刀剣は「持つ」ともっと楽しい! 老舗に聞く、所持・購入方法とその魅力

刀剣は「持つ」ともっと楽しい! 老舗に聞く、所持・購入方法とその魅力

刀剣は誰が手に取っても、購入して所持しても、まったく問題ありません。刀剣は法律上も「美術品」なので、刀剣自体に登録証という住民票のような書類が付いていれば、誰でも触れることができるのです。

とはいえ、実際に持つのは……とためらってしまうかたも多いのでは。

江戸時代から続いている老舗刀剣店に伺って、刀剣を「持つ」魅力をたっぷりお聞きしてきました!

武家御用達、創業150年の老舗・服部美術店

東京駅から徒歩5分、日本橋駅から徒歩3分、ビジネスパーソンやお買い物客で賑わう東京日本橋のビルの2階に、服部美術店(はっとりびじゅつてん)はあります。階段を上って入り口でお声がけすると、笑顔で出迎えてくださいました。

服部美術店の服部一隆(はっとりかずたか)さん

ご挨拶し、さっそく質問開始。

– お店の歴史を教えていただけますでしょうか?
服部さん(以下、敬称略):江戸時代に武家屋敷の御用聞きをしていたのが当店の始まりです。酒井雅楽頭(さかいうたのかみ)のお屋敷に伺ったこともあると聞いております。

– 4代将軍徳川家綱を補佐した大老ですね。とすると、江戸前期、1600年代後半ですから、実際には創業150年を優に超える、ということでしょうか?
服部:そうなります。明治以降も東京で刀剣商を営んでいたのですが、関東大震災のため、大正12年に大阪へ移転しました。第二次世界大戦の折には静岡県三島市に日本刀鍛刀所を開設し、名門・月山貞勝(がっさんさだかつ)刀匠門下の湧水子貞吉(ゆうすいしさだよし)刀匠にご指導いただきながら作刀していました。現在でも僅かですが「服部鍛刀所」銘の刀が残っています。戦後は日本刀の美術的価値をアピールするため、奔走しました。日本刀は戦後、GHQによって大量廃棄される危機に直面していたのですが、日本文化に理解を示していたキャドウェル大佐と、現在の日本美術刀剣保存協会の草分け的存在である本間薫山(ほんまくんざん)先生との繋ぎ役なども、私の祖父にあたる先代の服部善三郎は行っていたそうです。

– 日本刀史上、最大の危機と言われた時代ですね。
服部:ええ。そこから現在の登録制度ができますので、キーポイントといえる時代だったと思います。この時にアメリカへ流出してしまった刀剣を里帰りさせる活動も行ってきました。現店主(筆者注:父・暁治[きょうじ]さん)がアメリカで見つけて返還した、奈良県の談山神社の奉納刀もその1つです。

– 神社の奉納刀までもが海外に行ってしまっていたのですね。国宝の刀剣もこの時代に数本失われてしまったといいますし、刀剣の武器としてではない一面というのが、海外にはあまり認識されていなかった時期だったのでしょうね。

服部:以降、静岡の沼津市、東銀座の歌舞伎座横など数回移転し、40年ほど前から現在の場所に店舗を構えています。また、全国の刀剣商による「全国刀剣商業協同組合」の立ち上げにも参加しました。この「全刀商」は、毎年11月に「大刀剣市」を開催しているほか、認可団体として刀剣文化の普及活動にも力を入れています。

以前に当店で発行したものなのですが、と見せてくださったのが、大相撲の番付表のようなもの。

服部:刀工番付、といって、刀工を大相撲の番付になぞらえて作成したものです。

力士の地位である大関、関脇、小結、前頭、そして行司なども書かれていて、有名刀工の名前がずらり。なかなか壮観です。数が多くて覚えるのが大変な刀工の名前も、これを壁などに貼っておけば少しずつ自然に覚えていけそうです。

服部:当店ではかつて、長曾祢旅館(ながそねりょかん)という宿泊施設も京橋で経営していました。この地に居を構えていた有名刀工・長曾祢虎徹にあやかった旅館名ですが、各お部屋にも「延寿(えんじゅ)の間」など、刀工にちなんだ名前が付いていたと聞いています。大正時代のことですので、私も実際に見たことはないのですが……。

– 刀剣好きにはたまらない旅館ですね。もし再度創業なさったら、絶対に伺います!

どんなお客様が多い?

