警備員が足りない!え、花火大会も中止になっちゃうの?

警備員が足りない!え、花火大会も中止になっちゃうの?

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静岡県静岡市で毎年7月に開催される安倍川花火大会。

1万5000発の花火が2時間で打ち上げられる、静岡県下では有数のビッグイベントである。が、実はこの安倍川花火大会は2年連続で中止になっている。

そのきっかけは台風だ。

昨年は平成30年台風12号、いわゆる「逆走台風」が静岡市に接近した。そして今年は令和元年台風6号がやって来た。これはあまり強い勢力のものではなかったが、安倍川花火大会は河川の中州に打ち上げ筒を設置する。それを不可能にするには十分な勢力だった。

だが、これらはあくまでもきっかけに過ぎない。「きっかけ」と「原因」は異なるものだ。

安倍川花火大会を中止にした原因は、警備員不足である。

戦没者供養の花火大会

安倍川花火大会は、戦没者の慰霊を目的に1953年から始まったイベントだ。

「戦没者」とは、もちろん太平洋戦争での死者を指す。

静岡市は1945年6月、大空襲の憂き目に遭っている。筆者は空襲直後の航空写真を見たが、市内中心部は賤機山を残してほぼ更地と化してしまった。その記憶が、今でも静岡市民の頭に残っている。

戦災犠牲者の供養のために始められた安倍川花火大会は、ある意味で静岡市民の心の拠り所と言える。静岡市は製造業の町でもある。従って、尺玉やスターマインを提供する企業は製造業や物流業のメーカーが多い。

安倍川花火大会で最も盛大なスターマインを提供するのは、三菱電機だ。この企業は市内に製作所を置き、巨大な雇用と税収を生み出している。どの地域の花火大会でもそうだが、花火の規模に「産業」というものが反映される。

三菱電機のスターマインが始まると、聞こえてくるのは溜め息だ。もちろん、その大きさに圧倒される意味合いの溜め息である。「やっぱり大企業は違うね」という声すらも聞こえるほどだ。

全国共通の問題

そんな安倍川花火大会だが、近年は警備員不足に悩まされている。

昨年は「10月に延期」という情報も流れたが、結果として中止になった。これは必要数の警備員を確保する見通しが立たなかったためである。

この現象は、全国の大規模イベントに共通して横たわっているものだ。

神奈川県逗子市の逗子海岸花火大会は累計60回以上の開催を重ねたイベント。しかしながら今年は資金不足に悩まされた。逗子市観光協会が一般からの募金を呼びかけたほどだ。逗子市からの補助金がカットされたという要因もあるが、それと同時に年々増加する警備費が浮き彫りになってしまったのだ。

それでも逗子海岸花火大会は、今年も開催を実現させた。

宮城県加美町のかみ鳴瀬川大花火大会は32年前から行われていたイベントだが、今年は開催を断念する決定を下した。こちらも理由は「警備員の確保が難しいため」である。昨年は約3万人の見物客を集めた催しだったが、人手不足の波は地方の花火大会に暗雲をもたらしている。

高止まりする警備業の有効求人倍率

現在、警備業は「超売り手市場」である。

警備関連企業の有効求人倍率は7倍を優に超え、雇用者側から見れば「採用難」の状態が続いている。求人を出しても人が集まらない、ということだ。

さらに、来年2020年には東京五輪が控えている。

毎年7~8月に開催される首都圏の花火大会は、来年に限り5~6月に前倒しする等の措置が既に講じられている。だが、東京五輪に警備人員が割かれる影響は首都圏のみに留まらないはずだ。現に広島県廿日市市で開催される宮島水中花火大会は、来年の開催を取りやめる決定を下した。花火大会を催す上で、警備員の確保は怠ってはならない。その意識は2001年を境に全国の主催者に共有された。

この年、兵庫県明石市の歩道橋で花火大会に関連する群衆事故が発生した。殺到した見物客がドミノ倒しのようになり、大勢の死傷者が出てしまったのだ。これ以降、警備員の不足は許されざる要素となった。

以上の内容は、花火大会だけに留まるものではない。全国各地の伝統行事に直結する事柄で、東京五輪開催以降もこの問題は常に付きまとうだろう。警備業界の人材不足の問題は、解決の目途が立っていない状況だ。

郷土の風物詩に、大きな転機が訪れている。

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