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2021.08.23

「ワインの神様」も絶賛!ブルゴーニュでワイン作りに挑む日本人・仲田晃司氏インタビュー

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世界的にも有名なワインの産地ブルゴーニュ地方で、2003年にワイナリー「メゾン・ルー・ドゥモン(Maison Lou Dumont)」を立ち上げ、20年近くワイン造りを続けてきた仲田晃司(なかだ こうじ)さん。取材はお断り、という噂も聞いていたので、さぞや厳しい方なのではないかと、ドキドキしながら取材のお願いをしました。実際にお会いしてみると、その物腰の柔らかいこと。異国の地で挑戦を続けていると、だんだんと険しくなってしまいそうなところ、柔和で謙虚な人柄がとても印象的でした。

受ける取材はワイン雑誌を中心に、テレビはお断り。なぜかと尋ねると、「たくさん人に見られるのが恥ずかしかったので…」と、これまたイメージとは異なる理由でした。2年前に、NHKのテレビ番組「プロフェッショナル」に出演された際は「お子さんのために何かを残しませんか?」という担当者の方の一言で引き受けることにした、家族思いのお父さんです。

なんてチャーミングなパパ!造り手の人柄を知ると、ワインがより一層美味しく感じますよね。


フランスでも人気のワイン漫画「神の雫」にも登場され、スタジオジブリとのコラボなど、あらゆる方面から注目されています。

鈴木Pが書き上げた文字に、ラベル右隅の落款は宮崎駿監督によるデザイン

長い歴史をくむブルゴーニュでの挑戦

ブルゴーニュはボルドーに並んで、世界で最も有名なワイン産地のひとつ。何百年というワイン造りの歴史があり、家族代々で続けている人が9割です。その中でも仲田さんが生産拠点としているジュヴレ・シャンベルタンは、ナポレオンが愛したワインの生産地を有する伝統的な村です。近くには、世界一高いワインが生まれるロマネ・コンティの畑もあります。そんなブルゴーニュワインの王道の世界で、日本人としてどのように闘ってこられたのでしょうか。

仲田:まず重要なことは、ものすごい歴史があるブルゴーニュで、歴史がない自分たちが参入するとき、他の人より何か秀でていないといけないのです。特にここは保守的な村なので、自分たちの今持っているものを守っていく、というのが基本姿勢です。私達は村の中では、いつも新しいことをやっている人、という認識の珍しい存在ですね。自分たちでできることは全てしようと考え、機会があればどんどん試しています。

–日本人がここで闘う強みは何でしょうか?

仲田:他の人とのコンペティションがないことです。ブルゴーニュには4200軒の「ドメーヌ」と呼ばれる自家栽培から醸造、瓶詰めまで行う人たちがいて、800軒の「ネゴシアン」というブドウを買い付けてワインを造る人たちがいます。合わせて5000軒のワイン生産者です。その中で、長い歴史を持つ彼らと自分たちは比較はできないし、逆に自分たちには商売敵もいません。唯一の存在だからこそ、共存ができると考えています。実際、ワインを取り扱ってもらうときも、競合のワインから置き換えられたというよりも、別枠で置いてもらえるのが強みですね。

ワインの神様の懐に飛び込む

–今は亡き、ブルゴーニュの神様といわれたワインの造り手、アンリ・ジャイエ氏が、仲田さんのワインを絶賛したというお話を耳にしますが、どういう交流がありましたか?

