Culture
2020.04.09

色白美男子やミュージシャン系が人気?未婚率の高い時代にモテた男性のタイプは?

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小学生のときのバレンタイン。クラスで一番チョコレートをもらっていたのは、サッカーが得意でおしゃべり上手な色白男子でした。大人になると、モテる条件も変わるのかな? と思いきや、テレビで特集される「モテる男性の条件ランキング」の上位は、小学生時代の条件と大して変わりませんでした(それに加えて収入がランクインしていました)。年齢によって「モテる」の条件が変わらないのならば、時代によって変化はあるのだろうか? 例えば、250年以上前の江戸(東京)はどうだったのか? さすがに少しは違うんだろうか? 気になって調査してみました。

未婚率の高かった江戸

内閣府による調査によると、日本の婚姻件数は、ベビーブーム世代が20代後半となる昭和45(1970)年〜昭和49(1974)年にかけてピークを迎えています(その数なんと100万組以上!)。しかし、以降は低下傾向となり、平成28(2016)年は、約62万組と、過去最低の数字を記録します。平成27(2015)年は、30~34歳の男性のおよそ2人に1人(47.1%)が未婚というデータも浮かび上がりました。

さて、事実婚やあえて独身を選択する人も多い現代ですが、それとは異なる事情で未婚率の高い時代が、かつての日本にありました。日本の歴史上、現代以上に未婚率の高い都市。それが、250年以上前の江戸(東京)です。その理由は、人口の男女比。江戸の都市は極端に男性が多く、女性が少なかったのです。享保6(1721)年、武家を除いた江戸の人口は約50万人ですが、その内訳は、男性約32万人に対し、女性はたったの約18万人。後期になると男女の人口比は解消されましたが、上流階級の男性が複数の女性を独占していたため、一般庶民は生涯独身の男性も少なくありませんでした。

モテる男性のタイプは?

男性にとってライバルがひしめく江戸の町。女性にモテるのはどんなタイプだったのか? さっそく見ていきましょう。

その1 色白美男子タイプ

色白美男子。現代で言うところの、綾野剛さんや吉沢亮さんのようなタイプでしょうか。なぜ江戸時代、色白美男子がモテたのか? 江戸時代は飛脚に大工、餅つき屋など肉体労働の仕事が多かったため、筋肉ムキムキの男性が町にあふれていました。そのため、肉体美にさほど感動がなかったのか、体育会系の男性よりも色白で儚げの男性がモテたそうです。

その2 ミュージシャンタイプ

学生時代バンドやっていたタイプとか、カラオケでさらっと洋楽歌っちゃうようなタイプはモテる。どうやらこれは江戸時代も同じだったようです。歌が上手い人や三味線などの楽器の演奏ができると一目置かれたんだとか。江戸時代の習いごとの定番は三味線だったので、現代で言うところのピアノの稽古と同じような感覚だったのかも?

その3 ものまね芸人タイプ

歌や楽器がダメなら芸で勝負! 女の子を笑わせるものまね芸人タイプの男性も人気が高かったようです。当時は、歌舞伎役者などのものまねをする男性たちがいました。

この他にも、手紙の文字がキレイな男性や服の着こなしが洒落ている男性がモテたんだとか。センスを磨くために、男性たちは「洒落本(現代でいうところの雑誌)」などを読んで、最先端のトレンドを学んでいたようです。あの手この手で女性をふりむかせようとする。努力の仕方まで、現代とそっくりではありませんか?

男女問わず人気の男性のタイプは?

さて、女性に人気のタイプが現代と同じなら、男女問わず人気の男性はどんなタイプでしょう? 江戸の町人たちが選んだ、誰もが惚れる「江戸の三男」によると以下の3つの職業が人気者だったようです。

職業1 火消しの頭(かしら)

命がけの消防活動のほか、町で起こるケンカや事件を丸くおさめる、火消しの仕事。その火消しの組織を束ねる頭は、体力や技能だけでなく、人望やリーダーシップが求められました。責任感溢れる頼れる存在は、時代を問わず人気のようです。

職業2 力士

心優しくて力持ち、大きな体に華美な着物。その姿は富の象徴でもありました。金持ちで遊びも豪快だから、男女ともに憧れの存在だったようです。

職業3 与力(よりき)

「与力」とは、町奉行の配下にいる役人のこと。役人と言っても、下町に住んでいて言葉も町人の言い回し。警察や司法、民政を掌握し、大衆のことをよく知る与力は、何かあったときに頼みになる存在でした。遊びにも精通した優雅な身分でありながら、町人にフレンドリーなポジションは、人気であることも納得です。

250年以上前から変わらない!?

女性にモテるタイプは「見た目」や「芸」がポイントで、男女問わず人気のタイプは「信頼感」や「親近感」がポイント。……ってあれ? 結局テレビで見る調査と変わらないような結果に……。皮肉なことに、男女人気問わず人気のタイプは、3職種とも収入に余裕があるところも現代と共通していました(いつの時代も、収入の余裕は心の余裕……)。250年以上前の感覚が現代とほぼ変わらないということは、250年以上前から実は「変化していない感覚」は、まだまだたくさんあるのかもしれません。遥か昔のように思いがちだけど、実はつい最近(?)な江戸時代の文化を今後も調査します。

参考:
内閣府「婚姻件数、婚姻率の推移」に関するデータ
杉浦日向子『一日江戸人』(新潮文庫)