天下の名碗を8Kでインタラクティブに体感!? 日本の最新テクノロジーがスゴイ

天下の名碗を8Kでインタラクティブに体感!? 日本の最新テクノロジーがスゴイ

「あぁ、あの茶碗に触れることができたら!」。茶道経験ナシでもそう思うのだから、経験者ならなおさらだろう。国宝、重要文化財などに指定された名茶碗がズラリと並ぶ展覧会。ガラスケースの内側に納められた茶碗をジーっと眺めてみるものの、わかったような、わからないような。はて、見どころは? 名碗といわれる器を持ったかんじって、一体どんなものなんだろうか。

家一軒、いやそれ以上の値が付く宝物に触れるなんてこと……できるわけないよね、と思っていたら、体感することができるって!? ニッポンの最新テクノロジーで実現した、8Kで文化財「ふれる・まわせる名茶碗」の茶碗の新しい鑑賞スタイルを体験してきた。

トーハク選りすぐりの日本、中国、朝鮮の名碗を比較体感

8Kで文化財「ふれる・まわせる名茶碗」は、文化財活用センター(ぶんかつ)と東京国立博物館(トーハク)、シャープ株式会社が共同開発した8Kの高精細画像を活用する最新のコンテンツ。試作機を使って茶碗の新しい鑑賞法の実証実験が行われた。今回、体験鑑賞ができたのはトーハク所蔵の次の3点。いずれも、おいそれと触ることは難しい、来歴確かな茶碗である。

生まれは朝鮮。日本の茶人が美を見出した「大井戸茶碗 有楽井戸」


朝鮮 16世紀 重要美術品
大井戸茶碗は朝鮮で焼かれたいわゆる高麗茶碗のなかでも、とくに評価が高いもの。ほんのりと赤味を帯びた、やわらかな枇杷(びわ)色が特徴。名はかつて織田信長の弟の有楽斎(うらくさい)が所持したことに由来する。以後、名だたる茶人に伝わった。

画像提供/文化財活用センター、東京国立博物館(3点の茶碗すべて同じ)

室町時代、足利義政が所持した「青磁茶碗 銘 馬蝗絆」


中国・龍泉窯 13世紀 重要文化財
透き通るような粉青(ふんせい)色の釉薬が薄く全体を覆う。中国伝来の青磁は古くから日本人が憧れ、愛してきたもので、かつては将軍や大名など時の権力者だけが手にできた。下のほうに見える茶色いものはヒビを留めるための鎹(かすがい※)で、馬蝗絆(ばこうはん)という銘の由来になったこの茶碗のキモ。

※ホッチキスの針のようなカタチに似た、金属製でコの字型をした釘のこと

日本独自の美意識を昇華させた国産の名碗「志野茶碗 銘 振袖」


美濃(岐阜県) 安土桃山~江戸時代 16-17世紀
志野茶碗は安土桃山時代に美濃で焼かれたもので、日本の美を象徴する。当時、白い焼き物は貴重だった。トーハク所蔵のこの茶碗は白い肌を透かしてすすきの文様がうっすらと見え、志野の魅力がよくあらわれた逸品。

茶碗型コントローラーをさわりながら、見たいところをクローズアップ

さて、コンテンツ体験を再現してみよう。目の前の台に先ほどの3つの茶碗が置かれている。いずれも3D計測され、人工大理石で精巧に再現されたもの。つまり、大きさも重さも肌触りもそっくりにつくられた器で疑似体験するというわけだ。そのひとつ「大井戸茶碗 有楽井戸」が画面を操作するコントローラーになっていて、70インチの大画面8Kモニターに映る茶碗の3D画像が連動して動く。しかも、回転、拡大、縮小……と思いのままに動かせるから、一般的な展示では見ることが難しい茶碗の裏や、背伸びをしてのぞき込んでもなかなか見えない茶碗の内側(見込み)までも、ぐーっと寄って見れてしまうのだ。

大きさや重さだけでなく、ツルツル、ざらざらの肌触りまでも再現。器に仕込まれたジャイロセンサーとモニター下部に設置されたカメラに応答して、画面が動く

プログラムは「有楽井戸をじっくりみる」「3つの茶碗を比較する」の2つで構成されている。まずは、「有楽井戸をじっくりみる」から。白いマーカーを画面中央に合わせると……
見どころポイントと解説があらわれた!

