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2021.07.24

家飲みが最強に美味くなる!岡山の酒屋店主「酒うらら」に聞く、夏の燗酒味変レシピ

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お燗にしておいしいお酒に出合うことなくして、お燗酒にハマることはない

というメッセージを掲げ、燗酒好きの人口を広げる活動を続けているわたくし。前回の投稿では、「(自称)日本一燗をつけるのが上手な酒屋」と豪語する岡山県西粟倉村にある酒屋「酒うらら」の店主に「おうちで燗酒」のゆるーいやり方を教えてもらいました。

これで和樂webの若い編集部員も燗酒好きになってくれるかと思いきや、反応はこちらの期待通りにはいかないもので。「燗酒は飲まないんですけど、出汁割だったらいくらでも飲めるんですぅ」(北本とま子)。

ええっと、それは「温かいお酒を外で飲むのは苦手(銘柄の注文とか、温度設定とかいろいろ含めて面倒)、でも、出汁の味のする燗酒ならそれ一択だから飲みやすい」ってことかしら?

「それもありますけど、もともとお酒が弱いので、、、。出汁で割ってあると度数が低くなるじゃないですかぁ」(再びとま子の発言)。

そういう人もいるから、前回「酒うらら」の店主に「割水燗(わりみずかん)」という「日本酒に水を加えて、燗をつける」方法までを教えてもらったのに、、、。割水燗で飲むと、体に優しくて酔っ払うこともないんですよ。

とアピールするも、世間の皆さまは同じ温かい酒なら出汁割のほうがグイグイ飲めちゃうということは、よくわかるんですけどね。

今さら聞けない人のために、「出汁割」ってなんですか?

「出汁割」とは、温めた日本酒にお出汁を注いだもの。どこに行けば飲めるか、といえばポピュラーなのは「おでん屋」さん。

おでんの出汁で燗酒を割って出してくれる店から人気に火がつき、今では日本酒バーなどでも「出汁を肴に呑む」ことはメニューのひとつになっている。

「酒うらら」に紹介された大阪・四ツ橋にある「日本酒BAR畠山」のある日のメニュー。「呑むお出汁」に惹かれて注文したら、ホント、肴になる出汁でした。

もともと日本人は和食を相手に酒を飲んできた歴史があるわけで、出汁と日本酒が合わないわけがない。しかも、酒場が提供する出汁は酒が進みやすいように塩も少し加えているので、そりゃぁうまいさ。アテと酒があらかじめセットになったようなものだし!

燗酒好きとしては、出汁で割ることが前提になっている場合、ベースの日本酒がないがしろなことがつまらない(安い居酒屋やおでん屋は純米酒ではなくアルコール添加の醸造酒を使う)。そこそこの酒でも、出汁の味が強ければなんとかなるものだ。

それに慣れてしまうと、日本酒そのものへの「おいしいな」というトキメキがないまま、、、というのではもったいない。だったら、普通に飲んでもおいしいお酒にちょっと味を加えて、日本酒のいいところを引っ張り上げて、よりおいしく飲むって発想がいいんじゃない?

ということで。

家にある日本酒で「出汁割よりも手軽で、出汁割よりも飲み飽きしない」燗酒レシピを考えてみた

ここで再び「酒うらら」の店主・道前理緒さんに登場してもらいましょう。1年で消費する酒量が2石(一升瓶にして200本)という酒豪のオンナ。燗酒界では知らない人はいない、辛辣にして確かな舌をもつ女店主で知られています。

取材したのは2021年の春。店を構える岡山県西粟倉村は深い山の中なので、店主は厚着です。

道前さんと考えた、日本酒の「ちょい味変」の方向性は3つ。「旨味を足す」「風味を足す」「酸味を足す」。この3つに必要な食材が「いりこ」「紅茶」「梅干」。

すべて「酒うらら」店主の道前さんの台所にあったもの。いりこは周防大島産の旨味たっぷりのいりこ。紅茶はダージリン。梅干は甘みのないもの。

さて、これがどんな味変になるのかな? さっそく実践してみましょう。

レシピ1。いりこを一匹投入して温めるだけ。日本酒の旨味が倍増!

出汁割が好きな人は、家で飲むならこれです。ものぐさな人でも、これならできるはず。

まず日本酒にいりこを一匹入れて、

湯煎で温める。ゆっくり温度を上げることで日本酒といりこの香りが開くので、ここはぜひとも湯煎でじっくりお燗をつけてみて。

いりこの香りがたったら、瓶を振って出汁を混ぜること。よく混ぜたほうがいいです。

「酒うらら」といえば、筆ペン書きのユニークな酒のレビューが名物。このレシピにもひと言添えてもらいました。

クーラーで冷えた身体にじんわりと温かい酒がいいなぁ。いりこが染みるわー。

忙しい人は朝、日本酒にいりこを投入しておく。夜に火にかければ、もう出汁が出てるからあっという間においしい出汁割ができますよ。

レシピ2。紅茶で割る。香りが紅茶で風味が日本酒という摩訶不思議な液体。酒に弱い人にもこれなら飲める!

