伊藤若冲が多彩な天才と呼ばれる所以がここにある

伊藤若冲が多彩な天才と呼ばれる所以がここにある

目次

色彩の魔術師!

若冲は「色彩の王国」に君臨するチャンピオン

この『紫陽花双鶏図(あじさいそうけいず)』は、ほとんど同じ図様の作が『動植綵絵』にも存在しており、その描き込みや、色彩の鮮やかさという点におけるクオリティの高さも、まったく同レベルにある作品です。

この色彩豊かな作品、仔細(しさい)に見ると塗り重ねられた箇所がまったくない上に、その発色の鮮明さからは想像できないような薄塗りによって、鶏の羽や紫陽花の萼(がく)が描写されていることがわかります。
DMA-P52-53-min『紫陽花双鶏図』一幅 絹本着色140.0×85.0㎝ 江戸時代・18世紀 エツコ&ジョープライスコレクション

若冲の作品が色彩のミラクルワールドと言われ、今も鮮やかな発色が失われていない理由は、その描写力の高さもさることながら、極めて質の高い(つまりは、値段の高い)岩絵具を、きめの細かい、こちらも特別な画絹(がけん)の上に薄塗りしていたからだろうと考えられています。

錦市場の若旦那として金銭に不自由しなかった若冲の強みとも言えますが、もてる財力を、ほかならぬ画材の購入にあてたところに、若冲の若冲たる所以(ゆえん)があると言えるでしょう。

表情づくりの天才!

着色画には見られないユーモラスな感性が魅力的

学問嫌いにして人づきあいも苦手なら、家業はおろか酒色にもまったく興味がないという、現代で言うところのオタク的な人物だったと語られてきた若冲。しかし、そんな人となりからは想像もできないほど、彼の描いた作品は多彩でした。特に、水墨画でしばしば発揮されるユーモアと、思わず噴き出しそうになる漫画的な表情づくりの絶妙さは、リアルなディテールで知られる若冲の別の一面です。
スクリーンショット 2017-04-20 12.02.41『釣瓶に鶏図』一幅 紙本墨画 99.4×27.8㎝ 江戸時代・寛政7(1795)年 大和文華館蔵

作品の多彩さとともに、若冲の人物像にも新しい事実が続々と発見されています。家業には、まったく興味を示さないとされてきた若冲ですが、錦市場の営業停止命令と理不尽な税金の請求をしてきた奉行所に対し、自らが先頭に立って冷静かつ粘り強く交渉にあたり、また政治的判断に立った対処をしていたことが、近年の研究によって明らかにされました。
スクリーンショット 2017-04-20 12.04.29『雨龍図』一幅 紙本墨画 130.5×53.0㎝ 江戸時代・明和7(1770)年ごろ 個人蔵

水墨画に描かれるユーモアや表情は、ともするとオタクのように描かれる若冲自身の隠された表情なのかもしれません。

-2013年和樂4月号より-

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