全部読んだらあなたも忍者マスター。世界に誇るNINJAの秘術と謎

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目次


潜入し、情報を得て、追っ手をかわす・・・任務を果たすための数々の秘術とは

忍具の数々

次に、忍者はどんな術を使ったのか、具体的に見てみましょう。
さまざまな忍術の継承は、一族一党内の口伝(くでん)で行われ、鍛錬の中で覚えるものでした。しかし戦国の世が終わり、忍術の必要性がうすれ始めると、口伝での継承が困難になり、いくつかの伝書が記されることになります。代表的 なものが延宝4年(1676)に藤林保武(ふじばやしやすたけ)が著した『萬川集海(ばんせんしゅうかい)』と、同9年(1681)に藤林正武(まさたけ)が著した『正忍記(しょうにんき)』でした。

特に『萬川集海』22巻は忍術の集大成というべきもので、内容は6篇で構成されています。すなわち、「一、正心(忍者の倫理)、二、将知(指揮者の心得)、三、陽忍(謀略、 遠謀)、四、陰忍(潜入、奇襲)、五、天時(天文、地理)、六、忍器(登器、火器、水器、諸薬)」で、忍術の具体像を知ることができるものでした。これらの内容を踏まえながら、現在伝承されている術の中で、合理的と思われるものを以下、いくつか紹介します。

1 忍びを行うための基本道具6種

忍びを行うにはさまざまな道具が必要ですが、多くの物を持って行けばかさばり、重くなって身動きに支障が出ます。そこで持参するのは多用途に使える道具が基本となります。すなわち「編み笠、かぎ縄、石筆、薬、三尺手ぬぐい、打竹(うちたけ)」でした。

編み笠は顔を隠すことができ、かぎ縄は物や人を縛り、塀に登る際や堀、川を渡る際に使えます。石筆はろう石を棒状にしたもので筆記用具。薬は特に腹痛に効くもの。三尺手ぬぐいは縛ったり、顔を隠すこともできます。打竹は火を付けるもので、この6種が基本でした。

2 夜間潜入の服装と昼間の変装

夜間に潜入する場合、服装はドラマなどでおなじみの黒装束よりも、柿渋で染めた茶色や焦げ茶色、濃紺などの暗色で目立たない色を用いました。時に肌が露出する部分に墨を塗って、目立たなくしたといいます。黒衣は、月夜ではかえって目立つので避けたようです。

一方、昼間の変装では、時と場合によってさまざまな職業に化けました。基本的に他国者でも怪しまれない僧、虚無(こむ)僧、修験者、商人、芸能民などが適しているとされます。

3 長距離を走る際の「二重息吹(ふたえいぶき)」

長距離を走破する際の呼吸法で、「吸う・吐く・吐く・吸う・吐く・吸う・吸う・吐く」を繰り返します。大河ドラマの主人公・金栗四三(かなくりしそう)の「スッスッ、ハッハッ」に似ており、リズムを取ることで気がまぎれ、酸素吸入量の上がる呼吸法とされます。

4 塀を越える、塀をくぐる

塀を越える際、刀の下げ緒を足首に結び、刀を少し斜めにして塀に立てかけ、鍔(つば)を踏み台にして飛び上がり、塀の上部に飛びつきました。それができない場合は、周辺を回ってよく調べ、目立たない場所から塀の下の地面に穴を掘って、潜入します。これを「穴蜘蛛地蜘蛛(あなぐもじぐも)」と呼びました。蜘蛛が網を張る様子になぞらえています。

5 石垣登攀(とうはん)は登りにくい場所から

城などに潜入する場合、石垣は角(かど)の方が登りやすいですが、その分、見張りも厳重です。そこであえて登りにくい中央部を選んで、哨戒(しょうかい)の裏をかきました。五寸釘を登山のハーケンのように、足がかりにすることもあります。

6 潜入後の歩行法

潜入した屋敷の床下など、立って歩けない場所では、四つん這いで自在に歩く訓練を積んでいました。これを「犬走(いぬばしり)」といいます。また天井裏や、少しの音もたてられない場所では、四つん這いでつま先を立てて歩きます。これを「狐走(きつねばしり)」と呼びました。座敷に潜入する場合は、綿を厚く入れた皮の足袋(たび)を履いて音を消したといいます。さらに真っ暗闇の中では、腰をかがめ片足を前に出して探り、手で体重移動しつつ進みます。これを「差し足」といいました。

