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2020.09.11

漢字クイズ!「秋刀魚」ってなんて読む?お笑い芸人も関係?

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秋の味覚の代表的な鮮魚!塩焼きやお刺身として食べると最高ですね!
答えは……そう、「さんま」です!

お笑い芸人明石家さんまの芸名は、師匠の落語家・故笑福亭松之助が名付け親。由来は、奈良の実家がさんまの水産加工業を営んでいたからだとか。芸人としてのスタートは、落語家だったのですね。ユニークな芸名は日本全国の人に知れ渡り、「さんまちゃん」の愛称で親しまれています。

秋刀魚の漢字は他にもあった?

現在では秋刀魚と書くのが一般的ですが、別の表記もあったようです。秋刀魚が初めて文献に登場するのは、『本朝食艦(ほんちょうしょっかん)』※から。ここでは、干物用として「三摩」の文字が当てられています。明治時代には、食べると三馬力ほど力が付くという意味合いから「三馬」と書かれました。夏目漱石の『我が輩は猫である』の中でも、この字が使われています。他にもいくつかあったようで、中々1つの漢字に定着しなかったようです。

秋が旬の魚で刀のような見た目から、「秋刀魚」と書かれるようになったのは大正時代から。この漢字が使われ始めたのは、意外と最近なのですね。大正10年に作家で詩人の佐藤春夫が発表した『秋刀魚の歌』の詩によって、全国に広まったと言われています。

※『本朝食艦』:江戸時代前期の食物本草書。庶民の日常生活の食膳にのぼることの多い食物を紹介している。

江戸時代から愛された庶民の味

庶民の秋の味覚として定着している秋刀魚ですが、江戸時代中期に魚河岸に流通するようになった当初は、人気がなかったようです。当時は脂の少ない淡泊な魚が上品とされていたので、江戸っ子たちは見向きもしなかったとか。その後人口の過密や、度重なる大火事で生活面にゆとりがなくなり、安価な秋刀魚が見直されるようになります。「安くて長きはさんまなり」と貼り紙をする魚屋が話題になったりして、秋刀魚は江戸の庶民の食べ物として定着していきました。

毎年賑わう目黒のさんま祭り

秋刀魚の旬の時期に、東京の目黒駅周辺では大量の秋刀魚を炭焼きにして振る舞う『目黒のさんま祭り』が開催されます。毎年約3万人が集まる人気イベントですが、2020年は残念ながらコロナウイルス感染拡大防止のために中止となりました。

海にも面していない目黒で、どうしてこの祭りが行われているのでしょうか? それは、江戸落語『目黒のさんま』の聖地だからなのです。

さる殿様が鷹狩りで目黒を訪れた時、くたびれてお腹が減ってきます。家来に昼食を命じますが、急のことで調達できずに困っていると、近くの百姓家で秋刀魚を焼いているのに出くわします。家来が頼んで分けてもらうと、殿様は初めて口にした秋刀魚の美味しさに感動。城へ戻った殿様は、もう一度食べたいと思いますが、中々チャンスが訪れません。

親族の集会で好きなものが食べられると聞き、「余はさんまを所望する」と言います。ところが、庶民の魚である秋刀魚の用意がありません。家来は急いで買ってくると、油は身体に悪いからと蒸して抜き、骨も危険だから取り除くと、形の無いグズグズの状態に。仕方なく椀に入れて差し出します。

あまりの不味さに、「このさんまはどこで手に入れたものだ?」と殿様が尋ねます。「日本橋魚河岸で求めてきました」と家来が言うと、「ううむ、それはいかん、やはりさんまは目黒に限る」。

最近では不漁が続き、秋刀魚の値段が高騰しています。このまま手の届かない高級魚にならないといいですね。

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幼い頃より舞台芸術に親しみながら育つ。一時勘違いして舞台女優を目指すが、挫折。育児雑誌や外国人向け雑誌、古民家保存雑誌などに参加。能、狂言、文楽、歌舞伎、上方落語をこよなく愛す。十五代目片岡仁左衛門ラブ。ずっと浮世離れしていると言われ続けていて、多分一生直らないと諦めている。