Culture

世界遺産「和食」を支える日本食文化とは?

残したいニッポンの食文化遺産

日本の醬油や味噌が世界で使われ、生鮮食材の完璧さも知られる時代ですが、普段なにげなく食べているものが、突然手に入らなくなる可能性もあります。食べることが食べものを支える唯一の方法。私たちの毎日の選択が問われています。

日本の食文化『ごはん』

ごはん、めし、という言葉は、炊いた米そのものを表すのと同時に、食事のことも指します。朝昼晩に「ごはん」「めし」をつければ、三食の名前になることからも、ごはんが食事の中心だった日本の食生活が浮かび上がってきます。

現在の日本人ひとり当たり1年間の米の消費量は約60㎏。50年前に比べるとおよそ半分です。米が国民に十分に行きわたるとまもなく、米の消費量が落ちていったという皮肉な歴史があります。1世帯当たりのパンの購入金額のほうが、米の購入金額より多くなったこのごろですが、「ごはんは食事の中心、主食である」という考え方こそが、家庭料理のかたちを支えています。

気候の温暖化で米の産地にも変化が表れています。北海道の米が食味のコンクールで受賞することが増え、収穫量でも全国で1、2位を争うようになりました。寒冷地で虫害が少なく、減農薬なのも人気です。

ごはんがある食卓には、安心感があります。温かいごはんを大切にしたいものです。
土鍋で炊くと、簡単にふっくらしたごはんができる。料理研究家の久保香菜子さんは、精米したての米を使う。米を研いで、30分から1時間水に漬けておき、土鍋に入れて中火にかける。沸騰したら弱火にして15分炊き、火を止めて10分蒸らす。そして全体をさっくりとほぐしおひつに移せば、さらにおいしく。

日本の食文化『ぬか漬け』

塩や醬油、酢などの調味料に漬ける方法から、発酵させて保存する方法まで、日本は漬けものの宝庫。乳酸発酵したぬか床に野菜を漬けるぬか漬けは、かつて家庭に必ずありました。野菜は水分が出てしんなりし、独特の風味に。ぬか床の乳酸菌や酵母が、野菜の糖分やアミノ酸を分解して、香り、酸味、うまみをつくりだします。

現在のかたちのぬか漬けができたのは、江戸時代初期といわれます。そのころには農業の技術が上がって、米を消費できるようになりました。ぬかも大量に出るようになり、これを使ってぬか漬けが生まれました。

全国にはさまざまなぬか漬けがあります。たとえば、日野菜という赤蕪のぬか漬けは、近江日野の領主だった戦国武将・蒲生貞秀が次々に転封された場所に広まって行き、松坂、会津若松、子孫の蒲生忠知の領地・松山にまで広まりました。

日本の食卓にいつもあったぬか漬け。ぬか床まで売られる時代でも、うちのぬか漬けが、やはりいちばんおいしいはずです。
「ぬか漬けは胡瓜、茄子に勝るものはないと思います」と料理研究家の久保香菜子さん。夏は茗荷、ズッキーニなどもおいしい。ぬか漬けの適温は20℃~25℃なので、真夏は冷蔵庫やワイン庫に入れる。酸膜酵母の白い膜が張っても、混ぜ込めばよい。

日本の食文化『鍋を囲む』

江戸後期に七輪や火鉢を座敷に持ち込んで食べる鍋が生まれて以来、鍋を囲んで一緒に食べることが人を結びつけています。各地の名産を生かした多様な鍋料理があり、水炊きひとつとっても、その家ならではの流儀があるのも鍋の面白さ。そんな鍋料理が盛んになったのは、明治時代にすき焼きがはやってからとか。

そのころの雰囲気を今も味わえるのが京都・寺町の「三嶋亭」。明治6(1873)年の創業で、日本のすき焼き店の草分けです。

ここは白砂糖と甘みのない割下で味をつける独得のすき焼きです。鍋に砂糖をまいて、それがカラメル状になりかけたら肉を入れます。肉を両面焼いたら割下をかけ回し、とき卵につけて食べます。そのあと九条葱、玉葱、糸こんにゃく、麩を入れて肉のうまみを移します。

「脂の融点が低く、肉がきめ細かくて色のよいものを選んで、1か月熟成しています。おのずと愛情をもって育てている農家の牛になりますね」と主人の三嶋太郎さん。

初め肉を焼く関西と、割下で煮る関東の違いはありますが、日本人が文明開化を舌で感じたすき焼きは、今も鍋の横綱です。
八角形の電熱器の上に八角形の鉄鍋を載せるのが特徴の三嶋亭。仲居さんが取り分けてくれたお肉を頰張るときの感動といったら!

三嶋亭(みしまてい)

住所/京都府京都市中京区寺町通三条下る桜之町405 地図
TEL/075-221-0003

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-2013年和樂8・9月号より-

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