「酒うらら」の奥の手が出ました。「ちょっと甘みが強いお酒だったり、うすらぼんやりした熟成酒を持て余したときに私がよくやる手なんです。家にそんな日本酒がなくても、大丈夫。梅酒と紅茶でもよく合います」と道前さん。

手順は1つだけ。ダージリンの茶葉で煮出した紅茶をお酒に注ぎ、

お酒の温度が紅茶に追いついて、香りがたってきたら飲みどきです。

これは新種のホットカクテルか? めっちゃおいしいんですけど!! 

また「紅茶割」のおいしさは、「燗冷(かんざ)まし」にも潜んでいることを発見。燗冷ましとは、一度温めたお酒の温度が下がったもののことで、温めたときとはまた違う香りや旨味の膨らみを感じたりする。これが燗酒を飲む楽しみでもあるのですが、紅茶割は風味が強くなる分、より後味が楽しめる!

このレシピにもひと言添えてもらいました。

ジャワティーとか午後ティーの気分で、夏に「紅茶割」の燗冷まし(の冷やしでもいいのかも。氷を入れると味が薄まるのでもったいない)、、、かなりいけますよ。

レシピ3。梅干に温かい酒を注ぐ。日本酒の酸味が増してお酒の味わいが引き立つ!

「どっしりした味わいの酒に特におすすめなんですが、梅干の酸味が加わることで、味わいがキュッと締まるといいますか。梅干がいい働きをするんですよ」と道前さん。

梅干は塩気のある、昔ながらのものがおすすめ。

よく考えたら、焼酎の梅干割があるんだから日本酒だっていけるんですね。梅干のもつ酸味と塩味をぶつけたら、こんなにおいしく変わるなんて! 冷たいものを食べ続けて疲れた胃が、ほわんと癒されて、酸味で覚醒する感じがたまりません。

レシピ4。裏レシピを考えついた! いりこと梅干を入れると最強に日本酒がうまくなる

試しているうちに気がついちゃいました。いりこ出汁がたっぷり染み出た日本酒を、梅干に注ぐと「おかず」みたいな味になるんです。

これ、おでん屋さんの出汁割に勝てる! だって、煮干と梅干といえば日本人のソウルフードじゃないですか。ストレートに出汁の味わいと酒のうまさが響きます。

野菜のゆで汁で割ってもおいしいよ。もっと自由に燗酒を飲んでみよう

いかがでしたか? 家で飲むものなんだから、もっと自由に、気楽にお燗をつけてみましょうよ。その後、道前さんから「アスパラガスをゆでた汁で割ってもおいしかった」と続報が入りました。青々しい豆の香りが楽しめるとか。野菜のゆで汁とは斜め上をいく発想!

わたしだったら、トウモロコシのゆで汁でやってみたいかも? ほんのり甘いゆで汁がいい塩梅になりそう。

最後に「味変」のベースとなる燗酒向きの酒を「酒うらら」のストックからおすすめいただきました。

左の鳥取「久米櫻酒造」の「芽依(めい)30BY無農薬無肥料米」は辛口の純米酒。「酒自体の味に主張がありすぎず、穏やかな味わいなのでこういった「味変」にもうまく調和してくれるお酒です」(道前さん)。

私も「芽依」はここ数年、毎年飲んでいるお酒です。夏場はちょっと冷やしてもおいしい。燗酒にしても、常温でも、少し温度を下げても飲めるお酒ってそうはないので、おすすめです。

右に見えるは島根「玉櫻酒造」の「玉櫻(たまざくら) 長期常温熟成酒」は平成15年に仕込んだものなので、15年以上熟成されたもの。「熟成酒ならではの香りがありるけれど、ボディは軽め。吟醸酒なので甘みも少ない。こういった特殊なお酒は、普通に飲むより私はカクテルベース的に使うのがいいと思うんです。アルコール度数は18度あるので、割った方が美味しく飲めます」(道前さん)。

この熟成吟醸酒の「玉櫻」は、わたしのような生酛造りの「玉櫻」ファンにはちょっと驚く味ですが、今回のレシピの中では紅茶割がベスト。道前さんの最近の発見は「緑茶割もよし」だそう。中華料理や煮込み、スパイス料理など味がしっかりした料理の食中酒にぜひどうぞ。

夏だけど燗酒? と言うなかれ。こんな時季こそ、燗酒で心も身体もゆるめましょう。冷えた身体にじゅわーっと温かいお酒が染み込みます。

家で飲む時間が多い今こそ、いろいろ試すにもいい機会。燗酒でこんな飲み方もおいしかったよ、という発見があればご一報ください。

酒うらら
記事に登場する「久米櫻酒造」や「玉櫻酒造」など、お気軽に問い合わせください。全国発送可能。

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書いた人

職人の手から生まれるもの、創意工夫を追いかけて日本を旅する。雑誌和樂ではfoodと風土にまつわる取材が多い。和樂Webでは街のあちこちでとびきり腕のいい職人に出会える京都と日本酒を中心に寄稿。夏でも燗酒派。お燗酒の追究は飽きることがなく、自主練が続く。著書に「Aritsugu 京都・有次の庖丁案内」があり、「青山ふーみんの和食材でつくる絶品台湾料理」では構成を担当(共に小学館)。