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【後編】東博に超絶御室派のみほとけ大集合!尾上右近の日本文化入門_INTOJapaaaaN!

【前編】【中編】の観賞後、興奮冷めやまぬ右近さん。この展覧会、どんな印象をもったのでしょう?金崎師丸山さん編集長 を交え、トークスタートです。

<観賞後の雑談記>「必ず真理はどこかにあると信じて…」

尾上右近

編集長 「三十帖冊子」の空海の字、いかがでしたか?
右近 空海は生きていたんだ、とすごく感じましたね。中国にいた2年間で記録としてメモをした…構えてない字ですよね。やはり見られるという意識がないときこそ、その人の生命観が感じられるじゃないですか。
丸山 東寺には、最澄に宛てた「風信帖」(ふうしんじょう)という空海直筆の手紙があるんですが、その字と比べるとやっぱり違います。
右近 へえ、本気を出したときの空海の字と見比べてみたいなあ。
編集長 (スマートフォンで画像検索して)じゃあ、ここで比べてみよう。これが「風信帖」ですね。
右近 あ、全然違いますね。
丸山 ほんとに格調高い字でしょう。最澄宛に書いているから、失礼がないようにというような…。
編集長 たしかに尊勝陀羅尼の梵字に似た字も入っていますね。
右近 うん、動き感がね。はらいもそんな感じです。
編集長 ものすごく自在自在なんですね。

尾上右近

編集長 皇室ゆかりとあって、第1章の宸翰・消息がすごかったですね。
丸山 なかなか解説しないとわかりにくいですけど、そこがいちばんの特徴でしょうね。
編集長 こう言うと変だけど、皆さん、字がお上手ですよね(笑)。
右近 日記や手紙というものより、作品に見えますね。
編集長 江戸の書ですけど、平安朝みたいというか。
丸山 そうですね、宸翰様という独特の書体がありますからね。
右近 観音堂の裏側も面白かったですよね。壁の桟の上を水拭きして黒くなっているところまで復元されてた。そういう人の気配に生命観を感じますね。あと、やっぱり千手観音は圧倒的でした。
編集長 後ろがまたすごかったね。
右近 僕、後ろとか斜めから見るのがすごく好きだから、ああやって実物を見られるとたまらないですよね。ただでさえ、最後に見たものは記憶に残りやすいのに、これが最後に来ちゃった日にはもう、けっこうなインパクト。うっかりすると前半のものは吹っ飛んじゃう(笑)。何度も通わなきゃ。

尾上右近

右近 仏像を拝見して、つくづく歌舞伎の荒事や、力強さを求める役や型は、絶対に仏像からヒントを得ていると思いました。小道具でも、仏像からアイディアを拾っているようなことがいっぱいあると思うんです。結局、見る人の気持ちの最大公約数をねらった形の取り方だと思うんですよね。そこは仏像の世界と共通しているんじゃないかなと思う。
丸山 空海は、形が大事だと繰り返し言っていますね。手の型にしても言葉で説明したのでは伝わらないと。空海のお師匠さんの恵果も言っていますね。
金崎師 瞑想するときの阿字観とか、音なんかでもそうですね。
編集長 曼荼羅は一般的な人が見る機会はあるんですか?
丸山 やはり真言宗のお坊さんの修行の道場ですから、基本的にはお坊さん相手です。
右近 やはり見る人、拝む人、すがる人の平均値をいかに高いところで保てるか、というところでかたちが重要になってくるんでしょうね。歌舞伎の勉強でも、その気持ちのときはその形にと言われても、わからない。やっぱり型を教わって徹底的に形を体の中に仕込めば、気持ちがついていくということは絶対にあると思うんです。仏教もそういうことってないですか?
編集長 修行をしていくうちに、たとえば写経を書いたりしているうちに、わかってくるってことなんてあるんですか?
金崎師 あ、いやいや。僕のレベルではまだまだ…。(全員爆笑)

尾上右近

右近 僕は、仏教も歌舞伎も心を形にするというところで似たところがあるように思います。そして、苦しみというものに対する提案だと思うんです。
金崎師 人の心を救う…救済ですね。
右近 ええ。演劇を観に行くことで、日常の苦しみを忘れさせるというカタルシスがあるじゃないですか。それに、答えがないものをずっと求めなきゃいけないという苦しみ…(笑)。つねに揺れ動くけど、必ずどこかに真理はあると信じて突き進まなければいけないと思うんです。そこに役者は人を喜ばせるというオプションがついている職業だなと思うんです。

尾上右近

編集長 今回、ミュージアムグッズが充実していますね。空海の文字をモチーフにしたTシャツやぐい呑み、千手観音の脇手をイメージした千手アームクションなど、魅力的なグッズに僕たちも盛り上がってしまいました。

金崎師 宗教的な尊厳を失わない範囲で、グッズを提案しました。あまり知られる機会がないので、一般の方に周知してもらって親しみをもっていただくという意味で、今の時代に合っているのかなと思っています。
編集長 会場には、寺子屋コーナーというのを設けているんですってね。
金崎師 はい、一般の方からいろいろ質問を受けるんですよ。
編集長 金崎師さんも常駐していらっしゃるんですか?
金崎師 ええ。修行した僧侶はどんな力をもっているんですか?人を救えるんですか?などという質問もあります(笑)。人生相談もあり…。
右近 それは、修行ですね(笑)。
金崎師 本来はお寺に来ていただいて、そこで説明するのがよいのかもしれませんが、なかなかそうもいきません。これを機に、知らない人に少しでもわかっていただければいいと思っています。そこから仏さんことや技術や学問、どこに派生してもいいので、何かを知るきっかけになってくれればと思って勤めています。

特別展「仁和寺と御室派のみほとけ-天平と真言密教の名宝-」

1月16日(火)~3月11日(日)開館時間/9時30分~17時 ※3月3(土)、4(日)、6(火)、7(水)、9(金)、10(土)は21時まで開館。※入館は閉館30分前まで。月曜日休館
東京国立博物館 平成館(上野公園) 東京都台東区上野公園13-9  

【前編】 「空海は生きていた!」、「曼荼羅は真ん中から見る?」
【中編】 「そこは仏像男子、垂涎の空間!!」

尾上右近プロフィール

尾上右近

歌舞伎俳優。1992年生まれ。江戸浄瑠璃清元節宗家・七代目清元延寿太夫の次男として生まれる。兄は清元節三味線方の清元昂洋。曾祖父は六代目尾上菊五郎。母方の祖父は鶴田浩二。2000年4月、本名・岡村研佑(けんすけ)の名で、歌舞伎座公演「舞鶴雪月花」松虫で初舞台を踏み、名子役として大活躍。05年に二代目尾上右近を襲名。舞踊の腕も群を抜く存在。また、役者を続けながらも清元のプロとして、父親の前名である栄寿太夫の七代目を襲名10月1日(月)〜25日(木)は御園座の顔見世公演に出演予定。【公式Twitter】 【公式Instagram】 【公式ブログ】

文/新居典子 撮影/桑田絵梨 構成/新居典子・久保志帆子

【尾上右近の日本文化入門】

第1回 北斎LOVEな西洋のアーティストたち♡
第2回 大観と言えば富士?!
第3回 東博に超絶御室派のみほとけ大集合!
第4回 ケンケンが刀剣博物館に!
第5回 錦絵誕生までの道程 鈴木春信の魅力
第6回 日本建築とはなんぞや!
第7回 国宝「合掌土偶」が面白い!
第8回 永青文庫で、「殿と姫の美のくらし」を拝見

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