まるで現代の混沌を予言!得体の知れないものと戦う今、読むべき漫画は「デビルマン」だ

まるで現代の混沌を予言!得体の知れないものと戦う今、読むべき漫画は「デビルマン」だ

漫画はときに未来を予言する。『ジョジョの奇妙な冒険』がアメリカ同時多発テロを、そして『AKIRA』が2020年東京オリンピックを予言していたという話は聞いたことがあるでしょうか。そして永井豪の不朽の名作『デビルマン』もまた、まさに今の世を言い当てているのです。
「あれ? デビルマンってそんな話だっけ」と思った人はテレビアニメ版のことを思い出しているのではないでしょうか。漫画版・デビルマンは、アニメの勧善懲悪とはまったく違うダークな作品。秩序の崩壊は決して過去やフィクションだけの世界ではない。得体の知れないウイルスと戦わなければならない今、デビルマンを通じて人間のあり方を見つめ直してみませんか。

テレビアニメ版は心優しい(?)デビルマンが悪魔から人間を守るヒーローもの

デビルマンを見たことがない人も、テーマソングとデビルマンのビジュアルはイメージできるのではないでしょうか。テレビアニメ版のデビルマンはブルーグリーンの肌、パンツを履き、背中に赤い翼、そして「デビルアロー」や「デビルビーム」などの必殺技を持っています。そもそも主人公の少年・不動明(ふどうあきら)がデビルマンになったのは、人間を滅ぼすために甦ったデーモン族(悪魔)のひとりに肉体を乗っ取られてしまったから。そのため憑依した当初は人類滅亡を目的としていましたが、不動明としてヒロインの牧村美樹やその家族と生活するうちに人間性に目覚め、あろうことか美樹に恋愛感情を抱いてしまいます。しかもそんな元同僚に業を煮やした悪魔が美樹に襲いかかると、デビルマンはこれをやっつけてしまいます。人類のために戦ってくれているのは嬉しいけど、こんなのが正義といえるのか? 否、悪魔をやっつけるのだからこれでいいのだ。大人の理屈で考えてはいけない。テレビアニメ版のデビルマンは、テーマソングを真芯でとらえた勧善懲悪のストーリーなのです。

漫画版はデビルマンが悪魔と人間との間でモヤッとするダークファンタジー

漫画版・デビルマンのビジュアルはテレビアニメ版とは対照的に、より地球上の生物に近いデザインになっています。上半身は肌色、下半身は濃い体毛に覆われ、猿などの二足歩行の霊長類っぽいビジュアル。また「デビル○○ー!」と必殺技を叫ぶことはなく、基本的には体術で悪魔を倒します。そして、見た目や設定以上に大きく違うのはそのストーリー。
ヒロインの美樹や牧村家、また悪魔に体を乗っ取られる設定は同じですが、明がデビルマンになるプロセスがまったく違います。漫画版では、アニメには登場しない飛鳥了(あすかりょう)という友人の導きによって明みずから悪魔に憑依されます。また単純に悪魔をやっつけるだけでなく、過去へタイムリープして、ナチスを組織する以前のアドルフ・ヒトラーに出会ったり、マリー・アントワネットの心を蝕む悪魔と戦ったり。漫画版・デビルマンは「人の中に巣食う悪魔」を形而下したやや難解な作品です。

現代版「魔女狩り」によって愛する人を奪われる

漫画版・デビルマンでは、物語が終盤に近づくにつれ悪魔が人間を襲う理由が明らかになっていきます。
デーモン族の主張では、はるか昔、神々との戦いに勝利し、次なる戦争に備えて地底の奥深くで眠りについていたところを、人類に地上を乗っ取られたというのです。つまり御名のもとに自分たちを虐げた神々から死守した大切な場所を、寝ている隙に現れた人間に荒らされ悪魔たちは怒っている、とこういうことです。そして飛鳥了が明をデビルマンに導いたのも、そんな悪魔たちの攻撃から友人、明を守るため。飛鳥の正体こそ大魔王サタンであり、人類滅亡を企てた黒幕というわけだったのです。
そして飛鳥は、人間の心の弱さも見抜いていました。悪魔に次々に憑依されていくことで、人間たちは「どこに悪魔がいるか分からない」と疑心暗鬼に駆られます。社会に対し不満を持っている人、協調性のない人、まわりから嫌われている人など、増大していく不安の中で、少しでもおかしな人をあぶり出し、狩り、殺害していきます。これは、人間の歴史の中で実際にあった「魔女狩り」とまったく同じ構図。そしてその矛先は、デビルマンである明と明と生活を共にしていた美樹や牧村家にも向けられます。悪魔の力を持つ明の前では人間など蟻も同然。しかし美樹や牧村家は違います。暴徒と化した群衆に無残に殺害された美樹の亡骸を抱き、デビルマンは人のために悪魔となって戦う意味を自問します。

デビルマンは繰り返される暴力の歴史に警鐘を鳴らしている

愛する人を失いながらも飛鳥との決着に戦う意味を見出すデビルマンでしたが、サタンの力の前についに屈するときがやってきます…。最終盤、サタン・飛鳥はデビルマンの亡骸にこう語りかけます。

自ら作り出しておきながら、異形だからと、醜いからと、私たちを消し去ろうとした神が許せなかった。そして長い戦いの末に私たちは勝った。
しかし、次の戦いに備え、眠りについているあいだに地上は新しい生物「人間」によって汚されてしまった。私は、命がけで守った地上を荒らした人間を滅ぼすことにした。だが、それは神が悪魔を消そうとした行為と同じことだったのだな。ゆるしてくれ、私がおろかだった

人間は、民族や思想、社会性、環境が違う相手に違和感を覚える生き物です。そして歴史上、それを大義や名目のもとに暴力で排除し続けてきたのです。そしてそれにより新しい暴力が生まれていく…。サタンの最後のセリフと漫画版・デビルマンは、そこに警鐘を鳴らしているのではないでしょうか。地震や台風などの自然災害や未知のウイルスの蔓延で人間性が問われる今、理性と秩序を失えばどうなるか、私たちはその答えを迫られているのかも知れません。

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