– お店には、どんな層のお客様がいらっしゃるのでしょうか?
服部:現在、世界各国からいろいろなお客様がおいでになります。比率としては、当店では外国のかたが多いでしょうか。立地条件と、あとはネットで検索して、とおっしゃるかたが多いですね。以前は日本国内の40代以上の男性が8~9割と、ほとんどでした。

– 若い女性が来店されることはありますか?
服部:そうですね。最近は女性からのお問い合わせも増えてきています。当店では刀剣書籍なども扱っているので、そちらをお求めのかたもけっこういらっしゃいますね。また、刀を使った武術・居合用の刀を購入されるかたも多くいらっしゃいます。

– 売れ筋というか、人気の商品というのはあるのでしょうか?
服部:そうですね……特定のもの、というのはないかもしれません。希少性の高いものは高額でもすぐに売れてしまう傾向はあるでしょうか。刀身だけでなく、外装の「拵(こしらえ)」も揃っているものは比較的人気です。鐔(つば)などの刀装具を単体で集めるコレクターさんも多いですね。

刀の鐔。1つずつ桐箱に入っています

最近のブームによる変化は?

– ゲームなどによって今、刀剣ブームが巻き起こっていますね。従来とまったく異なる層のファンが増えてきていると聞くのですが、何か変化を感じることはありますか?
服部:直接的な影響という意味ではあまり大きくはないかな、というのが正直なところですが、若い女性が、大刀剣市で刀を購入していかれた、とか、ゲームに出てきた刀剣の写し物を現代刀工に発注された、というのはいくつか耳にしています。また、博物館や寺社仏閣などの刀剣展示会で大行列を見かけたこともあります。刀剣イコール武器、危ない、というイメージが変わってきて、美しいもの、歴史のあるもの、魅力的なもの、という風に思ってくださるかたが増えたのはとても嬉しいことです。また、一過性ではなくて、本格的に刀剣に興味を持たれた若い年代が一定数おられるかな、という話も聞いていて、これもまた嬉しいですね。

– 確かに、奥さんに大反対されて、欲しかった刀剣を買えなかった、という男性陣の嘆きを何度か聞いたことがありました。これからはそうしたケースも変わっていくのかもしれませんね。
服部:こうした取材が増えたのも、変化の1つだと感じます。
– そうなのですね!(笑)

刀剣を「持つ」魅力とは?

– 代々刀剣を扱っておられる服部美術店さんですが、刀剣の魅力というのは、どんなところだと思われますか?
服部:一言では言えないのですが、作風の幅広さ、奥深さ、歴史、美しさなど、他にはない、特有の魅力というのを感じます。武器をここまで美術的に仕上げるというのは他の国にはあまりないことですし、神秘性も感じますね。「サムライらしさ=刀」と考えるかたも国内国外問わず多いのでは、と。もちろん、博物館などで見ても美しいのですが、踏み込んでみないと分からないこともたくさんあります。

– 博物館では刀剣の2割程度しか見えない、というような話も聞きます。
服部:どうしてもガラスケース越しだと限界はありますよね。刀剣の魅力の1つに、手に持って鑑賞できる、ということがあると思うのですが、他の分野の美術品では、こんなに昔のものを手に取れるのは稀ではないかと思います。ものによっては1000年ほども前の刀剣に自分の手で触れることができますし、鑑賞会では戦国武将の愛刀などを手に取って鑑賞できる機会もあります。

– まさに歴史の「重み」を体感できるのですね。
服部:刀剣が好きなかたは、自分の刀を1本持つことで新たな発見に繋がるという面もあります。日頃お手入れしているうちに自分の刀の特徴を覚えていきますが、他の刀との違いがより分かるようになってくるのですね。また、見る条件によって刀の表情が変わるのも実感できると思います。

– お手入れが必要というのも、魅力の1つのような気がしてきますね。

どんな風に「自分の刀」を選ぶ?

– いざ刀を選ぶ、となると、とても迷ってしまいそうです。どんな風に「自分の刀」を選ぶとよいのでしょう?
服部:居合用のものは使いやすさという面で選ぶことになるのでしょうけれど、それ以外については、すべての人に共通する決まった選び方というのはないのではないかな、と思います。古いものにも新しいものにも、どの地方で作られたものでも、それぞれの特徴や良さというのがありますから、自分の好みを知る、というところから始められるのはどうでしょうか。押さえたいポイントを決めて、例えば時代、刃文、作者など、こういうものが好き、となったら、その条件に合ったものを刀剣店がいくつかお見せできるかと。同じ作者の刀でも少しずつ違いますし、実際に見てみることが大事かな、と個人的には思っています。どんなものが好きか、好きだと感じるタイプにはどのようなものがあるのか、ということについては、事前にちょっと調べてみるのもよいかもしれません。

