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2019.08.15

そうだ、縄文へ行こう。長野県諏訪地方、現代人でも行ける縄文観光8選

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神長官守矢史料館

諏訪大社のありがたい神様にご挨拶した後は、縄文に起源を持つといわれる精霊「ミシャグチ様」(連載第3回参照)へのご挨拶もかかせません。次のホットスポットは、代々ミシャグチ神にまつわる祭祀の一切を取り仕切ってきた神長官守矢氏の史料館です。ちょうど、諏訪大社上社の本宮と前宮の間にあります。


神長官守矢史料館

守矢(もりや)家は古から続く諏訪大社上社の神官「神長官」家。館内には、生々しい動物の贄(にえ)をはじめとする大迫力のジオラマ展示の他、諏訪大社の古い祭祀に関わる文書、武田信玄の古文書など、我国にとって貴重な史料が多数公開されています。


諏訪大社の「狩猟民的」祭、「御頭祭(おんとうさい)」のジオラマ。鹿の首の贄(にえ)です。

余談ですが、神長官守矢史料館はなんと、建築家・藤森照信のデビュー作なのです。自然素材をふんだんに、かつ大胆に使った史料館はとっても縄文的。しかしここにある藤森先生の作品はそれだけではありません。史料館を出て、横の野原を登って行くと・・・ありますあります、遊びで作ったとしか思えない奇想天外な茶室の数々が。


空飛ぶ泥船

周りが完全に畑という中、宙に浮いている(ように見える)茶室はまるで宇宙船のよう。ジブリの世界に迷い込んでしまったような・・・というかこれ本当に茶室なんでしょうか。こんなところでお茶をたてて心静まるのか? 危険性と隣合わせになることで逆に集中力が増すということなのか、それとも縄文土器のように、実利ではない何かディープな神話が隠されているのかもしれません。


高過庵

さらに奥に行くと、別の茶室「高過庵(たかすぎあん)」と「低過庵(ひくすぎあん)」もあります。「高過庵」はアメリカのTime誌において「世界でもっとも危険な建物トップ10」に選ばれた(!)遊び心たっぷりの茶室。細川元首相の茶室を設計した藤森氏が、個人的に茶室が欲しくなって実家の畑に建てたものなんだそうです。それにしても、ネーミングがギャグですね。

縄文時代にもいたかもしれない精霊「ミシャグチ様」と、古代の諏訪大社の縄文的祭祀に想いを馳せたあとは、ぜひ藤森照信の縄文土器的クレイジーな建築を楽しんでください。

神長官守矢史料館
住所:〒391-0013長野県茅野市宮川389-1
電話: 0266-73-7567
開館時刻:午前9時〜午後4時30分
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝祭日の場合は、その翌日)と祝日の翌日
公式サイト:https://www.city.chino.lg.jp/soshiki/bunkazai/1639.html

七木湛・諏訪七石

JR茅野駅周辺、諏訪大社上社の神事に関わる地域には、「縄文ホットスポット」が集中しています。ここでみなさんにぜひ探していただきたいのが、7つの木「七木湛(しちぼくたたえ)」と、7つの石「諏訪七石」です。

ただでさえ長野県は巨木信仰・巨石信仰の厚い県で、注連縄の張られた巨木や巨石はそこら中で見ることができますが、「七木湛」と「諏訪七石」は中でも起源の古い、ふるー・・い神の依代です。鎌倉期の記録によれば、中世まで七木湛に縄文の神「ミシャグチ様」を降ろしていたとか。(連載記事第3回参照)


「諏訪七石」の一つ、「硯石」。写真の奥で柵に囲われている苔むした巨石がそれです。諏訪大社上社本宮の拝殿の中にあり、廊下からほんの少しだけ見えます。硯石は、神降ろしの神事においてその昔最高至極の位置にあったといいます。

どの木(石)が「七木」で「七石」なのかについては、今となっては定かではなくなっているところもありますが、インターネットで検索すれば「諸説」がいくつかでてきますから、ぜひ探してみてください。全て、諏訪大社上社の神事に関連する地域にあります。


七木湛の一つ「峰たたえ」を探しに行く最中、「これ絶対ヘビでてくるよ」とビビりまくるデスク本多。もちろんそんなミラクル起こりませんでした。残念。

道なき道を行き、やっと見つけた「峰たたえ」がこちら。


「七木湛」のひとつ、「峰たたえ」。出会った瞬間、沈黙が流れます。細胞の奥の、長いこと眠っていた場所が粟立つような、奇妙な興奮に包まれます。

書いた人

横浜生まれ。お金を貯めては旅に出るか、半年くらい引きこもって小説を書いたり映画を撮ったりする人生。モノを持たず未来を持たない江戸町民の身軽さに激しく憧れる。趣味は苦行と瞑想と一人ダンスパーティ。尊敬する人は縄文人。縄文時代と江戸時代の長い平和(a.k.a.ヒマ)が生み出した無用の産物が、日本文化の真骨頂なのだと固く信じている。