表参道・根津美術館で知る茶の湯と香りの秘密とは?

表参道・根津美術館で知る茶の湯と香りの秘密とは?

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2月22日(木)から3月21日(土)まで、東京・表参道の根津美術館で、茶道具の香合をテーマにした展覧会が開かれています。「INTOJAPAN」では、速報で展覧会の内容をご紹介しています。その記事はこちら

さて、少しだけお茶のことをかじっているわたくし(お茶担当イツコ)も、香合のサイドストーリーをお話したいと思います。「そもそも香合は、茶席でどのように使われるものなのか」。
それを知ると、きっと香合を見る目が変わってくるはずです。

なぜ床の間に香合が飾られているの?

香合は、その名の通り香を入れる容器で、茶道具のひとつです。漆や陶芸、竹、木工など、あらゆる種類でつくられていて、まさに今回の展覧会のタイトルのように「百花繚乱」。バラエティーに富んだ独自の世界を築いてきました。

大寄せ茶会(大きな茶会)に行くと、床の間の壁に「掛け物」、そして床の間の畳に「花入」と「香合」が飾ってあります。
なぜ床の間に香合を飾るのか。その意図は〝美しい工芸品を見てほしい〟というだけではないんですね。

実は「今日は『炭手前』を省略して、いきなりお茶の点前からはじめますよ」という亭主(茶会主催者)のメッセージが、香合という存在ひとつに託されて、床の間に置かれているのです。

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菊蒔絵香合 木胎漆塗 日本・桃山時代 15-16世紀 根津美術館蔵

茶事における香り

お茶の世界では、大寄せ茶会以外に、フルコースのように時間をかけて一服のお茶を楽しむ「お茶事」というものがあります。
お茶事の所要時間は約4時間半。お茶の点前がはじまるまでに、約2時間強ほどでしょうか。

大寄せ茶会は、お茶事のメニューのいくつかを省略して、お茶を飲む場面だけを抜き出した構成をとります。いわば、席に着いて、いきなりメインを食べているような……本当のフルコースのお茶事は長いのです!

では、お茶事でお茶を飲むまで「いったい何をしてるのか」といえば、まず火を熾して(炭手前)、飲食(懐石)をします。

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炉中に香を入れようとしているところ。写真提供/根津美術館

炭手前の最後、香が炭の上におかれると、香は次第にあたためられて、清雅な香気が席中を満たしはじめます。
茶事を交響曲にたとえるなら、この香りが〝第2楽章の幕開けを告げる合図〟みたいなものなのです(第1楽章は、個人的には「茶室に入ったとき」のように感じていますが、詳しい話はまた別の機会に)。

一瞬にして〝清浄〟を表す存在が「香」

香を焚く理由のひとつは、炭の臭気を消すためですが、もうひとつの理由は、席中を「清める」ため。
乱暴なことを言ってしまえば「清め=リセット」という目的から、香は茶席で非常に大事に扱われてきました。

清らかな香がただよいはじめると、席中はもう一段階ギアを上げて、お茶事は、非日常の、それは美しく光り輝く時間へと場面転換します。

香とともに、時間がゆっくりと流れてゆく不思議。その後に続く濃茶・薄茶への密やかな期待……。
舞台における音楽や照明のように、香はそこにある風景を「意味あるもの」に変えてしまうもの、といってよいかもしれません。

茶人が香合にこだわる理由

そんな大切な役割をもつ香の容器が、香合という存在です。

だから香合は、小器でありながら、堆朱の彫刻あり、螺鈿の精巧あり、蒔絵の優雅さあり、あるいは陶磁器としても和漢の良さ・美しさをもった、選び抜かれたものでなければいけなかった。名高い茶人たちは競って工芸美の精髄を包含した逸品を用いてきたのです。

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交趾大亀香合 漳州窯 施釉陶器 中国・明時代 17世紀 根津美術館蔵
ちなみに香合は、茶事の炭手前で唯一「香合の拝見を」と客が鑑賞を請う茶道具であり、炭手前をしない大寄せ茶会では、炭道具一式の代表として、床に飾られる。

茶人が香合にこだわる理由を踏まえながら、この展覧会に行くと、香合という存在の奥行きが感じられるんじゃないかな、と思います。

特に今回は、稀代の数寄者として知られる根津嘉一郎の愛玩の香合が160点以上も出品とのこと。ぜひぜひ、誘い合っておでかけください。(55)

根津美術館の公式サイトはこちら

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NEZUCAFÉのまわりでは、ちょうど梅が咲きはじめていました。展覧会のあとにコーヒーでひと休みするのもいいですよね。

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