのシナリオを書いたりと落ち着かない動きを取るが、本人は「より大勢の人と楽しいことを共有したいだけだ」と主張する。

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人生の総ては必然と信じる不動明王ファン。経歴に節操がなさすぎて不思議がられることがよくあるが、一期は夢よ、ただ狂へ。熱しやすく冷めにくく、息切れするよ、と周囲が呆れるような劫火の情熱を平気で10年単位で保てる高性能魔法瓶。日本刀剣は永遠の恋人。愛ハムスターに日々齧られるのが本業。