7 追っ手から身を隠す

屋内では、天井に張り付いて追っ手の目をくらませます。忍者は米俵を親指と人指し指の2本で持ち上げる鍛錬をしていました。自分の体重が米俵(約60kg)よりも軽ければ、片手でも天井に張り付くことができたといいます。

屋外では、木に登って隠れる「狸(たぬき)隠れ」、静止し袖などで顔を隠す「観音(かんのん)隠れ」、顔を隠してうずくまる「鶉(うずら)隠れ」があり、夜間であれば気配を消して追っ手をやり過ごすことができました。また火薬を用いて煙幕を張ったり、爆発を起こして敵の注意をそらし、その隙に逃げることを「煙遁(えんとん)」といい、忍者の得意技とされます。

煙遁

8 追っ手や敵を攻撃する

追っ手の進路に「まきびし」をまきます。ヒシの実を乾燥させた天然ビシをまくだけでも、素足やわらじ履きでは足の裏に突き刺さり、追手の足を止めることができました。また忍者の武器といえば、手裏剣(しゅりけん)鎖鎌(くさりがま)のイメージがありますが、実際には何者かを悟られるような武器を使うことは少なく、所持していても怪しまれない「五寸釘」を手裏剣の代用にしていました。敵が刀で襲ってくるような接近戦の場合、口に含んだ針を飛ばして相手の目を刺し、その隙に逃げる「ふくみ針」という術もあります。

一方、暗殺をねらう場合は、「笛の吹き矢」などを用いました。一見、ただの笛ですが、その内側に紙の筒を仕込み、ずらせば笛の穴がふさがって、吹き矢になるものです。毒矢を用いれば、暗殺に極めて有効でした。また意外な物では、らっきょうも武器になりました。毒をしみこませたらっきょうに数本の針を刺し、これを敵に投げつけます。「伊賀玉(いがだま)」と呼ばれました。

手裏剣、苦無(くない)とまきびし

9 情報を伝える

忍者同士で情報を伝う合う方法に、「五色米(ごしきまい)」があります。青・黄・赤・白・黒の五色のそれぞれの意味を決めておき、その色に塗った米を潜入先などに置くことで、情報交換をしました。また密書などの場合、紙を細長く切って棒に巻き付け、その上に文字を書きます。紙を棒から外すと何が書いてあるのか判読できませんが、伝達したい相手が、同じ太さの棒に紙を巻けば読み取れる、という方法でした。

10 精神を統一する

「九字護身法(くじごしんほう)」と呼ばれるもので、「臨兵闘者皆陣列在前(りんぴょうとうじゃかいじんれつざいぜん)」と呪文を唱え、指で九つの印を結びます。平常心を保つための精神統一法でした。しかし単なる自己暗示ではなく、身を守ってくれるという信仰に基づくものであったからこそ、忍者は強靭な意志を維持できたといわれます。

「人の知ることなくして巧者であること」を課せられたプロフェッショナル

さて、いかがでしたでしょうか。今や「Ninja」は世界共通語となり、映画やコミック、小説の世界で縦横無尽(じゅうおうむじん)に活躍していますが、実際の忍者は決して超人ではなく、陰から主君や雇い主を支える存在でした。また彼らが用いた秘術も、魔法のような不思議なものではなく、任務を遂行するうえで必要な、合理的な技術と工夫の賜物であり、それに日頃の鍛錬が加わることで効果を発揮するものだったでしょう。

彼らの任務は敵地に潜入し、必要なものを得て、持ち帰ること。生きて帰ってこなければ任務を果たしたことにならず、そのための術が磨かれました。しかし、命がけの任務をやり遂げても、彼らの名が歴史に残るケースはまずありません。「人の知ることなくして巧者であること」こそ、優れた忍びであると忍術書は説きます。寡黙なプロフェッショナル・・・それが忍びであり、その姿は、どこか現代人の胸を打つ部分があるように思います。

歴史の表舞台ではなく、裏の世界で生きた名もなき忍びたちですが、しかし、そんな彼らが歴史を動かした部分も間違いなくありました。人の世というものは決して表舞台だけで成り立つものではなく、その点は現代もなんら変わらないでしょう。そんなことを頭の片隅に置きながら改めて忍者を眺めると、何か新たに見えてくるものもあるかもしれません。

参考文献:山田雄司『忍者の歴史』 他

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