鏑木清方の名画「築地明石町」44年を経ても変わらない作品の美しさにうっとり

鏑木清方の名画「築地明石町」44年を経ても変わらない作品の美しさにうっとり

目次

鏑木清方の名画「築地明石町」。水色の着物に黒い羽織姿の女性が、どこかつんとした顔で立っているこの絵は、美術好きなら誰もが清方の代表作に挙げる作品でありながら、実は長いこと行方不明になっていた幻の作品です。
今回、再発見を記念し、東京国立近代美術館において特別公開されることが決定しました!2019年11月1日から、東京国立近代美術館、所蔵品ギャラリー第10室にて公開されます。

鏑木清方ってそもそも誰?80年描き続けた美人画の名手

鏑木清方(1956年) 根本章雄氏提供

13歳のときに日本画家水野年方に弟子入りし、絵を描き始めた鏑木清方。1972年に93歳で亡くなるまで創作活動に向き合い続けた、近代を代表する日本画家です。挿絵を描いていた縁から尾崎紅葉など、教科書でおなじみの文豪たちとも交流があり、ことに泉鏡花とのタッグは高い評価を得ました。

鏑木清方の美人画には、浮世絵に見られる江戸の女性の清らかさや優美さが感じられます。そこには、江戸の風情が残る明治時代の東京下町で生まれ育ったという画家のルーツが関係していると言われています。

その繊細で美しい絵は今でも広く愛され、美人画の名手として、必ず名前が挙がる存在です。
鏑木清方の作品のなかで、ファンに長く愛されていながら、実物を見ることができなかった作品が、「築地明石町」なのです。

1975年以来姿を消していた「築地明石町」

鏑木清方 《築地明石町》 1927(昭和2)年 絹本彩色・軸装 173.5×74.0cm 東京国立近代美術館 ⓒNemoto Akio

1927年に帝国美術院賞を受賞し、切手の図柄にも採用された「築地明石町」。戦争中の所在がつかめなかった時期を経て、昭和30(1955)年に無事が確認されました。その後何度か展覧会に出品されていたようですが、昭和50(1975)年の展示を最後に、忽然と姿を消してしまいます。

以来、「幻の名作」と言われていた「築地明石町」が、44年の時を経て、「新富町」「浜町河岸」と共に再発見された――これは日本美術界において大事件と言っても過言ではありません!

鏑木清方 《新富町》    1930(昭和5)年 絹本彩色・軸装 173.5×74.0cm 東京国立近代美術館 ⓒNemoto Akio

鏑木清方 《浜町河岸》  1930(昭和5)年 絹本彩色・軸装 173.5×74.0cm 東京国立近代美術館 ⓒNemoto Akio

「新富町」「浜町河岸」は「築地明石町」から3年後の昭和5(1930)年に制作されました。同時制作ではないものの、いずれも清方にとって思い出深い町が主題となっており、自身も「三部作」だと言っていたそうです。今回の再発見では、三作品がそろいの桐箱に納められており、内箱のふたには清方自身の筆でタイトルが書かれていることも確認されました。

長く行方不明だったものの、とても良い保存状態だった「築地明石町」「新富町」「浜町河岸」。修復の必要もなく、再発見から公開まで、驚くほど短期間で実現したのだそうです。三人揃った姿を見られるのも44年ぶりです!

実物でしかわからない「色」と「筆さばき」

鏑木清方 《築地明石町》(部分) 1927(昭和2)年 絹本彩色・軸装 173.5×74.0cm 東京国立近代美術館 ⓒNemoto Akio

東京国立近代美術館の主任研究員・鶴見香織さんは、今回再発見された作品を見て「これまでのカラー図版は、色調を再現出来ていなかった」と驚いたそうです。
例えば「黒い羽織」とひとくちに言っても、その黒の中にはかすかな陰影が施されています。また、この作品の背景には白色が塗られているのですが、これは「朝霧」を表現しているのだとか。実物を見ることができたからこそ、作品の素晴らしさも再発見することができたのでしょう。

一筋一筋が丁寧に描きこまれた髪、ぼかされた生え際、細い後れ毛、図案そのもののような着物の柄、わずかな裾のたわみ……。本展は、細部に宿る魅力を自らの目で確かめるまたとない機会です。