2つ目のプログラム「3つの茶碗を比較する」では、3つの茶碗を並べて映し、

断面まで比べて見ることができちゃう!

「左の中国・龍泉窯の青磁茶碗はろくろで挽かれていますが、厚さを均一に整え、いかに精緻であるかが求められたものです。画面に映された断面から他に比べて際立って薄いことがわかるでしょう」と本プロジェクトに携わった東京国立博物館研究員、三笠景子さん。手元の器を引き寄せれば像がさらに拡大されて、ド迫力。約3318万画素の超高精細画像がリアルに迫ってくる。

あまり見ることができない茶碗の裏や高台、見込みをじっくり眺めよう!

美しい青磁の器は誤って熱いお湯を注ぎヒビがはいってしまったため、代わるものを中国に求めた。しかし、明時代の中国には同じようなものはなく、鉄の鎹で割れを留めて送り返されてきた。それを馬に止まった大きな蝗(いなご)に見立てたことが銘の由来だ。

「一方、高麗茶碗は民窯でつくられた、もとは生活雑器です。日に何千個とつくるものですから、ろくろですばやく挽き上げ、釉薬もズブ掛け(※)で1度だけ。茶碗の表面にはろくろ跡が残って、高台(底の部分)の削り方も荒々しい。しかし、そこに桃山時代の日本の茶人は美を見出しました」。手に持つとたっぷりとした大きさがよくわかる。見込みは深い。「この深さが日本の器、志野茶碗に生かされているんですよ」と三笠さん。

※釉薬が入ったバケツなどに素焼きの器を浸して釉薬を掛けること

茶碗の内側に関心が向かうようになったのは、「自分で茶を点て、自らいただくようになったから」と三笠さんはいう。「志野茶碗〈振袖〉を見ると、井戸茶碗に劣らず茶碗の内側がぐっと深くつくられているのがわかります。茶を飲み終わったあと、茶溜りや側面に残ったお茶がどんな景色を描くのか。宇宙、とよく言われますが、お茶を点てるとき、飲むときに茶碗の内側に向かっていく意識を強く自覚するようになったのが桃山の茶人たちなのです」

うーむ。茶碗の内側はどこまでも深そうだ。「普段は見えないところをじっくりと見ることができますから、『どうやってつくったんだろう』『何を思って飲んでいたんだろう』といろいろ思いを巡らせながらコンテンツを楽しんでいただけたら、と思います。先人たちの眼を通じて、日本の豊かな焼き物の文化に触れてください」(三笠さん)

今回の事前予約制の実証実験は好評につき予約が締め切られたが、担当者によれば、今回の参加者のアンケート調査をもとにさらに内容を検討し、再びお披露目する予定とのこと。次の機会を期待して待ちたい。

東京国立博物館では2020年10月6日(火)~11月29日(日)の日程で特別展「桃山ー天下人の100年」の開催を予定している。同展では8Kで文化財「ふれる・まわせる名茶碗」にも取り上げられた「大井戸茶碗 有楽井戸」と「志野茶碗 銘 振袖」が通期展示されるとのこと。こちらも楽しみだ。

8Kで文化財「ふれる・まわせる名茶碗」

公式サイト

文化財活用センター

2018年に国立文化財機構に設置された、文化財活用のための機関。「文化財を1000年先、2000年先の未来に伝えるために、すべての人びとが、考え、参加する社会をつくります」というビジョンを掲げ、「ひとりでも多くの人が文化財に親しむ機会をつくる」をミッションとして、さまざまな活動をしている。
公式サイト

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