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2017.09.04

クリムトの美を抹茶碗に。妖艶、甘美、絢爛の5つの名作が誕生!

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クリムトの美をモチーフにした抹茶碗をつくりたい!そんな構想が、編集部でスタートしてから約3か月…ついに完成しました!
優美かつ華麗な絵柄のイメージソースは、『接吻(せっぷん)』『ダナエ』『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像』など、クリムトの代表的名画。また、装飾と同じくらい大切にしたのが茶碗のフォルム。クリムトの絵を思わせる流麗な丸みも、手にしたときの心地よい感触も、会心の出来ばえです。完成作品は全5点。それぞれにふさわしい銘も付けました。

京都の陶芸家が手がけたジャポニスム碗!

京都の陶芸家、川尻潤さんの工房「清水焼禎山窯」で。京都の陶芸家、川尻潤さんの工房『清水焼禎山窯』で。江戸時代から続く陶芸家に生まれ、東京藝術大学でデザインを専攻。西洋美術から琳派まで学んだのち、美術家・陶芸家として独自の美学を表現している。

琳派からクリムト、そしてKYOTOへ

日本の浮世絵や琳派に影響を受け、金箔や金の絵具を使って絢爛かつ妖艶な作品を描いた19世紀末の画家クリムト。その豊かな装飾性を抹茶碗にうつしたらどうなるだろう? そんな考えから始まったのが、『ジャポニスム碗』プロジェクトです。

デザインから制作までを一貫して手がけたのは、京都の陶芸家・川尻潤(かわじりじゅん)さん。実家は4代続く清水焼(きよみずやき)の窯元で、先祖は九谷焼(くたにやき)の前田藩御用窯(まえだはんごようがま)。子どものころから華やかな陶器や磁器を目にしていたそうです。ご自身も、東京藝術大学で西洋美術を学び、「尾形光琳・乾山や野々村仁清など、西洋絵画に引けをとらない芸術性をもつ琳派の作風に憧れました」というプロフィールの持ち主。クリムトと同じルーツで日本美術にのめり込んだというわけです。

「クリムト作品の背景や衣装の模様には、光琳独特の水流紋(すいりゅうもん)や渦巻き(うずまき)、蔦(つた)の紋様が見受けられますし、構図にも琳派の影響が感じられます。そんなモチーフで抹茶碗をつくったら面白いかもしれませんね」

絵付けのイメージを固めるためにラプスケッチを書くのが川尻さん流。秘密のスケッチをちょっとのぞき見!絵付けのイメージを固めるためにラフスケッチを描くのが川尻さん流。『粗―密』『暖色―寒色』『丸み―角?』などアイディアのメモ描きも。

さて、そんな川尻さんが試作の第1弾をつくったのが今年5月。手びねりによる茶碗の焼き上がりを見て、「装飾も大切ですが、まずは抹茶碗として使いやすい形にすることが大前提。そう思って成形しましたが、少しフォルムが硬かった。クリムトといえば妖艶でエロティックな女性の絵。そのエロス成分が足りなかった…」と苦笑い。

いっぽうで発見もありました。釉薬がかからないようマスキングを施したはずが失敗して、意図しない形に釉が流れてしまったのだとか。「ただ、その偶然に生まれた釉薬の流れが面白かった。これは次に生かせると思いました」

その後、さらに2度の試作を経て完成したのが5種類の抹茶碗です。「クリムトが好んで使った渦巻き模様や『立涌(たてわく)』という意匠、流れるような髪の毛の描き方などを取り入れてみました。もちろん、それらの背景にある琳派の影響も意識して」

また版画などに用いられる雲母(うんも)に本金(ほんきん)を混ぜた絵具を使ったり、全体のフォルムや口縁(こうえん)のラインをより流麗にしたり。優美な装飾はもちろんですが、手にとったときの艶っぽい丸みがなんとも魅惑的で、まさに“クリムト茶碗”といった風格です。

「試作で偶然に生じた『無為(むい)の美』に気づけたのも大きかった。ガチガチに固めた柄ではなく、手から自然に生まれる曲線の面白さを取り入れたんです。考えてみれば、偶然や無為を味わうことは東洋の伝統的な美意識。琳派から影響を受けたクリムトのモチーフを抹茶碗にうつす、つまり『琳派を逆輸入』することで、あらためて東洋の美や、日本美術の奥深さを感じることができました」