三部作だけじゃない!鏑木清方の名作も同時公開

もちろん、鏑木清方の名作はこの三部作だけではありません。本展では、「鰯」「三遊亭円朝像」をはじめとした東京近代美術館が所蔵する清方の作品も公開されます。

長屋に暮らす庶民の日常を描いた「鰯」

《鰯》 1937(昭和12)年 絹本彩色・軸装 72.0×86.0cm 東京国立近代美術館 ⓒNemoto Akio

昭和12(1937)年ごろに明治時代を回想して描かれた作品。え、これで明治時代なの?と思われるかもしれませんが、なんとここは明治二十年代の木挽町、築地界隈です。

このころにはまだ長屋が残り、鰯売りの少年が天秤棒(てんびんぼう、絵中央の少年の足元にある、鰯を運ぶ商売道具)を持って声を張り上げて売り歩いていたそうですよ。長屋の女性が少年を呼び止め、鰯を買っているという場面。女性の後ろのかまどからは煙が出ていて、夕食の準備が進んでいることがわかります。

子どもが路地に入ろうとしていたり、隣の長屋では駄菓子やほうきが売られていたり、かつての庶民の日常を、愛情と郷愁を持って隅々まで描いた作品です。

落語界の巨人を描いた肖像画の傑作「三遊亭円朝像」

《三遊亭円朝像》 重要文化財 1930(昭和5)年 絹本彩色・軸装 138.5×76.0cm 東京国立近代美術館 ⓒNemoto Akio

鏑木清方の重要なレパートリーのひとつに肖像画が上げられます。明治の偉大なる落語家・三遊亭円朝を描いたこの作品は、実は肖像画の第一作目だそうです。
大ぶりの湯呑みをもち、ゆったりと構えていながら、眼光は鋭く、対する観客の息づかいまで聞こえてきそうな緊張感があります。

着ている小紋の柄はまるでコンピューターで引いた図面のごとき正確さと細かさです。置いてある小道具も実際に師匠が高座で使っていたものを並べてあり、ただ生きている人間の絵を描くのではなく、その人の「生きざま」までも表そうという、鏑木清方の志が感じられる名作です。

鏑木清方特別公開はわずか一か月半!緻密に描かれた美しい女性たちに会いに行こう

今回の特別公開は11月1日から12月15日まで、わずか一か月半です。今回ご紹介した作品以外にも、東京国立近代美術館が誇る鏑木清方コレクションを見ることができます。

44年ぶりに公開される清方の「幻の名画」を目の当たりにできるチャンス、どうぞ、お見逃しなく!

展覧会名 「鏑木清方 幻の《築地明石町》 特別公開」 
会場 東京国立近代美術館

2019年11月1日(金)~12月15日(日)
東京国立近代美術館 公式サイト

もっと近くで見たい!という方に「鏑木清方原寸美術館100% KIYOKATA!」のススメ

鏑木清方の「築地明石町」や「新富町」「浜町河岸」をもっと見たいという方、地方に住んでいるから実物を見に行けないわ、という方におすすめなのが、10月23日に発売される「鏑木清方原寸美術館100% KIYOKATA!」。
鏑木清方の作品を23点掲載し、すべての作品で原寸の図版と、東京国立近代美術館主任研究員の鶴見香織さんによるわかりやすい解説がついています!

美術館でついスマホの操作のように、指で拡大したくなったことはありませんか?
この「鏑木清方原寸美術館100%KIYOKATA!」では一部の作品を「築地明石町」をはじめ、三部作の顔の部分を200%に拡大。
髪の一筋一筋までわかる繊細な表現を楽しむことができます。その美しさやこだわりに息を呑んで見入ってしまうこと、間違いありません!

絵の新たな楽しみ方を示す「鏑木清方原寸美術館100%KIYOKATA!」は、全国の書店やネット書店で発売中です。また、東京国立近代美術館ミュージアムショップでもお取り扱いをしています。展覧会をご覧になったのち、ぜひお寄りください♪


鏑木清方原寸美術館 100% KIYOKATA!
著・監/鶴見香織
定価/本体2400円+税
A4判144頁 
オールカラー

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