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Culture
2020.05.06

昭和初期の呼び名は「乳押さえ」だった!日本のブラジャーの歴史と進化

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時に優しく、時にきつく女性の胸を包み込むブラジャー。最近はキャミソールにカップが付いた機能性インナーも人気を集めていますが、多様な好みに合わせたデザイン、レースや刺繍があしらわれ細部にまでこだわった装飾性、秘めたるロマンはブラジャーには敵わないでしょう。

長い間着物を着てきた日本人が、ブラジャーを身に着けるようになったのは意外と最近のこと。ライフスタイルの変化とともに、ブラジャーも形を変えて女性に寄り添ってきました。

そんなブラジャーの歩みと、意外と知られていない雑学をご紹介します!

その歴史なんと5000年!?ブラの原型は紀元前から

ブラジャーの原型は、紀元前3000年頃にはあったと言われています。古代メソポタミアの壁画に下着を着用した女性が描かれており、当時のブラジャーは胸が垂れ下がらないように支えるベルト状のものだったと考えられています。

その後欧米では胸をあえて小さく見せる矯正下着や、寄せ上げて大きく見せるコルセット状のものなどの流行を経て、1914年にアメリカのメアリー・フェルブス・ジェイコブが「BRASSIERE」という名で特許を出願しました。これが今のブラジャーのはじまりです。

日本人とブラジャーのあゆみ

欧米で発展を続けたブラジャーは、日本ではどのような歴史を歩んできたのでしょうか?

明治時代:洋装文化が始まる

長らく和装文化だった日本にブラジャーは必要ありませんでした。今でも着物を着る際は、あえて胸を平らにみせる和装用ブラジャーを着用したり、タオルで体が寸胴になるよう補正したりします。着物は凹凸のない体形の方がきれいに着こなせるものとされているからです

日本で洋装文化が始まったのは、明治時代に入った頃。それとともに、欧米人のような凹凸のあるスタイルが魅力的とされるようになってきました。ただし、当時洋服は一部の上流階級の人々が着用するものでした。

明治時代を描いた錦絵。洋装をしているのは、人力車に乗った身分ある男性と、左端で写真を撮られている男性のみ
『錦絵貼り合わせ』国立国会図書館デジタルコレクション

昭和初期:まだまだ流行らない「乳押さえ」

昭和初期には「乳房バンド」「乳押さえ」などと呼ばれる下着が販売されました。しかし「乳押さえ」は胸を大きく見せるものではなく、すっきり見せるためのもの。戦前、まだまだ洋装は一般的ではなかったのです。

余談ですが、昭和初期生まれの私の祖母は、いつも洋装姿で写真に写っていました。かなり珍しいことだった(変人だった)そうです。

終戦後:欧米化とともに広まるブラジャー

終戦を迎えると、日本では一気に洋装化が進みます。当時クリスチャン・ディオールに代表されるパリ・モードの流行もあり、豊かなバストと細いウエストが強調されるフェミニンなスタイルが主流に。それとともにブラジャーも広く受け入れられていきます。

そんな中、和江商事株式会社(現在のワコール)が、最初にブラジャーを販売したのは1950(昭和25)年のこと。当時はS・M・Lの3サイズしかありませんでした。

日本のブラジャーは、まだ70年ほどの歴史しかないのです。この70年でブラジャーは日本人の体形に合わせて進化し、さらに日本人らしい繊細なデザインも施されるようになりました。

ブラジャーは時代を映す鏡

戦後一気に広まったブラジャーは、今の私たちになくてはならないもののひとつ。販売当初は女性らしいスタイルを作り上げ、男性を魅了するものとしての役割が強かったブラジャーですが、女性の社会進出とともに機能性・快適性も重視されるようになりました。また、寄せて上げる意味合いの強かったブラジャーが、近年ナチュラルさを重視する傾向にあります。

さらに、化粧品や洋服のように、ブラジャーも年代に合わせた多彩なスタイルが登場。胸のかたちを調整することで、体の「若見え」も可能になりました。

ブラジャーを見れば、その時代に何が起こっているのか、また何が重視されているのかを伺い知ることができるでしょう。

書いた人

大学で源氏物語を専攻していた。が、この話をしても「へーそうなんだ」以上の会話が生まれたことはないので、わざわざ誰かに話すことはない。学生時代は茶道や華道、歌舞伎などの日本文化を楽しんでいたものの、子育てに追われる今残ったのは小さな茶箱のみ。旅行によく出かけ、好きな場所は海辺のリゾート地。