鎌倉時代、室町時代、日本美術のかわいい名作を辿る

鎌倉時代、室町時代、日本美術のかわいい名作を辿る

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鎌倉時代は「かわいい」にとって不毛の時代だった!?

平安時代に花開いた「かわいい」の萌芽(ほうが)はその後さらに盛んになるかと思いきや、鎌倉幕府の成立によって武士が政治を司るようになると、瞬く間に雲散霧消(うんさんむしょう)。仏像をはじめとした美術表現はリアリズムが旨とされるようになり、絵画も平安期の装飾的で優美なものから現実的な描写へと向かっていきました。

武士の世に異彩を放つ水墨画

その後の南北朝という混沌(こんとん)の時代から室町幕府の成立による新しい武家政権の時代にかけて、ようやく「かわいい」の新たな担い手が現れます。その1番手が日本で最初に禅画を描いたとされる禅僧・可翁(かおう)です。そのシンプルでラフなタッチは宋風の水墨画と異なり『竹雀図』(ちくじゃくず)のスズメのように、そこはかとないかわいさを可翁は無意識のうちに描き出していたのです。

可翁『竹雀図』
(かおう ちくじゃくず)

くちばしを開いて中空を見つめ、今にも飛び立ちそうなスズメ。あどけなく、かわいらしい一瞬を墨だけで見事に描きあげた可翁の傑作は、丹念にスズメを写生した賜物。かくもスズメがかわいく見えるのは、小さきものを愛おしむ画僧の優しい眼差しによるものなのでしょうか。
紙本墨画 掛幅1幅
90.4×30.3㎝
重要文化財
所蔵:大和文華館

鎌倉時代、室町時代、日本美術のかわいい名作を辿る

「かわいい」不毛の時代の類いまれなる傑作『巖樹遊猿図』

水墨画の発展はとどまることを知らず、画僧・雪舟等楊(せっしゅうとうよう)の登場によって日本の水墨画はひとつの頂点を迎えます。そして水墨画を受け継いだ狩野正信・元信によって狩野派が形成された室町時代後期に、元信に影響を受けたとされる式部輝忠(しきぶてるただ)が「かわいい」の救世主として現れます。その代表作のひとつである『巖樹遊猿図』(がんじゅゆうえんず)を見ると、それぞれのサルの仕草や動きは擬人化されていて、見事にキャラクター化されています。

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式部輝忠『巖樹遊猿図』
(しきぶてるただ がんじゅゆうえんず)

大胆な構図の中にサルの群れを生き生きと描いた一双の屏風。作者である式部輝忠の略歴などは不明な部分が多い、知る人ぞ知る存在の絵師です。近年、その画業についての研究が進んでおり、ますます注目されるようになってきています。
紙本墨画 六曲一双/149.0×333.0㎝/重要文化財/所蔵:京都国立博物館

「かわいい!」日本美術1200年の歴史を俯瞰する〜平安編〜
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