美しい日本の四季を女神たちが司る!『古今和歌集』『源氏物語』に記された四姫伝説

美しい日本の四季を女神たちが司る!『古今和歌集』『源氏物語』に記された四姫伝説

日本に俳句や茶道など豊かな感性による文化が存在するのは、古くから情緒を育む四季があるからといわれています。
その四季を司るのが、大和の姫君たちであったと伝えられています。春は佐保姫(さほひめ)、夏は筒姫(つつひめ)、秋は竜田姫(たつたひめ)、冬は宇津田姫(うつたひめ)が、それぞれの季節を司ってきました。
とはいっても、実在のお姫様がいたわけではなく、奈良の都を中心とした東西南北の山の神霊を姫君にたとえられたようです。
この伝説の四季を司る姫君たちは『古事記』や『日本書紀』には載っていませんが、『古今和歌集』や『源氏物語』に出てきます。

五行説に基づく四姫伝説

五行説とは、万物は「木・火・土・金・水」の五つの元素からなるという自然哲学の思想です。五行説では、四季も五つに分けられます。木は春、火は夏、金は秋、水は冬と分類し、季節の変わり目を土に配しました。土は土用のことであり、いわゆる「土用の丑の日」が知られています。しかし、本来は1年のうち立春や立夏など四立の直前約十八日間ずつの期間を意味します。
四姫伝説もこの五行説の思想から生まれたものです。

五行説について

「木」は季節は春、方位は東、色は青を表します。
「火」は季節は夏、方位は南、色は赤を表します。
「金」は季節は秋、方位は西、色は白を表します。
「水」は季節は冬、方位は北、色は黒を表します。
「土」は季節は土用、方位は中央、色は黄色を表します。

東西南北には四方を司る東の青龍(せいりゅう)、西の白虎(びゃっこ)、南の朱雀(すざく)、北の玄武(げんぶ)の霊獣が四季の姫たちを守りました。
そして中央には麒麟(きりん)が鎮座し、それぞれの季節の変わり目の導き役となりました。

四季の姫たちのそれぞれの役割

平城京を中心として北東に位置する佐保山の神霊が佐保姫、南西にあたる竜田山の神霊が竜田姫と呼ばれていました。


この両姫については多少なりとも文献が残っているものの、夏を司る筒姫と冬を司る宇津田姫については、言い伝えのみといっていいほど書いたものは残っていません。そのことから、愛でることができないほどの当時の夏の酷暑や冬の極寒が伺い知れます。

春を司る佐保姫

佐保姫は、佐保山の神霊として語られていますが、現在では佐保山は存在しません。場所としては、法華寺がある法華寺町付近になります。
佐保姫は春霞の衣をまとう若々しい女性と考えられ、繊細な染物や絹織物を得意とする姫君と伝えられています。奈良時代には、春風のことを佐保風(さほかぜ)といったようです。

夏を司る筒姫

筒姫の名前は、井筒から生じた名前と考えられています。
井筒とは井戸のことで、筒姫は水の恵みを司る神様といわれています。

秋を司る竜田姫

竜田姫は龍田山の神霊で、現在の奈良県生駒郡三郷町にある竜田神社に秋の女神として祀られています。
竜田姫は、「裁つ」姫に通ずることから裁縫の女神としても信仰されています。また竜田山を紅葉に染めるため、染色の女神とも呼ばれています。

冬を司る宇津田姫

宇津田姫は「打つ田」姫とも書き表すため、田を耕す農耕の女神とも冬を守る女神といわれています。
その他にも、宇津田姫は白姫とも黒姫とも呼ばれることがあり、水を司る夏の筒姫に対して土を司る冬の女神として伝わっています。

書物の中に見る四季の姫君

平安時代に紫式部によって書かれた『源氏物語』帚木(ははきぎ)巻の「雨の夜の品定め」では、染色の上手な姫君を竜田姫にたとえています。この風潮から、当時では染色や縫物が得意な女性は、魅力的な姫君とされていたことがわかります。
同じく平安時代の『古今和歌集』の在原業平(ありわらのなりひら)の作品に、次のような句があります。
「ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」
この句では、紅葉が竜田川の川面を絞り染めのごとく鮮やかに彩っている風景を詠んでいます。
また、奈良時代末期に成立したとみられる『万葉集』では、佐保に住んでいたとされる大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)の次のような句があります。
「うちのぼる 佐保の川原の 青柳は 今は春べと なりにけるかも」
この句に登場する佐保川のたもとには、大伴家一族の屋敷があったといわれています。

四季の姫君たちの性格やタイプ

春の佐保姫と秋の竜田姫については情報があるものの、夏の筒姫と冬の宇津田姫についてはよく分かっておりません。
歌碑などもなく、当時の人はドラマチックな春や秋には心惹かれるものがあったようですが、夏と冬に対してはそうでもなかったのでしょうか。
作者としては、夏の筒姫と冬の宇津田姫は、人々にとって一番身近な食物の女神だったのではと思うのです。何故なら、土や水は農民にとって必要不可欠なものであり、冬の間に宇田姫は土を耕し、春になると筒姫は雨ごいをして、五穀豊穣を願ったのではないかと思われます。

まとめ

四季を司る姫とは架空の人物で、背景は山岳信仰によるものと思われます。

当時の世の中は人間には感じらない超常的な存在が、自分たちの生活を支えていると信じられていました。そうした神々への畏敬が、現代に残る日本文化の礎になったと思うと、感慨深く感じられます。

美しい日本の四季を女神たちが司る!『古今和歌集』『源氏物語』に記された四姫伝説
この記事をSNSでシェアする
この記事をSNSでシェアする