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2019.10.28

サワー?ブレット?尖ったビールが集結した北竜湖のビールイベント「SSBB 2019」

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温泉とビール。

なんとも魅力的な組み合わせです。温泉に入った後に、ビールで喉を潤すのはまさに至福。そんな至福の瞬間を味わえるビールイベント「SSBB 2019」が、2019年10月5日(土)、6日(日)に野沢温泉近くの北竜湖で行われていたので、参加してきました。

おもしろいのは、提供されているビールがすべて「尖った」ビールばかりだということ。一般的にイメージされる、大手ビールメーカーのようなビールはありません。酸っぱいビール、樽で熟成されたアルコール度数10%超のビール、野生酵母で醸造したビール……と個性的なビールばかり。

そんなビールが集まる「SSBB」はどんなイベントだったのか、レポートします。

意外とインターナショナルな温泉街、野沢温泉

「SSBB」会場の北竜湖は、野沢温泉からイベント専用のシャトルバスで約30分。会場までアクセスするには、まず野沢温泉に行く必要があります。

東京駅から北陸新幹線で約2時間。飯山駅で下車し、そこからさらにバスに乗って約30分で野沢温泉に到着。

その野沢温泉のシンボルともいえるのが、この大湯です。

野沢温泉には13の外湯があり、外湯めぐりは野沢温泉の魅力のひとつ。周辺住民が「湯仲間」という制度を作ってそれぞれの外湯を管理しており、無料で入ることができます。

外湯は観光客のために造られたものではなく、もともと地域住民の共同浴場。外湯めぐりをしてみると、野沢温泉の文化は温泉を中心として育まれてきたことがよくわかります。

また、野沢温泉といえばスキーを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。スノーシーズンになると国内外から多くのスキーヤー、スノーボーダーが訪れています。最近はスノーシーズンの外国人観光客も増加傾向。野沢温泉スキー場の利用者の約25%が外国人だそうです。

しかし、観光客はどうしても11月から3月の冬場に集中。それ以外のシーズンでも観光客を誘致したい、というのが自治体や地域住民の願いのようです。

そこで、野沢温泉のシンボル・大湯の向かいにあるビアバー「里武士」(Anglo Japanese Brewing Company)のオーナー、トーマス・リヴシーさんと絵美子さん夫妻が中心となって開催したのが、「SSBB」というビールイベントなのです。

「尖った」ビールとはいったい何なのか

正直に言って、アクセスがいいとは言えない北竜湖で、しかも「尖った」ビールばかりを集めたビールイベントに、どれくらい人が集まるのだろうか、と思いました。

ですが、会場に着いてみるとなかなかのにぎわい。専用のシャトルバスもラッシュ時のような状態で、どんどん参加者が集まってきます。このイベントは今年が2年目ですが、昨年の倍くらいの来場者数になったそうです。

しかし、外国人客の割合の多いこと。参加している醸造所も日本より海外が多く、中国・台湾・香港の醸造所もありました。

さて、この「SSBB」というイベント名ですが、セゾン(Saison)、サワー(Sour)、バレル(Barrel)、ブレット(Brett)の頭文字をとったもの。なんのことやら、と思われるかもしれませんが、これらはビールの種類や造り方を表した言葉です。

セゾン(Saison)

ベルギー南部で伝統的に飲まれてきたビールのスタイル。夏の農作業中の水分補給として造られたもので、味わいとしてはホップの苦味があり、やや酸味も感じられるものが多くあります。

サワー(Sour)

サワーという文字通りの酸味が強いビールの総称。フルーティーさも感じられるものから、どっしりとしたボディで赤ワインを思わせるビールまでさまざま。

バレル(Barrel)

樽で熟成させたビール。ワインやウイスキーなどの樽にビールを入れて熟成させることで、樽のフレーバーをビールに付けることができます。アルコール度数も高めでしっかりとした味わい。

ブレット(Brett)

ブレットとはブレタノマイセスという酵母のこと。簡単に言うと、ブレタノマイセスのような野生酵母を使って独特の酸味を加えたり、ドライな後味にしたりしたビール。

 

これらのビールからは、醸造所に棲む菌やその地域のテロワールを感じることができます。世界的には非常に注目されていますが、日本ではこれらのビールを知る機会があまりありません。

そこで、これらのビールの魅力を知ってもらいたいと企画されたのがこの「SSBB」なのです。

世界中の多様な味わいのビールが集結!

1杯目は主催者の里武士と茅ヶ崎のBarbaricWorksのコラボレーションビール「Name TBD」。レッドラズベリーを使ったサワービールで、見た目も鮮やか。晴れて気温も上がってきたので、ほんのりラズベリー感と酸味が非常に心地よく感じました。

 

2杯目は台湾の醸造所臺虎精釀(Taihu Brewing)の「Old Fashioned」。乳酸菌発酵による酸味が特徴のベルリナー・ヴァイセというスタイルのビールを樽で寝かせたものです。一般的なビールに比べるとかなり酸っぱいレモンを思わせる味わいですが、どこか丸みのある酸味で、ついつい進んでしまいます。

ジョッキに満たされたビールを勢いよくゴクゴク……というのもいいのですが、こういったビールで喉を湿らせるのもまたよし。とてもさわやかな気分になれます。

 

3杯目は京都醸造とアメリカのHeretic Brewingがコラボした「異端者の逆襲」。京都醸造のクリスさんに直接注いでもらいました。こちらは2杯目までとは違い、アルコール度数11%のものすごくどっしりしたビール。ですが、甘味も酸味も高いレベルでバランスが取れていました。

 

4杯目は中国の大跃啤酒(Great Leap Brewing)とアメリカのJackie O’s Breweryのコラボ「Distant Corners」。副原料に米、花椒、黒烏龍茶を使用して、オーク樽で寝かせたビールです。酸味をベースに、副原料それぞれのフレーバーがほのかに感じられて楽しい味わいでした。

 

こうやってビールを飲んでいるうちに他の参加者とも仲良くなり、ビールをシェアしていろいろなビールを味わうことに。すると、紹介した4種類だけでなく、飲んでいるビールそれぞれがまったく異なる味わいだということに気づきます。

その多様性がビールの魅力のひとつなのではないでしょうか。また、コラボレーションビールも多く、各醸造所がコラボすることによって、新しい味わいや考えが生まれ、どんどんその多様性が広がっていくように思わされます。

野沢温泉でビールを楽しむ方法

では、「SSBB」に参加できなかった方々のために、野沢温泉でのビールの楽しみ方をひとつお伝えしておきましょう。

温泉街の酒屋や土産物屋には、地元のビールがいくつか売られています。そのうちの黒い色のビールを選んでください(写真は里武士の「黒」)。これと温泉まんじゅうの組み合わせが絶品(温泉まんじゅうは1個単位で購入できます)。

黒ビールは焙煎した麦芽を使っていて、そのロースト感が甘いものとよく合うのです。ぜひ一度試してみてください。

最後に、温泉&ビールを楽しむときの注意点をいくつか挙げておきます。

世界中から「尖った」ビールと、ビール好きが集結した野沢温泉。この「SSBB」が来年また開催されることを期待しつつ、野沢温泉を後にしました(残念ながら日帰り……)。

書いた人

主にビールについて執筆しているライター。編集プロダクション・出版社勤務、中国四川省留学、英字新聞社ジャパンタイムズ勤務など、一貫性のないキャリアを経て、現在は「地域とビール」をテーマに活動中。日本ビアジャーナリスト協会主催のビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』など。