– 大きなお買い物になりますものね。
服部:そうですね。基本的に安いものではないので……拵付きのものだと、刀身と外装と、ひと通り楽しめる要素が詰まっているので、白木の鞘「白鞘」に入ったものより拵付きを好まれるかたは多いですね。あとは扱いやすさ、お手入れのしやすさという面でいうと、短めのものは比較的楽にできると思います。短くてもいろいろな鑑賞ポイントは長いものと同じようにありますし、価格帯も全体的にやや抑えられます。もちろん、ものによっては長いものよりずっと高価、ということもありますが。

そう言いながら持ってきてくださったのが、こちら。

服部:これは、本来は刀身の鞘に添えられている小刀に拵を付けて仕上げたものです。小さいですが、なかなかしっかり拵も作られていて、楽しいですよね。この小刀の銘は、あやかり銘というか、有名刀工の名前で楽しんだ、悪意のないものなのですが、よい作りのものがややお手頃な値段で手に入る、という意味でも短いもののメリットはあると思います。

– こんな可愛らしいサイズのものもあるのですね!
服部:刀剣は同じに見えても異なる、というのが魅力の1つですし、それぞれのかたに合った刀剣を探す、ということに、やはりなるかと思います。また、古いものにあまり興味がないな、と思っていても、実際に見ていくうちにとても好きになるといったケースもありますし、一期一会のインスピレーションということもあります。それと、流行以外のものだと手頃な価格でよいものが購入できる、というようなこともありますので、好みのポイントを押さえつつ、こうした方面で探されるのも1つの方法かと思います。また、鐔などの刀装具はコンパクトで比較的扱いも楽ですから、幕末~明治金工の豪華さ、デザインの面白さ、質実剛健な鉄製の鐔など、こちらも楽しみ方はたくさんあると思います。

刀剣を購入するときの手続きとポイント

– では、気に入った1振りが見つかって、買いたい、となった時、刀剣を購入するときの手続きはどのようにするのでしょうか?
服部:刀剣には「登録証」という、刀の住民票のようなものが必ず付けられているのですが、所有者が変わったら、この登録証に書かれている都道府県の教育委員会に「所有者変更届」を提出する必要があります。刀剣店ではこうした手続きなどアフターフォローもいたしますし、購入に関する手続きに煩雑さはあまり感じられないかと思います。刀剣店以外で購入される場合、こうした手続きはご自分でされることとなりますが、さほど難しい内容ではありませんので、心配されなくて大丈夫だと思います。

– もし、この手続きを忘れてしまうと……?
服部:購入されてから2週間以内に手続きを完了しないと、法律違反になってしまうので、お気を付けくださいね。また、登録証が付いていない刀剣の売買は禁じられているので、こちらの確認も必ずなさってください。

参考:自宅から刀剣が見つかった時の対処法の一例(各都道府県ごとに届出場所は異なります):岡山県教育庁

– 刀剣の自宅での保管はどのようにすればよいのでしょうか?
服部:刀身は放っておくと錆が出てきてしまいますので、湿気の少ないところで、油を引いて保管していただくことになります。詳しい方法は、様々なよい書籍が出ていますので、そちらでご確認いただくとよいかと思いますが、お手入れは知識を持って行わないと刀剣の価値を下げてしまうことにもなりかねませんので、ここはしっかりと知っていただければと思います。

石川五エ門の刀は実は昼寝中だった!? 刀剣の鞘と手入れのあれこれ

– 1度壊れてしまうと、元に戻らないですものね。
服部:ええ。茎(なかご)の錆には決して手を加えない、というのもそうですし、もし錆が出てしまったとしても、ご自分では対処されないのをおすすめします。歴史のある品物を壊してしまうことに繋がりかねませんので。

– 専門の知識と技術を持った職方にお任せするのが鉄則ですね。

次世代へ向けた取り組みも

– 新たに刀剣に興味を持った、という人に向けた取り組みもされているとのことですが。
服部:同業同世代の方々と共同で、新しく興味を持った方に向けたイベントなど企画して、積極的に参加するようにしています。今後もっと充実させていきたい、という話もしておりますので、皆さまどうぞおいでください。来年2020年には東京オリンピックが開催されて、日本文化も注目されると思いますが、国内のかたがたにも日本文化の一大ジャンル、刀剣に注目していただき、大事にしていただければ嬉しいな、と思います。

服部さん、本日はご多忙にもかかわらず、長時間ありがとうございました!

服部美術店 基本情報

店舗名: 服部美術店
住所: 103-1127 東京都中央区日本橋3-5-12 DECO TOKYO 2F
営業時間: 平日・土 11:00-18:30
定休日: 日曜日・祝日
公式webサイト: http://www.katana-hattori.com

刀剣は「持つ」ともっと楽しい! 老舗に聞く、所持・購入方法とその魅力
この記事をSNSでシェアする
この記事をSNSでシェアする