日本文化の入り口マガジン和樂web
10月20日(水)
お詫びとお願いと部屋とワイシャツと私(マナやん)
日本文化の入り口マガジン 和樂web
日本文化の入り口マガジン 和樂web
10月20日(水)

お詫びとお願いと部屋とワイシャツと私(マナやん)

読み物
Culture
2019.03.29

家紋のデザインで円満解決!? 紋章上絵師・波戸場承龍さんのクリエイティブな仕事術

この記事を書いた人

着物だけじゃない! デザインソフトを駆使する現代の紋章上絵師、仕事の流儀

インタビューの途中からは、こだわりの美味しいコーヒーを淹れてくださった(しかも、コーヒー豆を挽くところから!)息子の波戸場耀次(はとば・ようじ)さんも同席してくださいました。兄弟にも間違われるそっくり親子。京源の仕事は、この波戸場父子の二人三脚で成り立っています。

下谷神社のお稲荷さん。
波戸場父子が工房である京源をかまえる東上野。下谷神社のお稲荷さんの脇を抜けると、昭和の面影をとどめた町並みが。

— この正円による描画法を可視化したデザインは、コンピューター上で描いていらっしゃるんですよね?

 はい。稲荷町に越してきた頃に、息子がIllustrator(Adobe社の描画ソフト)を使っているのを見て、面白そうなので挑戦してみたんです。ただ僕はなかなかベジェ曲線が扱えなくて、なかば諦めかけていたときに、ふと正円の組み合わせで線を描く方法を思いつきました。紋章上絵師として、普段からぶんまわし(竹製のコンパス)を使っているので、どこに中心を置いてどのくらい広げればどこに当たるっていうのは感覚としてわかっていたんですね。そこからIllustratorを使用するようになりました。

— ということは、理論的には、ぶんまわしでもこのデザインは描けるということですか?

耀 ものすごい数の円で描くので、実践は難しいと思いますが、理論的にはそういうことですね。

 それで、あるときこの複数の円が曼荼羅みたいに見えたんですよ。そこでこれを「紋曼荼羅」と名付けたんです。いま商標も申請しています。

正円の弧で描かれた鯉。波戸場承龍さんの「紋曼荼羅」のシリーズのひとつ。家紋が正円によって構成されていることを可視化した「紋曼荼羅 鯉水」。(画像提供:京源)

— こうやって制作の軌跡を見せることで、多くの人たちの家紋に対するイメージを刷新したと思います。そういう点で、家紋の作図の手順を見せたTV番組「デザインあ」の成果は、やはり大きいですよね。

 「デザインあ」のお話をいただいたとき、すでにこの「紋曼荼羅」の作品が手元にあったので、制作の方に「こんな風に家紋の成り立ちを見せると面白いですよ」と色々ご提案をさせていただいたんですね。ご担当者は「斜め上からの回答がきたので、一旦持ち帰らせてください」って(笑)。それから社内で検討していただいて、僕のアイデアが採用になりました。

— 単に「梅の花や松の木が意匠化されてこうなりました」って知識をインプットするだけじゃなくて、そのデザイン技法を知った子供たちが「自分でも家紋が描けるんだ」ってアクションを起こせるところが、すごく良いなと思います。

 家紋って、別に役所に登録するものじゃないですから、好きな家紋を「今日から、これがうちの家紋」っていう風にして良いんですよ。個人が自由に自分の紋をつくっても良いんです。過去には、ご結婚に際して新たな家紋のご依頼をいただいたこともありました。最近、550年以上続くお寺さんの紋を新たにつくらせていただいたり。

波戸場承龍さんは、550年以上続くお寺の新しい紋を作成。
550年以上続く由緒あるお寺の紋を制作。その紋を入れて新しい袈裟をつくったとの嬉しいご報告も。(画像提供:龍寶山知行院)

— ご結婚された夫婦が新しい家族の紋をつくるって、素敵なお話ですね。まさに「ご縁」のかたちですね。

書いた人

東京都出身、亥年のおうし座。絵の描けない芸大卒。浮世絵の版元、日本料理屋、骨董商、ゴールデン街のバー、美術館、ウェブマガジン編集部、ギャラリーカフェ……と職を転々としながら、性別まで転換しちゃった浮世の根無し草。米も麦も液体で摂る派。好きな言葉は「士魂商才」「酔生夢死」。結構ひきずる一途な両刀。