仲田:ワイン造りを教えてもらったとか、門下生とかではないんです。自分たちが疑問に思ったことを直接聞きに行ったり、自宅でパーティをしたときに遊びに来てもらったり、日常的なコミュニケーションですね。単純に「どうやったら売れるんですか?」という質問などもしたことがあります。今でも、ジャイエ氏の甥のエマニュエル・ルジェ氏とは、夕食前に軽くつまみながら飲むアペリティフをしたり、仲良くしています。

–ブルゴーニュの第一人者と仲良くなれるって、すごいですね。

ブルゴーニュでも、知り合いになりたいと思っている人は多いと思うんです。でも、プライドとかが邪魔をする。変な質問したらおかしいかな、とか、もう知ってるから聞かなくてもいいや、とか。あとは、世襲が多いので親からの情報が正しい、という感覚もありますね。どんな人でも「すみません、教えて下さい」というと、なんでも教えてくれるものですよ。一歩踏み出せるかどうかだと思います。人の懐に入れれば、自分も賢くなれますし。フランス人は結構教えたがりなんですよ(笑)

ブルゴーニュでワイン畑を買うということ

–設備を増設されているようですが、ワインの生産量を増やしていくということでしょうか?

仲田:今年になって、いろいろな区画の畑を入手することができました。今、ワインの熟成庫であるカーブは380平米ありますが、それらの畑で取れたブドウを全部醸造してしまうと場所が足りなくなってしまうので、新たに設備投資をしています。現在の生産量は年間7万5千本ですが、そのうち1万本ぐらいが自社畑のブドウで出来たワインです。ブドウを買い付けて造るネゴシアンワインが8割、自社畑で造るドメーヌワインが2割です。今後、自社畑の比率を上げるため、畑の購入を進めています。2021年の末には、6ヘクタールの畑を所有することになります。だいたい1ヘクタールあたり、年間6000本造れるので、将来的には4万本が自社畑の生産になりますね。

–なぜ自社畑を増やしたいのでしょうか?

仲田:長期的にみて、自分たちのブドウを確実に入手できるようにです。気候の影響などで、年によって販売されているぶどうは増減しますが、今後、更なる気候変動により、安定的に買うことが難しくなってくると考えています。買い付けたブドウに頼っていると、将来、ワインが造れなくなる可能性があるので、常に一定量は確保できるように、自社畑の比率を増やしています。また、自分たちの研究のためにも自社畑は有効ですね。

ちなみに、自社畑の方が品質が良いというイメージがあるかと思いますが、買付ブドウであっても、質が劣るわけではありません。自分たちのパートナーとは20年間取引を続けてきて、品質への信頼もあります。

–伝統的な地で、外国人がブドウ畑を買うのは難しそうですね。

仲田:ブドウ畑の売買は、通常の不動産売買とは異なり、国の専門不動産業者が仕切ります。購入希望者の優先順位が4段階あります。まずは隣り合う土地に既に畑を持っている人、次に40歳以下の若手、そして既にワイン造りの実績がある人、最後に一般の方です。このようにして、外から人が入れないように調整しているのです。ただ、巨大資本がワイナリーごと買うことは避けられないのですが。

ブルゴーニュのテロワールで生まれる「天地人」

–「天地人」という名前の由来は何でしょうか?

ブルゴーニュで一番重要な言葉が「テロワール」。ブルゴーニュという「テロワール」だから素晴らしいワインができるという考え方で、日本語にすると「天と地と人」という意味になります。天候、土壌、造る人によって、ワインの味わいが変わるものなのです。それらの影響を受けることを「テロワールが違うから」という言い方をしますが、自分たちにとっても重要な言葉ですね。特にブルゴーニュのワインは、味の調整はせずにその年のぶどうの味を活かします。

このオレンジのラベルの筆文字は従兄が書いてくれたもので、ずっと使っています。フランスのソムリエの方は、日本人が造っていると説明しやすいといいます。「天地人」は自分たちのアイデンティティですね。

–他にもラベルの種類がいくつかあるようですが、違いは何ですか?