試作から完成まで約2か月半!

s_試作から完成まで 1-2画像左/手にとったときの豊かな丸みを大切にしたい…と試行錯誤中の川尻さん。画像右/手びねりで成形した茶碗に釉薬(ゆうやく)をかけて高温焼成。その後、色絵具や金絵具で上絵(うわえ)を描き、『錦窯(にしきがま)』と呼ばれる上絵付け用の窯で低温焼成する。

s_試作から完成まで 3-4画像左/迷ったらクリムトの画集を参照。画像右/上絵付けに使った金色の絵具。発色をよくするため、雲母(うんも)に本金を混ぜたという川尻さんのオリジナル。

クリムト×川尻潤『ジャポニスム碗』徹底解説!

銘『接吻』

s_「接吻」

見る者を絢爛と官能の世界へ誘う名画をモチーフにしつつ、余白のある絵付けで品よく仕上げた抹茶碗。衣装に描かれた幾何学模様や、クリムトらしい曲線美も取り入れた。黒い釉薬の部分は、手の自然な動きから生まれた『無為の意匠』。丸みのあるフォルムも魅力。高台に『潤』のサイン入り。内側は黒。

クリムト随一の名画に描かれた優美な曲線と幾何学模様を再現!

クリムト碗 1

銘『接吻』
¥162,000+税
約口径13.3×高さ8.4㎝。陶器。桐箱(箱書き付き)付属。日本製。[限定数1]

銘『エジプト』

「エジプト」

ブルーや緑など寒色の絵具と金・プラチナの絵具をバランスよく用いて、茶碗全体にエキゾチックな絵付けを施した。つくり手のデザインセンスが存分に発揮された逸品だ。手びねりならではのなめらかなフォルムと流麗な口縁のライン、やや高めの高台が特徴。高台には『潤』のサイン入り。内側は黒。

クリムト『黄金時代』の華やぎをエキゾチックに表した!

クリムト碗 2

銘『エジプト』
¥162,000+税
約口径13.5×高さ8.9㎝。陶器。桐箱(箱書き付き)付属。日本製。[限定数1]

銘『誘惑』

「誘惑」

琳派の画家・尾形光琳の『紅白梅図屛風』から影響を受けて描かれたのが『ダナエ』。その流麗な曲線や、金と黒を効果的に使ったデザインを、茶碗にもうつしとった。クリムトの絵画がもつ非日常性を、高めの高台で表現。見る場所によって印象が違うのも特徴だ。高台に『潤』のサイン入り。内側は黒。

琳派からクリムトへと伝播した優美な曲線が茶碗に降臨!

クリムト碗 3

銘『誘惑』
¥162,000+税
約口径13.3×高さ9.2㎝。陶器。桐箱(箱書き付き)付属。日本製。[限定数1]

銘『官能』

銘「官能」

ほかの茶碗に比べると一見シンプルに見えるが、色彩や質感に工夫をしのばせた味わい深い作品。ベースには雲母を用いた白い絵具を使用。見る角度によってキラキラと輝く。また、色をつける前の素地に線刻を入れることで、質感に深みが生まれている。高台に『潤』のサイン入り。内側は黒。

控えめに輝く白の茶碗を線刻と幾何学模様で彩った!

クリムト碗 4

銘『官能』
¥162,000+税
約口径13.5×高さ8.3㎝。陶器。桐箱(箱書き付き)付属。日本製。[限定数1]

銘『命樹』

「命樹」

『期待』は、邸宅の壁の装飾として描かれた大作の一部。壁一面に描かれた渦巻きは、『生命の樹』を表している。そのモチーフを取り入れつつ、波状の曲線による立涌紋様で全体をまとめた秀逸なデザイン。両手の中に心地よくおさまる、丸みのあるフォルムも特徴。高台に『潤』のサイン入り。内側は黒。

クリムト好みの意匠、渦巻きや立涌をモダンにデザイン

クリムト碗 5

銘『命樹』
¥162,000+税
約口径13.5×高さ8.8㎝。陶器。桐箱(箱書き付き)付属。日本製。[限定数1]