「天地人」のオレンジラベルは買付ブドウで造られていて、夫婦ふたりの名前「Koji Jae Hwa」の白ラベルは自社畑のブドウで造られたものです。また、ワイナリーの名前「Lou Dumont」の由来は、私達夫婦が後見人をしている女の子がいるのですが、その子の名前がルーちゃんといいます。そこに、山に囲まれて育ったという私たち夫婦の共通点から「du mont(山の)」を組み合わせました。ルーちゃんは、ワイナリーと一緒に大きくなりました。

日本人らしいワインの味

ワインの味わいも日本人らしいといわれているそう。良いバランスが取れている味わいのあるワインなので、飲んでいて飽きないという評価です。濃いワインは美味しいけれど、たくさんは飲めないもの。飽きさせず、何杯でも飲める絶妙なバランスが人気の秘訣です。

シャンパンへと更なる挑戦

–更にシャンパーニュ地方でのシャンパン造りを始められたそうですね。

仲田:日本人として初めて、シャンパーニュに畑を所有し、自分たちでシャンパンを造りはじめました。ブルゴーニュのこの村で、シャンパーニュにも畑を持っている人はたぶん私だけで、フランス人でもこの2箇所に畑を持つのはとても珍しいことです。投資目的やステイタスで畑を購入し、誰かに貸しているというケースは多いのですが。所有している畑でブドウをつくり、ワインにするのが、自分たちにとっては嬉しいことですね。

シャンパーニュは、25年前に研修した思い出の地でもあり、その地で造るということが夢でした。今までは友達がつくったブドウを使って、私が醸造していましたが、今度は自分たちの畑でブドウをつくって、自分たちのシャンパンを造りたいのです。人間、欲っていうものは無限にあるんですよね。何かを達成すると更に先に行きたいと思う。それの繰り返しです。

フランス生活体験ができる併設の宿泊施設も!

–3家族がゆったり泊まれる、とても素敵な宿泊施設ですね。特に、バーカウンターが付いたキッチンが立派! 温水プールやバーベキューセットまで!

仲田:ブルゴーニュに来て、ここに泊まって頂くメリットはふたつあります。ワイナリーのカーブで雰囲気を味わいながら試飲をしてもらえること、そしてフランスの文化に触れ合えることです。例えば、向かいのマルシェで買い物をして、自分たちで料理をつくって、ワインを飲んで、というように、フランスでちょっとした生活をする体験をして欲しいですね。ホテルだと制限されがちですが、ここには大勢で来て、楽しんで頂きたい。出張シェフを呼んで料理も頼めます。

コロナ禍もアイディアを広げる機会に

–せっかく宿泊施設を建てたところでのコロナ禍だったそうですが、どのように過ごされていましたか?

仲田:コロナ禍でお客さんが来られなくなったので、考える時間がとても増えました。今まで有機栽培を実践してきましたが、もっと品質を追求していこうと、更に厳しい条件のビオディナミ栽培というものを、今年から始めました。この先は、環境保護を念頭に再生した水を使ったり、Co2削減を意識し、自分たちで電気も太陽光発電で進めていけないかと検討しています。

次々と新しいことへの挑戦を続ける仲田さん。コロナが終息したらぜひ行きたい、フランスの訪問地です!

施設名:メゾン・ルー・ドゥモン (Maison Lou Dumont)
住所:32 Rue Mal de Lattre de Tassigny, 21220 Gevrey-Chambertin
公式webサイト:http://www.loudumont.com/

異国の地でチャレンジし続ける姿勢、私も見習いたいです!ワイン造りについてもっと知りたくなりました。

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白ワイン ルー・デュモン 天地人 フレンズ(スタジオジブリ) 750ml 1本 LOU DUMONT ブルゴーニュ

書いた人

フランスで日本人の夫と共に企業デザイナーとして働きながら、パリ生まれだけど純日本人の娘を子育てしています。 本当は日本にいるんじゃないかと疑われるぐらい、日本のワイドショーネタをつかむのが速いです。 日々の仏蘭西生活研究ネタはコチラ https://note.com/uemma

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平成元年生まれ。コピーライターとして10年勤めるも、ひょんなことからイスラエル在住に。好物の茗荷と長ネギが食べられずに悶絶する日々を送っています。好きなものは妖怪と盆踊りと飲酒。

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